第2話 女友達から初めての恋愛相談
「おはよう、秘桜」
「お、はよう神咲くん」
教室に入って俺と挨拶をした秘桜だったが、昨日俺にあの恋愛本を買っているところを目撃されたことを思い出したようで一瞬言葉に詰まっていた様子だった。
だが、すぐに普段通り挨拶をしてくれて、秘桜の席である俺の隣の席に座った。
「……神咲くん、今日のお昼休み早速相談したいことがあるんだけど良いかな?」
「あぁ、わかった」
誰かに恋愛相談をされることなんて今まで無かったし、恋愛も未経験なため俺に秘桜の恋愛相談役が務まるのかどうか不安な部分もあるが、引き受けた以上はできるだけやってみよう。
そう決めて、俺は少しの緊張感を抱きながらも昼休みを迎えた……俺と秘桜は昼休みになると、それぞれお弁当を手に持って普段人の来ることのない屋上へとやって来た。
そして、ベンチに二人で隣り合わせに腰掛けると、秘桜は口を開いて言った。
「初めての恋愛相談の前に、私の好きな相手の男の子について話しておくね」
「ありがたい」
秘桜の好きな相手の話を何も知らずに恋愛相談を聞いてもあまり役には立てなかっただろうから先に教えてもらえるのは本当にありがたい。
「私の好きな男の子は、私の男友達なの」
「あぁ……」
それで『男友達のオトし方』なんていう本を持っていたのか。
「何がきっかけで好きになったんだ?」
「一緒にお話ししてると楽しかったり、時々私のことちゃんとわかってくれてたりするところが好きになったの」
そう告げる秘桜は、まさに惚れている女子と言った顔になっていた────甘酸っぱい。
「そ、そうか」
その真っ直ぐな恋心に対して、俺はそのぐらいの返事しかできなかったが、秘桜はさらに続けた。
「でも、その人は私のこと友達としか意識してないみたいなの……だからどうにか私のこと異性として意識してもらって、できたら恋人になりたいなって思ってるの!」
「なるほど……良いんじゃないか?だが、本当に俺が相談相手で良いのか疑問に感じてきた」
「絶対に神咲くんじゃないとダメなの!神咲くん以外だったら意味ないから!!」
「意味ないなんてことはないと思うが……でも、友達としてそこまで俺のことを頼りにしてくれるのは嬉しいな、そういうことなら男子側の意見を秘桜に教えよう……ただ、もしその人と本当に恋人になれたなら、俺にも相手ぐらいは教えてくれ、盛大に祝う」
「え……?う、うん、その時には神咲くんもわかってると思うよ」
「そうか」
秘桜の反応がどこかおかしかったような気もするが、恋愛絡みの話ともなるとそうなったとしてもおかしくないか。
俺が秘桜の反応に対してそう結論づけていると、秘桜が言った。
「じゃあ、前提を聞いてもらった上で、私からの恋愛相談なんだけど……私、もしかしたら見た目のせいでその人に友達としてしか意識してもらえてないのかもって考えてるの」
「……見た目?」
秘桜はどこからどう見ても清楚系美少女としか言いようのない見た目をしているが、一体この美少女のどこに友達としてしか意識できない要素があるんだろうか。
「うん……もしかしたら、その人にとって私は異性としての外見的な魅力はないのかも……だから、今日は神咲くんに私の外見についてどう思ってるか聞きたくて」
「可愛いと思う」
「……え?」
可愛いなんて直接伝えるのは少し照れるが、秘桜ほどのルックスがありながら外見に自信を持てないなんてもったいないにも程があると考えた俺は、思っていることをそのまま伝えることにした。
「秘桜は異性としての外見的な魅力があって可愛いと思う、可愛いって言うよりも綺麗って表現した方が合ってるか」
「ちょ、ちょっと、いきなりそんなこと言われると────」
秘桜が顔を赤くし始めたが、俺は迷わず続ける。
「俺の一意見なんかじゃ何も変わらないかもしれないが、クラスで一番、下手したら学校、もっと言えば高校生の中でも────」
「もうやめて〜!」
秘桜は大声でそう言うと、顔を赤くしながら、だがどこか嬉しそうに屋上から去って行った。
「……思っていることを直接的に伝えすぎたのかもしれないな」
あとで秘桜さんに会うことがあれば、一応軽く謝っておくとしよう。
その後、俺は屋上で一人お弁当を食べ始めることにした。
「か、神咲くんにとって私って可愛いんだ……照れちゃったけど、嬉しい……!!」
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