第31話 女友達と同じことを考える
秘桜がゴンドラ内に大声を響かせた直後、観覧車は開始地点から一周し、俺と秘桜は観覧車のゴンドラから降りて、遊園地の出口へと歩き出した。
そして、それと同時に秘桜が口を開く。
「か、神咲くん!さっき観覧車の中で言ったことは────」
「わかってる、勢いに任せて言い間違ったんだろ?あの秘桜から俺とキスなんて単語が出るなんて普段ならあり得ないから、そのぐらいは俺だって汲み取ってる」
「……うん、ありがとう、神咲くん」
秘桜は落ち込んだ様子で言った。
言い間違いとはいえ、俺とキスなんてことを言ってしまったことを気にしているんだろうか。
言い間違いなんて誰もがすることだろうからそこまで気にしなくても良いと思うが、言い間違えてしまった内容が内容だけに気にしているのか……とにかく、俺からは今後このことについては触れないのが得策だろう。
その後、俺と秘桜は遊園地の出口から遊園地の外に出ると、秘桜の作ったパスタを食べさせてもらえるということで、秘桜の家へと向かっていた。
「遊園地は色々とライトアップされてたりしてそこまで気にならなかったけど、もう結構暗い時間なんだね……この時間帯の冬は、体が冷えちゃいそう」
「そうだな」
「……神咲くん、良かったらまた腕組みたいんだけど、良い?」
「……寒いもんな、組んで良い」
「っ……!ありがとう!」
俺から承諾が出ると、秘桜は嬉しそうに俺に身を寄せて俺と腕を組んだ。
「……こうして距離が縮まると温かいね、さっきまで寒いって感じてたのが嘘みたい」
秘桜と腕を組んで歩いていると、まるでカップルになったみたいだ……なんてことを思っていると、秘桜が頬を赤く染めて言う。
「こうして神咲くんと腕を組んで歩いてると、カップルになったみたいだね」
「……すごいな、俺も今同じことを考えてた」
俺がそう伝えると、秘桜は驚いた様子で言う。
「え、本当に!?」
「本当だ、こんなこともあるんだな」
俺が同じことを考えていたことを伝えると、秘桜は頬だけでなく顔全体を赤くしたが、その表情はどこか嬉しそうだった。
その後、腕を組んで十分ほど歩いていると、秘桜が落ち着いた様子で言った。
「今時間確認してみたら、もう夜の19時前みたい……私の家でパスタ食べる頃には20時になっちゃってるかな」
「そうか……じゃあ、家族の人に迷惑をかけるわけにもいかないし、今日はそんなに長居はできないな」
「……そうでもないよ?」
「……え?」
「その……どうしてかわからないんだけど、今日神咲くんのことを家に呼ぶって言ったらお母さんが『じゃあ私たち旅行行ってくるから、二人でごゆっくり〜』って言って、本当に両親二人ともそのまま旅行しに行ったから、今日と明日は両親居ないの」
秘桜からは想像もできないが、秘桜のお母さんは結構軽い感じの人なんだな……だが。
「秘桜の作ったパスタを食べに行くだけなのに、そこまでしてもらったのは何か悪いな」
「気にしないで、両親は元々旅行好きだから……ねぇ、神咲くん」
「ん?」
俺が秘桜の方を見て、目が合った時に秘桜は何かを言おうとした────が、その口を閉じてしまい、再度口を開いて言った。
「……ごめんね、やっぱり何でもない」
そう言いながらも、秘桜の俺と腕を組む力は少し強くなっていた。
……何か俺に伝えたいことがあるが、それを我慢している?
俺は少しそのことを気にかけながらも秘桜と一緒に秘桜の家へと向かった。
「お邪魔します」
「うん!上がって!」
秘桜の家に到着すると、俺は秘桜がパスタを作り終えるのをリビングで待つように言われたので、大人しくリビングで秘桜のことを待つことにした。
────そして。
この時の俺はまだ知る由も無かったが、この後……俺は、秘桜から最後の恋愛相談を受けることとなる。
◇
昨日で連載を始めてから一ヶ月が経過しました!
この一ヶ月の間でこの第31話までお読みいただいているあなたはきっとこの物語を楽しんでくださっていると思うので、その感想をいいねや☆、コメントなどで教えていただけると本当にうれしいです!
作者は今後もこの物語を楽しく描かせていただこうと思いますので、この物語を読んでくださっているあなたも最後までこの物語をお楽しみいただけると幸いです!
今後もよろしくお願いします!
◇
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