第46話 恋人とお風呂

 真琴と一緒にお風呂場に入り、先に体を洗うことになった俺がお風呂用の椅子に座ると、その後ろに真琴が座って言った。


「架くんと一緒に入る、二度目のお風呂だね……ううん、前入った時は友達だったから、恋人になってからは初めてだし、架くんの家のお風呂に入るのも、私は初めて」

「そうだな……不思議な気分だ」


 俺たちは、改めて二人で俺たちの関係性の変化に対して感慨深く思っていると、鏡に映る真琴が自分の体に巻かれているバスタオルを触りながら言った。


「架くんがどうしてもって言うからタオル着てあげたけど、どうしてまだタオルが要るの?」


 真琴はさっきこのお風呂場に入る前、恋人になったからもうタオルなんて要らないと言ってタオルを着ようとしなかったが、それを俺が止めてバスタオルを着てもらった。

 その理由を説明していなかったので、俺は今この場を持って鏡に映る真琴のことを見ながら説明する。


「真琴の体を初めて見るなら、それはお風呂場とかじゃなくて、然るべき場所で然るべき時に見たいんだ」

「っ……!」


 俺がそう伝えると、真琴は頬を赤く染めて俺から視線を逸らして言った。


「そう……いうことなんだね、それって……ベッドの、上?」

「そういうことだ……悪いな、どうでもいいことかもしれないが、やっぱり二人の思い出は丁寧に作っていきたいんだ」


 そう言った俺に対して、真琴は首を横に振って後ろから俺のことを抱きしめて言った。


「どうでもいいなんてことないよ……私のことを大事にしてくれてるんだってことが、架くんの言葉とか行動、その他の色々なことから伝わってきて、私は幸せだよ……そんな架くんのことを、私も幸せにしてあげたい」

「俺はもう十分幸せだ、これからだって、真琴が俺の傍に居てくれるなら、俺はずっと幸せだ」

「架くん……」


 俺は一度真琴の方に振り返ると、真琴のことを正面から抱きしめた。

 すると、真琴も改めて俺のことを抱きしめ返してきた。


「……服を着ない状態で抱きしめ合うと、いつもとなんだか違う感じがするな」

「……早くタオルなんて脱いじゃって、架くんと肌と肌を重ね合わせたい」

「俺だってそうだ……だから、あと数時間だけ、俺と一緒に我慢しよう」

「うん……架くん、大好き」

「俺も大好きだ、真琴」


 真琴の俺を抱きしめる手、腕の感触や、タオルをしていてもわかる柔らかな胸の感触……前はそれらを感じた時に恥ずかしいと感じていたはずなのに、それが今は────愛おしくてしょうがない。


「……架くん、どうしよっか?」

「……何がだ?」

「……私、このまま動きたくない」

「……動かなくても良いんじゃないか?」

「お風呂から出られないよ?」

「それは困ったな……じゃあ、あと少しだけこうしてよう」

「それでいつも十分ぐらいはこうしてるよね」

「長いか?」

「ううん、もっとしたい……」


 その後、十分以上抱きしめ合った俺と真琴は、互いに体を洗ってから一緒にお風呂に浸かった。

 普通の家のお風呂なので、高校生二人で入れば当然体は密着する。

 だが、俺たちはそんなことを気にせず────むしろそれが嬉しいと感じながら、手を繋いで一緒に浸かっていた。


「……架くん、クリスマスが楽しみだね」

「あぁ、楽しみだ」

「……ほっぺにキスしてもいい?」

「ストレートだな」

「理由が要るなら、いくらでも付けてあげるよ?例えば、私が架くんのこと大好きすぎて我慢できないとか」

「いつも言ってるが、そんな理由なくてもいつでもしていいし、真琴がそう言ってくれて俺も嬉しい……それに────俺も、真琴のことが大好きだ」


 その後、お風呂に浸かって手を繋ぎながら、俺と真琴は互いに何度も互いの頬にキスをし合って愛を感じ合ってから、その後もしばらく話をしてお風呂から上がり髪を乾かすと────俺と真琴は一緒に俺の部屋のベッドの上に上がって、クリスマスになるのを待った。

 ────クリスマスまで、あと一時間。

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