第43話 恋人は大好き
────冬休みに入り、世間はもうクリスマスムード。
世間はと言っても、恋人になった俺と真琴もその世間の例外ではなく、今日は真琴の誘いでクリスマスケーキを何にするかを決めにデパートに来ていた。
そして、今は二人で腕を組んで歩きながら、デパートに立ち並ぶお店を見て回っている。
「色々とケーキ見てみたけど、架くんはクリスマスケーキ何食べたい?」
「真琴が食べたいやつでいい」
「私の食べたいのは、架くんの食べたいものだから、架くんが選んで」
「俺が食べたいのは、真琴が食べたいものだから真琴が選んでいい」
同じようなことを言う互いに対して、俺たちは小さく笑った。
「もう!架くんってば、すぐにそんなことばっかり言って」
「真琴だってそうだ」
「架くんの気持ちは嬉しいけど、これだと話が進まないから、一度落ち着ける場所に行って二人でどんなケーキ食べたいか話さない?」
「そうしよう」
ということで、俺と真琴は一度デパートから退散して、落ち着ける場所を探すことにした。
俺たちがここに来たのは夕方だったが、今の時間帯はもう夜で、辺りはイルミネーションが輝いている。
「イルミネーション綺麗だね」
「そうだな」
イルミネーションを見ていると、その通りには花壇が置いてあり、その花壇の前にベンチがあったため、俺と真琴はそこに隣り合わせに座った。
デパートの通りから少し離れているから、ここなら人の通りも少なくて落ち着いて話せそうだ。
俺は、イルミネーションを眺めながら言う。
「今までイルミネーションを見ても光ってて綺麗、ぐらいにしか思わなかったが……今は真琴が隣に居てくれるから、今までで一番イルミネーションが光り輝いて見えるな」
俺がそう言うと、真琴は俺と腕を組む力を強めて俺の体を真琴の方に抱き寄せるようにして言った。
「私も、架くんと一緒に見てるとイルミネーションが今までの何倍も綺麗に見えるよ……でも────私はイルミネーションよりも、真琴くんの方に見惚れちゃうけどね」
そう言いながら、真琴は俺の肩に頭を傾けた。
「そんなことを言ったら俺だってそうだ、イルミネーションよりも真琴のことを見ていたい」
「ふふっ、ここ外だからほっぺにキスとかしたらダメだよ?」
「家なら良いのか?」
俺がそう聞くと、真琴は頬を赤く染めながら言った。
「家なら、どれだけでもしていいよ……私もいっぱいするから」
その後少しの間俺たちは互いの温もりだけを感じていると、真琴が言った。
「私たち、クリスマスケーキの話してないね」
「そうだな……クリスマスイブは、俺の家で過ごすんだよな?」
「うん」
真琴のことを初めて家に招く……少し緊張はあるが、それ以上に楽しみだ。
俺がそんなことを考えていると、真琴は甘い声で言った。
「……クリスマスイブの夜、架くんの家にお泊まりしてもいいかな?」
「あぁ、いい」
「ありがと……架くん、最近私思うんだけど、私って本当に架くんのことが大好きなの……今日クリスマスケーキを決めるためにってお出かけに誘ったのも、本当はただ架くんと一緒に居たいだけ……クリスマスケーキなんて、架くんと一緒に食べられるなら私はなんでも良いの」
「それを言い出したら俺だってそうだ……真琴と一緒に居られるなら、クリスマスケーキなんてなくてもいい」
そう言いながら、互いに自然と互いのことを抱きしめ、顔を近づけていた。
「架くん……」
「真琴……」
そして、唇が重なりそうになる直前────俺と真琴は、同時に動きを止めて、真琴が言った。
「……この続きは、クリスマスにしよ?」
「……あぁ、そうしよう」
俺たちはそう決めた後、しばらくの間イルミネーションの下で互いのことを抱きしめ合った。
────俺は本当に、真琴のことが大好きだ。
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