第40話 恋人は見たい
真琴の家に泊まっていた土日も終わり、今日からまた一週間学校だ……が、今日からの朝は先週までの朝とは大きく違う。
俺はスマホで真琴とのチャット画面を開き、メッセージを送った。
『今そっちに向かってる』
『うん、私ももう準備できてるよ!』
今までは、朝話すにしてもそれは学校での教室だったが、今日からは一緒に登校することとなった。
これもまた、俺たちの関係性の変化を大きく表していると言えるだろう。
俺は真琴にメッセージを送った通りに真琴の家へ向かい、十分ほどで真琴の家に到着してインターホンを鳴らす。
「架くん!おはよう!」
ドアを開けて俺のことを見ると、真琴は勢いよく俺のことを抱きしめてそう言った。
突然のことに少しだけ驚いた俺だったが、俺も真琴のことを抱きしめ返して言った。
「おはよう、真琴……朝から随分と積極的だな」
「昨日架くんが家に帰っちゃってから、ずっと架くんとこうしてたかったんだもん」
「……それなら仕方ないな」
「うん、仕方ないんだよ……少しだけこうしてていい?」
「あぁ」
その後、しばらくの間そのままで居ると、そろそろ学校に向かわないと遅刻する時間になってきてしまったため、俺たちは互いにもっと抱きしめ合っていたいと思いながらも一度抱きしめ合うのをやめて、学校へと足を進めた……そして、真琴が白い吐息を吐いて言う。
「もう12月に入ったから、結構寒いね」
「そうだな」
その後しばらくの沈黙の後、真琴は頬を赤く染めて俺の左手に自分の右手を近づけて言った。
「……手、繋ご?」
「……あぁ」
俺と真琴は、冷たい手同士を重ね、恋人繋ぎで手を繋いだ。
真琴と手を繋ぐだけで、一気に寒さが無くなったように感じる。
「温かいな」
「うん、温かい……」
しばらく二人でその温かさを静かに堪能していると、真琴が口を開いて言う。
「冬休み、楽しみだね」
「楽しみだ……冬休みになったら、俺の家に来るか?」
「え……架くんの家!?」
一瞬驚いた様子の真琴だったが、すぐに大きく頷いて言った。
「い、行きたい!架くんの家!」
「そうか、じゃあ冬休みは俺の家で遊ぼう」
俺がそう言うと、真琴は嬉しそうに笑った。
その後、冬休みにしたいことなどを軽く話しながら学校に登校し、やがて昼休みになると今日も一緒に昼食を食べるために屋上へと向かった。
────そして、昼食でも変わったことが一つ。
「架くん、うっかりお弁当作ってきちゃってないよね?作っちゃってたら作っちゃってたで、また夜にお弁当食べてもらうっていう理由で一緒に過ごせるから良いんだけどね」
「作ってない、あとそんな理由付けなんて無かったとしても、俺は真琴と一緒に過ごしたい」
「っ……もう!ダメだよ架くん、そんなこと言われちゃったら、私学校でも我慢できなくなっちゃうから!」
「ここは屋上だから誰も見てない」
「……じゃあ────」
真琴は、俺の左頬に一瞬だけキスすると、頬を赤く染めて言った。
「こ、これで我慢するね!」
そう言った真琴の左頬に、俺も一瞬だけキスをした。
「か、架くん!?」
「先にしたのは真琴だ」
「……もう〜!」
その後、色々と言いながらも嬉しそうな真琴と一緒に、真琴の作ってくれたお弁当を食べた。
真琴の作ってくれた料理は全て美味しいんだということを、改めて実感させられた。
俺がそう感じていると、真琴は右手で俺の顔に手を添えた。
「……真琴?」
「架くんの美味しそうにご飯を食べてる顔とか、時々笑ってる顔とか、照れちゃった顔とか、全部好き……私、もっと色々な架くんのこと見たい」
「……これから過ごしていく中で、見れるんじゃないか?」
「うん……いっぱい見せてね」
真琴は、俺に優しく微笑みかけるようにしてそう言った。
「今の真琴、優しくてとても良い表情をしてる」
「か、架くん……!」
その後、優しく微笑みかけるような表情だった真琴の表情は、頬を赤く染めて照れている表情へと変化した。
これから俺たちは、まだ見たことのない互いの表情や一面を見て────それを見るたびに、互いのことがもっと好きになっていくんだろうな。
そのことを考えるだけで、俺は思わず口角を上げていた。
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