第14話 女友達は関係性を変えたい
「あ〜ん」
昼休みの屋上で、秘桜が俺の口元にポテトサラダを運びながらそう言った。
「気恥ずかしいから、それを言葉にするのはやめてくれ」
「私はこっちの方が楽しいよ?」
「秘桜が楽しいかどうかは聞いてない!」
そう言いながらも、俺はしっかりと俺の口元に運ばれてきたポテトサラダを食べる。
最近は毎日秘桜の作った料理のどれか一品を食べていて、今日はポテトサラダだ。
「……」
甘さもありながら少し塩分も含んでいて、食感も良い。
「美味しい?」
「あぁ」
「ありがとう」
……味自体は美味しいから毎日食べるのは苦どころか俺にとっても嬉しい限りだが、食べ方に大きな問題があるからそこだけは本当にどうにかしてほしいものだ。
俺は、この気恥ずかしさをどこかへ持っていくために、すぐに話題を切り替える。
「そういえば、秘桜の好きな人との関係の進展は順調なのか?」
「うん、順調だと思うよ……相手が私のことを異性として意識してくれてるかは、まだわからないけど、これから少しずつ異性として意識してもらう機会を増やしていこうと思ってるの」
「そうか」
俺が普段学校で秘桜のことを見る時は、あまり俺以外の男子と話しているイメージはないが、裏ではしっかりとその好きな人との距離も縮めているようだ。
「異性として意識してもらうためには、会話とかも重要だけど、ボディタッチとかも重要だって前に買った私の本に書いてあったの」
「……あの『男友達のオトし方』っていう本か?」
「う、うん……タイトル名言われると恥ずかしくなっちゃうね」
確かに、タイトルだけ言われると、買った張本人としては恥ずかしさが出てしまってもおかしくないタイトルかもしれない。
「……秘桜は、その好きな人のことをその本のタイトルの名前にあるように、オトしたいと思ってるのか?」
「そんな偉そうなことを言うつもりはないよ……でも、そのぐらい積極的にならないと、いつまで経っても友達のままだと思ったから……その関係性を、早く変えたいの」
「秘桜ならあの手この手で積極的にならなくても、ストレートに告白すれば付き合えそうだけどな」
俺がそう言うと、秘桜はその時のことを想像したのか、顔を赤くしながら両手を振って言った。
「む、無理だよ!絶対断られて気まずくなって遠ざけられちゃう!」
「そんなことはない、もしそうなったとしても、その時はまた俺に相談してくれればいい」
俺がそう言うと、秘桜は少し落ち込んだ表情で言った。
「……それで失敗したら、もう神咲くんが私のことを避けてお話もできなくなるかもしれないから、やっぱりストレートに告白なんてできないよ」
「俺が、秘桜のことを避ける?告白を失敗したからって俺が秘桜のことを避けるわけないだろ?」
「……そう、だと良いんだけどね」
秘桜は、相変わらず落ち込んだ様子でそう言った。
「……」
この空気は良くないと思った俺は、話題を切り替えて言う。
「そういえば、秘桜は次の休日予定は空いてるのか?」
「休日……?うん、空いてるよ?」
「そうか、じゃあこの間話してた料理を教えてくれ」
「お料理……あ〜!うん、お料理ね!いいよ!私の家でいいよね?」
秘桜はとても楽しそうな様子でそう言った。
「あぁ、それでいい」
俺は、やっぱり秘桜は楽しそうな方が似合うなと思いながらそう返事をする。
「じゃあ私、明日買い出しに────」
「待ってくれ、せっかくだから買い出しは一緒に行こう」
「……え?」
俺が買い出しは一緒に行こうと申し出ると、秘桜は困惑の声を上げた。
……え?
「嫌だったか?」
「ううん、嫌とかってわけじゃないんだけど……買い出しデートってこと、だよね?神咲くんと……!楽しみ……!」
秘桜は小さな声で何かを呟いた。
「悪い、なんて言った?聞こえなかった」
「な、なんでもないよ!じゃあ、当日に一緒に買い出ししに行こっか!」
「そうしよう」
俺と秘桜は詳しい日時を話し合いながら、二人で一緒に昼食を食べ終えた。
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