第42話 恋人に料理を作る
休日の土曜日。
真琴の家のインターホンを鳴らすと、笑顔の真琴が玄関から出てきた。
「架くん!おはよう!」
「あぁ、おはよう」
「上がって上がって!」
俺は、真琴に言われた通りに真琴の家に上がる。
真琴の家に来た理由は、日頃真琴にお弁当や料理を作ってもらっているので、今日は俺が真琴に料理を作って、俺の料理を真琴に食べて欲しいと思ったからだ。
俺の家でも良かったが、せっかくなら初めて俺の家に来るのは冬休み、それもできたらクリスマスイブが良いと真琴が言っていて、俺もその特別感というのは大事にしたいと思っているためその意見に賛成し、今日は真琴の家で料理をすることとなった。
真琴と一緒にキッチンに行って、俺は真琴の家に来る途中で買ってきた食材を全て袋から出した。
「架くん、今日は何作ってくれるの?」
「今日はお肉と野菜の炒め物を作る」
「美味しそう〜!架くんが作り終えるの楽しみに見てるね!」
「ん?別にリビングで待っててくれていいし、何だったら課題とかをやっててもいい」
「それは架くんと一緒にする!それに、料理してる架くんのことを見たいの!」
「……そうか」
俺はその純粋な言葉に少し照れてしまいそうな気持ちを抱きながらも、俺は次にまな板を横に置いた。
すると、その直後に真琴が言った。
「架くん、食材切る時は手切らないように気をつけないとダメだよ?」
「わかってる」
「あと、火を付ける時も火傷しちゃわないようにね?」
「……わかってる」
「それから────」
「真琴、心配してくれるのは嬉しいが、そんなに心配してくれなくても大丈夫だ」
俺のことを心配してくれている真琴の言葉を遮ってそう言うと、真琴は俺のことを抱きしめて言った。
「ごめんね、架くんが大事だから、私……心配しちゃって」
そう言ってくれる真琴のことを、俺も抱きしめ返して真琴と顔を向かい合わせて言う。
「さっきも言ったが、真琴が俺のことを大事に思って心配してくれるのは嬉しい……だから、謝らないでくれ」
「架くん……」
真琴は頬を赤く染めて俺の名前を呼んだ。
「……そんな顔で抱きしめられたら、料理を始められないな」
「私は架くんとこうしてるだけでも幸せだよ?」
「そんなことを言ったら俺もだが……真琴に俺の料理を食べて欲しいって気持ちもあるからな」
「……じゃあ、後でいっぱい抱きしめ合おうね」
「……そうしよう」
一度抱きしめ合うのをやめると、俺は早速料理を開始した。
────そして数十分後。
真琴に見守られながら料理をし終えた俺は、ついに料理を完成させて、それをリビングで真琴と一緒に食べる。
すると、それを食べた真琴が笑顔で言った。
「美味しい〜!架くん、これ本当に美味しいよ!」
そう言ってから、真琴はさらに一口、二口と箸を進めていく。
そんな真琴を見て、俺は少し口角を上げながら言った。
「そんなに喜んでくれたなら、作った甲斐もあったな」
「うん!作ってくれてありがとう!」
そう言った後、真琴は何かを思いついたような素振りを取ると、視線を泳がせてから頬を赤く染めて口を開いた。
「……でも、架くんが食べさせてくれたらもっと美味しく────」
「わかったわかった、俺が食べさせれば良いんだな?」
「やった〜!」
喜んだ真琴のことを見て、俺は少し言いづらかったが今思っている望みをそのまま口にした。
「……真琴、後で真琴も俺にも食べさせて欲しい
「っ……!いいよ!お願いされなくても食べさせてあげてたけどね!」
その後、俺たちは互いに料理を食べさせ合った────自分で作った料理でも、やはり真琴と一緒に食べ、真琴に食べさせてもらえるというだけでこんなにも美味しく感じる……俺の作った料理で真琴がこんなにも喜んでくれている……俺はこの日、これからも真琴にたくさん俺の作った料理を食べてもらいたいと思った。
────そして、料理を食べ終えた後、俺と真琴は約束通り互いのことを何度も抱きしめ合った。
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