第41話 恋人との思い出
放課後の帰り道、真琴と話しながら何となく歩いていると、真琴がある店を指差して元気に言った。
「架くん!あのお店、覚えてる?」
俺は真琴が指を差した方向に目を向ける……すると、そこには見覚えのあるお店があった。
そのお店は少しだけ行列が出来ていて、メニュー看板にはケーキの写真が貼ってある。
「懐かしいな、俺と真琴が初めて一緒に出掛けに行った時のケーキ店だ」
「そうそう!あの時は、架くんがいちごが乗ってるケーキが好きって言ってて、ちょうど私がその時美味しいケーキのお店見つけてたから、架くんのことを誘ってここに来たんだよね!」
「そんなこともあったな」
「そんなこともあったな、じゃないよ!あの時から私は架くんのことが好きだったけど、架くんは全然気づいてないどころか、私が架くんと一緒にケーキのお店行かない?って誘っても、全然私が架くんのこと好きだって気づかずに、私の好きな人と────みたいなこと言ってて、あの時は本当に緊張しながら頑張ったんだから!」
「わ……悪い」
俺はもしかしたら、過去の話を持ち出されるたびに真琴に謝ることになるのかもしれない。
今言われてみればどうしてあそこまでされておきながら俺は真琴の気持ちに気づけなかったのか疑問だが、やはり一番の要因は真琴の好きな人が恋愛相談をしてきている俺でないという固定観念があったことが大きいだろう。
「昔のことって言えば、俺が秘桜のことを好きになり始めた時は一番辛かったな……秘桜に他に好きな人が居るとわかっている状態で、俺は秘桜のことが好きなのに恋愛相談を受けないといけない、ハッキリ言ってあの時はかなり危なかった」
「あ!それ私のこと避けた時でしょ!私あの時本当に悩んだんだから!!」
「……でも」
俺は、真琴の手を握って言った。
「今こうして、俺たちは恋人として一緒に過ごせてる……俺は、そのことが嬉しい」
「そ、それは……私だって、嬉しいよ」
互いに少し見つめ合い、もしここが家の中であれば抱きしめ合っていたところだが────ここは街の中で人目もあるため、そんなことはできなかった。
「……が、我慢しないとだね」
「……あぁ」
俺たちは切り替えるようにして一度握った手を離すと、真琴の提案で俺たちは一緒にそのケーキ店に入店した。
そして、店員さんに席まで案内されると、俺と真琴は隣り合わせに座り、真琴は俺の腕を左腕で抱きしめる。
「……架くん、覚えてる?前に来た時は、私たち対面で座ってたんだよ?」
「そうだったな」
「それが今では隣で座ってるって、不思議だよね」
「あぁ……でも、嬉しいことだ」
「うん!」
その後、メニューを見てから俺は真琴に聞く。
「真琴はどれにする?」
「架くんと同じ、いちごのショートケーキ」
「……確かにそれを好きとは言ったが、俺はまだそれを頼むなんて言ってない」
「違うの?」
「……違わないが」
「だよね」
真琴は、何でもお見通しと言わんばかりにそう言って微笑むと、俺たちはショートケーキ二つを注文した。
「……そういえば、前来たときは私たちもしかしたらカップルに見えちゃったりするのかな、みたいなこと言ってたよね」
「あぁ、言ってたな────」
今となっては遠い昔のように感じる思い出話に花を咲かせながら頼んだショートケーキが届くのを待ち、やがてショートケーキが二つ届くと、真琴はショートケーキを切り分けてそれを俺の口元に差し出してきた。
「あ〜ん」
「……外でその食べ方をするのか?」
「うん」
「……わかった」
俺は真琴に差し出されたケーキを口に含める。
すると、真琴が楽しそうに聞いてきた。
「美味しい?」
「……あぁ、甘くて美味しい」
「私にも食べさせて!」
俺が言われた通りに真琴にも食べさせると、真琴は嬉しそうに言った。
「美味しい〜!何だか前に架くんと一緒に食べた時よりも美味しくて甘く感じるね!」
「俺もそう感じた」
その後、二人で色々と話しながらケーキを食べ終えると、俺と真琴は手を繋いで帰り道を歩いた。
真琴と初めて一緒に出かけたケーキ店に今行くと、前の何倍も楽しめて、前の何倍も真琴の笑顔を見られた。
……ケーキ店だけじゃなくて、これからもっと色々なところに行きたいな。
帰り道を歩きながら、俺と真琴は今後どこに行きたいかを楽しく語り合った。
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