第4話 女友達と美味しいケーキ店

「あのお店が、私の言ってた美味しいケーキ店」


 そう言って秘桜が指を指した先にあるケーキ店は、少しだけ行列ができていた。

 俺と秘桜は、二人でその行列に並ぶ。


「ここ席多いから、行列ができてても結構すぐ入れちゃうんだよね」

「行列ができるってことは、やっぱりそれだけ人気ってことか」

「うん、本当に美味しいからね」

「そうか……でも、だったら尚更俺じゃなくてその好きな人っていうのと────」

「そ、それより!ケーキのメニューあるみたいだから、どのケーキにするか選ぼうよ!いちごの乗ってるケーキって言っても、たくさんの種類があるから!」

「わ、わかった」


 俺はまたも謎の勢いを感じさせてきた秘桜と一緒に、ケーキのメニューを見てみる。

 そこにはショートケーキから大人数用のホールケーキ、そして味も生クリームからチーズケーキまで、色々なものが載っている。

 そんなメニューを見ていると時間はあっという間に感じられて、俺と秘桜はすぐに行列の一番前になっていた。

 そして、店員さんが店の中から聞いてくると、笑顔で聞いてきた。


「二名様でしょうか?」


 そう聞かれたので、俺は簡潔に答えた。


「はい」

「では、お席にご案内します」


 そして、俺と秘桜は入店すると、対面になっている席に座り、そのままケーキを注文した。

 ケーキは二人とも同じ、いちごのショートケーキだ。

 そのケーキが運ばれてくるのを待っている間、俺はなんとなく店の内装や客層なんかを見ていて、あることに気がついたのでそのことを口にした。


「客は、ほとんどが女子のグループかカップルばっかりみたいだな」

「カップル!?そ……そうだね、も、もしかしたら私たちもカップルに見えちゃってたりするのかな?」


 秘桜は頬を赤く染めながらそう聞いてきた。


「どうだろうな、でもおそらくほとんどは俺たちがカップルに見える以前に、秘桜の綺麗さに驚くんじゃないか?」

「綺麗……それって、神咲くんから見て私は異性として魅力────」

「お待たせいたしました、ショートケーキ二つです」

「は、はい!」


 秘桜が何かを言いかけたところで、店員さんが二つのショートケーキを持って来て、それを俺と秘桜の間にあるテーブルに置いた。

 その二つのショートケーキには、しっかりといちごが乗っている。


「では、失礼します」


 そう言うと、店員さんはこの場を立ち去ったため、俺はすぐに秘桜に聞いた。


「秘桜、さっき俺に何か聞こうとしてたか?」


 俺がそう聞くと、秘桜は顔を赤くして言った。


「え?う、ううん、なんでもないの!それよりケーキ食べよ?」

「わかった、それならそうしよう」


 俺は早速、そのケーキを一口食べる。

 ふんわりとした食感に、濃厚な生クリーム……美味しいな。

 俺がしばらくそのケーキの美味しさに夢中になってケーキを食べ進めていると、ふと対面から視線を感じたのでその視線の方を見た────すると、秘桜が何故か少し頬を赤く染めて楽しそうにしながら俺のことを見てきていた。

 そして、まだケーキに一口も口をつけていないようでもあった。


「秘桜?ケーキを食べないのか?」

「ううん、食べるよ……でも、神咲くんが美味しそうにケーキ食べてるの見てると嬉しくなっちゃって……もし私が美味しいもの作ってあげたりしたら、神咲くんはそれもそんなに美味しそうな顔で食べてくれるのかな?」


 ……完全に油断していたから、おそらくあの美味しいケーキを食べている時の俺の表情は、かなり口元が緩んだものになっていただろう。


「……恥ずかしいな」


 俺がそう呟くと、秘桜は首を横に振って言った。


「恥ずかしがることないよ、神咲くんの新しい一面が知れて、私は嬉しいって思ってる……神咲くん、よかったらこれからも、時間があるときは私とこうしてお出かけしてくれないかな?」

「あぁ、それはもちろん良い、が……俺がケーキを食べてる時は、俺のこと見ないでくれないか?」

「難しいね」

「どうしてだ!?」


 その後、俺と秘桜は、軽く言い合いをしながらも、楽しく美味しくショートケーキを食し、店内から出た。

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