第33話 女友達は離れたくない
「まさか、二週間連続で秘桜の家に泊まることになるなんてな」
秘桜と一緒にリビングまで戻ってきて、そのソファに腰掛けて俺は言った。
「ごめんね、私がわがまま言ったから……でも、どうしても今日は神咲くんと一緒に居たいの」
「俺だって秘桜と一緒に居られるのは楽しいから、謝らないでくれ……遊園地で濡れるアトラクションがあるかもしれないからって、一応着替えを持ってくるように秘桜が言ってくれてたおかげで着替えもあるからな」
「……本当は、神咲くんにお着替えを持ってきてもらったのが、このお泊まりのためだって言ったら怒る?」
「怒らない、むしろそこまで俺に泊まって欲しいと思ってくれてるんだったら嬉しいと思う」
そう答えると、秘桜は俺の方に身を寄せて言った。
「それなら白状しちゃうけど、神咲くんにお着替えを持ってきてもらうように言ったのは、本当は神咲くんにお泊まりしてもらうためだったの」
「そうか、なら俺は喜んでおこう」
「ふふっ、ありがとう」
……今までなら、秘桜に身を寄せられただけで多少動揺していたと思うが、今は動揺するどころか────むしろ、秘桜が俺に身を寄せてくれている状態こそが自然な状態だと思えるほどに馴染んでいて、とても心地良い。
その心地良い時間を、しばらく静かに過ごしていると、秘桜が言った。
「神咲くん……お風呂、どうしよっか?」
「あぁ、お風呂か……俺は先でも後でも良いから、秘桜が決めてく────」
「そうじゃなくて……私、お風呂も神咲くんと一緒に入りたいの」
「……え?」
秘桜と一緒にお風呂というのはいくらなんでも想像していなかったため、俺は少し驚いてしまうが、秘桜は冗談で言っている様子ではない。
「……本当に、良いのか?」
「うん、ちょっと恥ずかしいけど……やっぱり今日は、神咲くんとずっと一緒が良いの、お風呂に入ってる数十分の間だったとしても、離れたくない」
「……わかった、行こう」
俺と秘桜は、それぞれ着替えを持つと、一緒にお風呂場前まで来た────が、当然一緒に着替えるわけにはいかないため、俺は口を開いて言う。
「俺が先にお風呂場の中で待ってるから、秘桜は後から入ってきてくれ」
「う……うん、わかったよ」
ぎこちなくそう返事をすると、秘桜はお風呂場前から離れて行った。
……あの様子だと、本当に俺と一緒にお風呂に入ること自体は恥ずかしいようだが、それでも俺と一緒に居たいというのが上回ったようだ。
そのことを嬉しいと思うと同時に、秘桜のことを恥ずかしがらせてしまうというのを避けたいと思う自分も居たが、ここまで来てやっぱり断るなんていうことはできるわけがないため、それならできる限り秘桜が恥ずかしくならないように態度や目線などに気をつけよう。
そう決心した俺は、服を脱ぐと、腰にタオルだけ巻いてお風呂場に入った。
……それから数分後、シャワーの音だけが響くお風呂場の開き戸が開き、そこから体にタオルを巻いた秘桜の姿が見えた。
……色白の肌に整った顔立ち、本当に何から何までとても綺麗で、紛うことなき美少女だ。
というか、タオルしか体に巻いていないことで改めてよくわかるが、スタイルがとても良い。
胸元が大きいことは言うまでもなく、その他の体の引き締まりや脚の長さなど────じゃない!
思わず秘桜に目を奪われてしまっていたが、そんなに体を見ていたら秘桜のことを恥ずかしがらせてしまう!
そう正気に戻った俺は、すぐに秘桜の顔に表情を戻したが、その時には秘桜が顔を赤くしていて言った。
「神咲くん、その……そんなに見られると、恥ずかしいよ」
「わ、悪い!つい……」
俺が秘桜から視線を逸らすと、秘桜は小さく笑ってから俺の方に近づいてきて、俺の手に自分の手を重ねて言った。
「一つだけ教えて?神咲くんにとって、私は魅力的かな?」
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