第6話 秘桜真琴のお出かけ後

◇秘桜真琴side◇

 家に帰った私は、自分の部屋に入ってドアを閉めた瞬間に、そのドアにもたれかかるようにして膝から崩れ落ちた。


「無事に終わって良かった〜」


 今まで学校外では関わったことのなかった神咲くんのことをお出かけに誘って一緒に美味しくケーキを食べて、今後の放課後も一緒に出かけることや私の家に来てもらって料理を食べてもらうという約束をできた……膝から崩れ落ちちゃったのは、そのことをハプニングが起きずに成し遂げられたことが嬉しかったり、あとは自分の部屋に帰って来たから安堵感がすごかったりするからだと思う。


「神咲くんかっこよかったなぁ、ずっと落ち着いてて、私の言ったことにも肯定的な返事をしてくれて……」


 私は、ついさっきの神咲くんとのお出かけの時の神咲くんの振る舞いや態度を思い出し、思わず頬を緩めてしまった。


「私なんて神咲くんがケーキを食べるまでずっと緊張してたのに……神咲くんが美味しそうにケーキ食べてる顔、可愛かったなぁ、今度私の家に神咲くんのこと呼んで私の作ったお料理食べてもらう時も、美味しかったらあの顔で食べてくれたりするのか────な?」


 この時、私は自分で呟きながら二つ思ったことがあった。

 一つは、どうして神咲くんがあんなに落ち着いていたのか……別に神咲くんに慌てて欲しいわけじゃないけど、せっかくだから神咲くんがちょっとぐらいドキドキしてる姿も見てみたい!

 でも、今日の神咲くんにそんな素振りは全くなかった……いくら神咲くんが普段から落ち着いてる性格って言っても、仮にも異性と出かけるならちょっとぐらいいつもと違った様子があっても良いはず。

 ケーキを食べてる時はいつもと違う新しい神咲くんのことを見れたけど、あれはそういうのじゃなかった。


「……考えられる理由は二つ」


 一つ目は、神咲くんがとても女の子慣れしてる。

 学校で見てる限りはそんなに女の子と話してるイメージはないけど、神咲くんは落ち着いててかっこいいから、女の子の一部の間で人気があるのは知ってる……もしかしたら、その子たちと普段から放課後は出かけたりしてて、私と出かけることなんて緊張する理由がない。


「これは考えたくないから、二つ目」


 二つ目は、そもそも私が異性として見られてない。

 可愛いとは言ってくれたけど、それはもしかしたら小さい子とかマスコットキャラクターとかに言う可愛いかもしれない……仮にそうなら、確かにそんな相手とお出かけしても緊張はしない。


「ど、どっちも考えたくない……」


 でも、もし神咲くんが女の子慣れしてるんだとしたら私にはどうしようもないから、後者って考えることにする。

 私が異性として見られてない。


「……」


 私はスマホを取り出して、男の子が女の子に異性的な魅力を感じる時っていうのを調べてみた。

 すると、色々と出て来たけど、やっぱり一番多いのは肌を露出させる時……だけど。


「例えば私が上着を脱いだりしたとしても、神咲くんが私のこと異性として見てくれてるの……全然想像できない」


 ────これに関しては一人で考えても仕方ないから、今度神崎くんに相談してみることにして、私が思ったもう一つのこと。


「私、軽い女って思われてないかな!?」


 だって、いくらお料理を食べてもらうためって言っても、初めてのお出かけの時からいきなり家に誘うなんて────急すぎるよ!

 異性のことを家に誘うっていうことは、少なからずそういう流れになっちゃう可能性も────


「そういう流れ!?」


 そ、そういう流れってどういう流れ!?か、神咲くんと私が……!?

 べ、別に私は良いけど、色々準備とか……ってそんなの良いわけないじゃん!お料理食べに来てもらうってだけなのに、何考えてるの私!


「……はぁ」


 これ以上一人で考え込んでも変な考えしか浮かびそうになかったため、私は課題を終わらせ、明日も神咲くんとお話することを楽しみにしながら私は眠りへと落ちた。

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