第27話 女友達は大好き

 今日は待ちに待った土曜日。

 秘桜の作ったパスタを食べるというのと、秘桜と一緒に遊園地に行くというとても贅沢な一日だ。

 秘桜が、パスタを俺に振る舞うなら遊園地から帰ってから振る舞いたいということだったので、俺たちは先に遊園地へと向かっていた。

 今日の秘桜の格好は、冬を想起させる白のロングコートで、その落ち着いた感じが秘桜にとても似合っていた……なんてな、秘桜なら何を着ても似合うか。


「秘桜の外行きの私服を見るのは二回目だが、今回も秘桜に似合ってるな」

「そ、そうかな?神咲くんも、その黒のダウンとジーンズ似合ってると思うよ」

「ありがとう」


 社交辞令だとは思うが、一応感謝を伝えておこう。

 そして道中、俺は今から行く遊園地のことについて少し考えることにした。


◇秘桜真琴side◇

 神咲くんと遊園地に向かっている最中────私は今、真剣に頭を悩ませていた。

 まず、神咲くんがかっこいい……神咲くんがかっこいいのはいつものことなんだけど、黒のダウンとか着てるの初めて見たし、似合い方がすごいからいつものかっこよさとはまた種類が違って心の準備ができてなかった!

 今日一日神咲くんのことまともに見れるか不安……だけど、ちゃんと見ないとダメだよ私!お休みの日に出かけるのは、買い出しを除いたら初めてなんだし、これは実質始めてのお休みデート……デートなんだから!


「……」


 私は、横目に神咲くんのことを見てみる。

 神咲くんは、歩きながら何かを考えてるみたい……何かを考えてる顔もかっこいい。

 よく考えたら、私が白の服で神咲くんが黒……私と神咲くんでそれぞれ白と黒の服!男女二人ってだけでカップルみたいなのに、反対色の色を着てる!これってもう絶対にカップルって思われちゃうよね!?思われないとおかしいよね!?ていうか私たちもうほとんどカップル────じゃないから!

 ……はぁ。

 私は少し冷静になって、自分に対して呆れる。

 私って、本当に神咲くんのことになると一気に変な考えになっちゃう……お勉強とかはそれなりにできるのに。

 でも、できたら反対色じゃなくて、神咲くんと同じ色の服……もっと言うなら、お揃いの服とか着て、お出かけとかしてみたいな。

 神咲くんと付き合えたら、そういうこともできるのかな……でも。


「全然成功するイメージができない……」


 私が神咲くんに告白したらきっと────


「神咲くん……好きです!私と付き合ってください!」

「す、好き……?俺のことを?……悪いが、俺は秘桜のことを大事な友達として見てるから、その告白を受け入れることはできない」


 なんてことになるに決まってる!

 本当、どうしたら良いんだろ……今まで色々としてきて、最近ではお泊まりまでしたけど、全然神咲くんと付き合えるイメージが出てこない。

 神咲くんは私のこと異性として意識してくれてるって言ってたけど、それはただ私のことを異性として意識してるだけで、恋愛対象として意識してくれてるわけじゃない。

 お泊まりまでした後で、好きな人として意識してもらうためにしないといけないことって言ったら────私は神咲くんとそういうことをすることを考えて、思わず心臓の鼓動を早めてしまった。

 そして、そのタイミングで神咲くんから話しかけられる。


「秘桜、どうかしたのか?」

「か、神咲くん!?う、ううん?なんでもないよ!?」


 私は、突然神崎くんに話しかけられたことによってさらに心臓の鼓動が早まってしまったけど、それをどうにか抑えることに専念する。


「そうか?でも顔が赤いし、さっきも成功するイメージができないとか呟いてたし」


 神咲くんも考え事してたみたいなのに、私がちょっと呟いたことなんて聞いてくれてたんだ……嬉しい────じゃなくて!


「本当に気にしないで、なんでもないから」

「……そうか、じゃあ余計なお世話かもしれないが一つだけ言わせてくれ」


 そう言うと、神咲くんは私の肩に手を置いて言った。


「もしその成功するイメージっていうのが告白のことなら、秘桜の恋が成就するように俺が全力でサポートする……だから、そんなに一人で抱え込まないでくれ」


 神咲くんは、とても優しい声でそう言った……かっこいい、かっこいいけど────じゃあ神咲くん!私が告白したら成就させてくれるの!?本当に頷いてくれる!?

 っていうのを聞きたいけど、それを聞いたらほとんど告白みたいになっちゃうから聞けない。


「……うん、ありがとう、神咲くん」

「礼なんて言わなくていい」


 ……神咲くんがかっこいいとか、どうすれば神咲くんに恋愛対象として意識してもらえるのかとか、色々と考えたいことはあるけど、今はとりあえず目の前の遊園地!

 神咲くんとの遊園地を、全力で満喫して楽しむ!!


「神咲くん、遊園地楽しみだね!」


 私がそう言うと、神咲くんは優しく微笑みかけてくれながら言った。


「そうだな」


 私と神咲くんの楽しい遊園地デート……!緊張もあるけど、何よりも大好きな神咲くんと一緒に遊園地で楽しみたい!

 最近神咲くんのことを考えるたびに思う……私って本当にこれ以上ないぐらい神咲くんのことが大好きなんだって……私がこんなに大好きになる相手が、神咲くんで本当に良かった。

 そのことを考えて少し口元を緩めながら、私は神咲くんと一緒に遊園地に向かい────数十分後、私と神咲くんは遊園地の中に足を踏み入れた。

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