第7話 女友達は嬉しいらしい
翌日の昼休み、秘桜に屋上で相談事があると誘われたため、秘桜と一緒に屋上へとやって来た。
俺と秘桜の手には、しっかりとお弁当が握られている。
互いに隣り合わせになるようベンチに座ると、秘桜が早速口を開いた。
「今日の相談内容は、昨日一人で考えてみたんだけど、一人で考えてみてもわからなかったから、神咲くんに相談したいって思ったことなの」
「そうか……それで、その相談内容っていうのは?」
「……その前に、この相談内容の前提として重要なことなんだけど、神咲くんはよく女の子と出かけたりするの?」
……え?
俺が女子と……出かける?
「その確認が、相談の前提として重要なのか?」
「うん、とっても重要!」
秘桜はハッキリとした口調でそう言い切った。
……秘桜の雰囲気を見てみるに、どうやら冗談で言っている感じではなかったため、俺は正直に答えることにした。
「特に出かけたりはしない、昨日秘桜とケーキを食べに行ったのが、人生で初めて女子と二人きりで出かけた日だ」
「は、初めて……二人きり……!そ、そうだったんだ……!」
俺が正直に答えると、秘桜は嬉しそうに頬を赤く染めた。
……その理由が俺にはわからなかったが、おそらく相談の前提として必要なことだったんだろうか。
「これで相談に必要な前提条件は満たせたのか?」
「う、うん!満たせたよ!じゃあ、ここからが相談なんだけど……神咲くんは、異性に対して魅力を感じる時ってある?」
「異性に対して魅力を感じる時……」
俺が少し考え込んでいると、秘桜が補足するようにして言った。
「どんな時でも良いんだよ?例えば好きな仕草があるとか、こういう服が好きとか────」
秘桜が色々と案を出してくれている中で、俺は異性に魅力を感じた時という単語を聞いて────思わず秘桜に見惚れてしまったあの笑顔を思い出していた。
そして、そのことを口にして伝える。
「……笑顔」
「……え?」
「昨日見た秘桜の笑顔はとても良かった」
「っ……!」
秘桜は口元を強く結んで、驚いたような顔をした。
……って、秘桜が俺に恋愛相談してる目的は、秘桜の好きな人と秘桜が付き合うために男子側の意見も欲しいってことなのに、個人としての俺の気持ちを伝えても意味がない。
「悪い、俺個人がそう思ったってだけの話だから、今回の異性に対して感じる魅力とはまた別だったな……もっと他の────」
「ううん、それだけで十分……ありがとう神咲くん、私とっても嬉しい」
俺が別のことを捻り出すと言おうとしたが、秘桜は嬉しそうな顔をしながら優しい声音でそう言った。
「そ、そうか」
俺としては少し物足りない気もしたが、相談者の秘桜が嬉しそうな顔をして十分と言ってくれているのであれば、これで納得する他ない。
「じゃあ、昼ご飯食べるか」
そう言ってお弁当に手をかけようとした俺だったが、秘桜が「待って!」と言ってきたため、俺はその手を止めて秘桜の方を見る。
「どうかしたのか?」
「あと一つだけ、確認したいことがあって、その……昨日、私のお料理食べてもらうために、私神崎くんのこと家に誘ったでしょ?そのこと、どう思ってるのかなって」
「どう……?」
秘桜は何故か顔を赤くしているが、ここは素直にそのまま答えておこう。
「秘桜の料理が楽しみだと思った」
「……それだけ?本当に?私に対して何か変な偏見とかない?」
「悪い、本当にどういうことだ?秘桜に変な偏見なんてあるわけない」
「そ、そうだよね……ごめん、私の考えすぎだったみたい!じゃあ、今度こそ一緒にお昼ご飯食べよ?」
「あぁ」
今日は色々とわからないことだらけだったが、一応は秘桜の相談を解決することができて、二人で一緒に昼食を食べた。
前昼休みに屋上に来た時は秘桜が先に屋上から出て行ってしまったが、今日は楽しく二人で昼食を食べることができて、秘桜とも前より仲良くなっているんだな、ということを感じることができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます