第11話 女友達は抱きしめる

「……秘桜、どうして俺のことを秘桜の部屋に連れてきたんだ?」


 秘桜の部屋はとても綺麗で、理想的な女子の部屋と言えばこんな感じという部屋の内装だったが、今はそれよりも目の前に居る秘桜との間にあるこの緊張感のことで頭がいっぱいだった。

 そして、その緊張感の答えを知るべく秘桜にそう聞いてみた……すると、秘桜は落ち着いた表情で言った。


「さっきも言ったことだけど、私は一般の意見じゃなくて、神咲くんの意見を聞きたい……だから、もし神咲くんが、私の胸の大きさに配慮して、私が落ち込まないように胸が大きいのは嫌いじゃないって言ってくれてるんじゃないかなって思ったの……だから私は、嫌いじゃないっていう言葉じゃなくて、ちゃんと好きか嫌いかを神咲くんの口から教えて欲しい」


 そんなこと答えるのも恥ずかしかったが、秘桜が求めているというのであればそれに答えるのが俺の勤めだ。

 俺は、少し恥ずかしさを覚えながら口を開いて言った。


「あまり声を大にして話せるような話題じゃないが、好きか嫌いかで言えば……好きの部類に入る────も、もういいだろ?」


 俺は恥ずかしさを抑えながらそう答え、すぐに話題を変えようとしたが、秘桜は相変わらず落ち着いた様子で言った。


「神咲くんは優しいから、言葉だけならそう言ってくれるってわかってるよ」

「どうしてそうなる、俺が優しい優しくないとかは関係ない……秘桜は、どうすれば俺の言ってることを信じてくれるんだ?」

「うん、神咲くんのことを信じるために、私は神咲くんのことをこの部屋に連れてきたの」


 そう言うと、秘桜は制服のブレザーのボタンに手を付けて、そのボタンを外し始めた。


「秘桜……?」

「今から実際に私が私の胸を神咲くんに見せてあげるから、その時の神咲くんの反応とかで、神咲くんの言ってることが本当かどうか判断するよ……それに、もしかしたら神咲くんが私のことを本当の意味で異性として見てくれる可能性も高くなるから」


 秘桜は最後に俺には聞こえない声で何かを呟いていたが────そんなことはどうでもいい!

 今秘桜はなんて言った?ていうか実際にブレザーのボタンを外してる?意味がわからない……胸を、見せる?俺の反応?

 本当に秘桜が突然何を言い出しているのか、何をしようとしているのかということが今までで一番理解できなかったため、俺はブレザーのボタンを外している秘桜に言う。


「秘桜、そんなことしなくてももっと別の方法があるんじゃないのか?」

「もし本当に好きだって言ってくれるなら、私が脱ごうとするのを止めるのはおかしいよ……それとも、神咲くんにとって私の胸は大きいに入らないかな?」

「そんなことは、ない……」

「じゃあ、止めないでくれるよね?」


 その後、秘桜はブレザーを脱ぐと、今度は制服の長袖シャツが姿を見せた。

 ……長袖シャツを着ていてもわかるほどに、胸元の主張が激しい。

 だが、秘桜はそのことを気にせずに、さらにその長袖シャツのボタンを外────そうとしたが、俺はその秘桜の手を止めて言う。


「秘桜、やっぱりこんなことしなくていい」

「止めるってことは、本当は胸が大きいのは────」

「胸が大きいのが好きとか嫌いとかそういう話じゃない、秘桜のことが友達として好きだから言ってるんだ……だから、そんなことしなくていい」


 俺の思っていることを、自然に言葉として伝えることができた。

 これで秘桜は今行おうとしている行動をやめてくれて、この緊張感のある雰囲気も終わり────


「っ……!神咲くん!」


 と思っていた俺だったが、秘桜は俺の名前を呼ぶと、俺のことを抱きしめてきた────抱きしめられたことによって、秘桜の胸どころでなく体全体が俺に密着していたが、秘桜はさらに俺のことを力強く抱きしめてきた。

 ……え?

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