第16話 女友達は膝枕する
◇神咲架side◇
秘桜の家にやって来た俺と秘桜は、早速キッチンに行くと食材を並べて俺が秘桜に料理を教わることとなった。
今日俺が秘桜に教わるのは、俺が自分で作ったことのないカレーということが買い出しの時に決定して、今俺たちの目の前にはカレーを作るための食材が並べられている。
「カレーを作るのは簡単だって思うかもしれないけど、具材の種類が多いから思ってるよりも大変なんだよ?」
「そうなのか」
「うん、神咲くんの食材の切り方とかも私がチェックしてあげるからね!」
「それはありがたいな」
ということで、俺は早速包丁を手に取ると、人参を切り始めた。
一通り人参を切り終えると、秘桜が明るい声で言う。
「うん!良い感じだね!」
「人参は時々俺のお弁当にも使うからな」
「うんうん、じゃあ次はこの玉ねぎ切ってみよっか!」
「玉ねぎか……」
玉ねぎは普段あまり切ることはないが、とりあえず人参とかと同じように────
「待って、神咲くん、玉ねぎには玉ねぎの切り方があるの」
「そうなのか?」
「うん、私がお手本見せてあげる」
そう言うと、秘桜は後ろから俺の体を密着させて俺が手に持っている包丁を手に取ると、玉ねぎを縦半分に切った。
だが────俺は正直、秘桜の体が俺の背中に密着していることの方にとても意識を向けてしまっていた。
秘桜の表情からそれが意図的でないことはわかるし、料理中、それも包丁を扱う時や火を扱っているときなどは、他のことに意識を向けてはいけないのは基本中の基本だから、秘桜もそっちの方に意識がいっていないんだろう。
でもだからと言って、今包丁を握っていない俺は上から下までどこを取ってもスタイル抜群の秘桜にこんなに体を密着されてしまえば、当然そっちに意識が────向いていたが、俺は今秘桜に料理を教えてもらっていることと、秘桜はあくまでも女友達であることを思い出し、どうにか平静を保つことにした。
「玉ねぎを切るときは、基本的にまずは縦半分に切るの」
「そう……か、どうしてだ?」
「玉ねぎの真ん中の方には芯があって、それを取り除くためだよ」
「なるほど、な」
そう言うと、秘桜は実際に慣れた手つきで玉ねぎの芯を取り除いてみせた。
よし、秘桜……早く俺に包丁を返して、俺から離れ────
「せっかくだから、玉ねぎは私が切っちゃうね」
「え……!?」
秘桜は、宣言通り続けて玉ねぎを切った────が、秘桜が料理慣れをしていて、ほとんど一瞬で玉ねぎを切り終えたので、包丁をまな板の上に置くと秘桜はすぐに俺の体から離れてくれた……危なかったな。
ギリギリのところで料理の方に意識を残らせることができた俺が安堵していると、秘桜が俺の顔を見て言った。
「神咲くん、どうかしたの?顔ちょっと赤いよ?」
「え?あぁ……なんでもない、それよりも早く料理を────」
「ダメだよ!神咲くんが顔を赤くしてるのなんて初めて見たから……もしかして、今日体調不良だったの?」
まさか秘桜が料理してくれている最中に別のことに意識が向いていた、それも意識が向いてしまっていた対象が俺の背中と密着している秘桜だったなんて絶対に言えない。
「違う、本当に大丈夫だ」
「神咲くんは強がってそう言っちゃいそうだから、やっぱり一回休もうよ……ほら、こっち来て?」
俺は秘桜に手首を掴まれると、リビングへと連れられてきた。
すると、秘桜はソファに座って自分の膝をポンポンと叩いて言った。
「ここで休んで良いよ、神咲くん」
「……え?……待ってくれ、俺は本当に大丈────」
「強情だね……でも、体調不良かもしれないのに、休みたくないなんてわがままは聞いてあげないよ」
秘桜は、俺のことをソファに座らせると、俺の頭を秘桜の上に置かせた。
これって……もしかして今、俺は秘桜に膝枕をされてるのか!?
◇
この作品の連載が始まってから二週間が経過しました!
この二週間でこの作品をここまで読んでくださったあなたに、この作品に対する気持ちをいいねや☆、コメントなどで教えていただけると本当に嬉しいです!
作者はこの物語をとても楽しく描かせていただいているので、あなたも引き続きこの物語を楽しんで読んでくださることを願っています。
今後もよろしくお願いします!
◇
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