第8話 女友達の家
「神咲くん!」
休み時間になると、隣の席の秘桜が俺に話しかけてきたため、俺はそれに返事をする。
「どうした?」
すると、秘桜は俺に話しかけてきた理由を説明し始めた。
「今日は相談とかじゃないんだけど、もし神咲くんが今日の放課後用事なかったら、この前言ってた私のお料理を食べに来てもらうっていうのをお願いしたいなって思って……!」
「あぁ……そういうことなら、用事はないから行こう」
俺がそう答えると、秘桜は声を高くして言った。
「ほ、ほんと!?やった……!」
その嬉しそうにしている秘桜の姿に、少し可愛いと感じてしまった俺だったが、すぐにその考えを消して、放課後を迎えた。
秘桜と一緒に学校から出て、秘桜の家に向かっている最中、秘桜が言った。
「今日は私の両親家に居ないから、神咲くんは自分の家みたいにくつろいでいいからね」
「そういうことなら、そうさせてもらおう……でも、両親が居ない時に俺のことを家に呼んでも良いのか?」
「……え?」
俺がそう聞くと、秘桜は困惑した様子で足を止めて、今度は慌てた様子で言った。
「な、なに!?わ、私の両親が家に居ない時に神咲くんのことを家に呼んだら、何か……起きちゃうの?」
秘桜は頬を赤く染めながらそう聞いてきた。
……秘桜が何を考えているのか俺にはわからなかったが、とりあえず俺は俺の確認したかったことを確認する。
「何が起きるのかはわからないが、俺が言いたいのはそうじゃなくて、せっかくの両親が居ないタイミングなんだから、秘桜の好きな人っていうのを誘えば、二人きりで良い雰囲気なれたんじゃないのかってことだ」
「あ、あぁ……そっちね」
秘桜は少し落ち着いた様子で言った。
「そっち……?他に何かあったのか?」
「え……?う、ううん!?何も!?」
秘桜は頬を赤くしてそう否定すると、秘桜は少し真面目な表情で聞いてきた。
「……神咲くんは、もし私が好きな人のことを家に誘ったら、その時は何かしたほうがいいと思う?」
「距離を縮められそうなら、距離を縮められる何かはした方がいいと思う」
「例えば、今回みたいに名目上はお料理を食べてもらうってことで誘ったとしても?」
「名目はその名の通り名目で、その内容をどうするかは秘桜が自由に決められる……だから、その時は秘桜がしたいことをすれば良い」
俺がそう答えると、秘桜は少し口角を上げながら頬を赤く染めて「そうだね……うん、わかったよ、神咲くん」と返事をして、再び秘桜の家に向けて歩き出した。
その時の秘桜の雰囲気が、どこか不思議に感じられたが、俺は特に気にすることなく秘桜と一緒に秘桜の家へと向かった。
────それから数分後。
「お邪魔します」
「どうぞ!」
俺は、秘桜の家に上がらせてもらっていた。
秘桜の家は三階建ての一軒家で、今居るこの玄関からもう良い香りが漂っていた。
そして、俺は秘桜にリビングへと案内された。
「じゃあ神咲くん、リビングの椅子に座って待ってて、すぐお料理作ってくるから!」
「あぁ、わかった」
秘桜は俺に微笑みかけると、楽しそうな様子でキッチンへ向かった。
俺は言われた通りにリビングの椅子に座った────リビングでも、相変わらず良い香りがする……この良い香りというのは、まさに美人な女子の香りと言われてイメージできるような香りだ。
……というか、よく考えたら俺は今、あの秘桜の家に居るのか。
人生で初めて来る、女子の家。
「……」
俺はただ秘桜の作った料理を食べに来ただけだ、だから緊張する必要はない、緊張する必要はない────はずなのに、何故か俺は少し緊張感を覚えていた。
……どうしてか、俺はこの秘桜の家に居る間に、何か予想外のことが起きそうな気がしてならなかったが、ひとまず秘桜が料理を終えるまでに、なんとかして緊張感を無くそうと努力することにした。
◇
この作品の連載が始まってから一週間が経過しました!
この一週間の間にこの作品をここまで読んでくださったあなたに、この作品に対する気持ちをいいねや☆、コメントなどで教えていただけると本当に嬉しいです!
作者はこの物語をとても楽しく描かせていただいているので、あなたも引き続きこの物語を楽しんで読んでくださることを願っています。
今後もよろしくお願いします!
◇
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