チャット・水曜日の焼肉

 本日、週の折り返しの水曜日。いつも通り仕事を終わらせてチェアの背もたれをぐっと押すように伸びをする。背骨が鳴った。姿勢が悪い証拠である。兵賀に見られたら怒られるなぁと思った。そんな時、スマートフォンに通知が入った。

 

 兵賀:「今夜焼肉食いに行かないか」

 三角:「奢り?」

 九木田:「奢りか?」

 兵賀:「ほぼ同時の返信がそれか」

 兵賀:「奢らん、割り勘」

 三角:「えー、ケチ」

 兵賀:「ちょうど割引券があって安く食えたんだが残念だ」

 三角:「ケチだなんて思ってないYO」

 

 割引で焼肉にありつけるなんて滅多にない。ありがたい。肉食べたい。奢りじゃなくても構いません、すみません。

 

 九木田:「タン塩ひとつ」

 三角:「くっきー、残念ながら君の手の中にある端末はお店のものじゃないんだよ……」

 九木田:「カルビも」

 三角:「ひょーちゃん、こいつどこの画面見て文字打ってると思う??」

 兵賀:「さあな」

 兵賀:「それより今日は週の折り返しだ。焼肉食って精をつけるぞ」

 九木田:「お前たち、わかめスープいるか?」

 三角:「ここがグループと認識しながら虚空に注文してると思うと怖いから早いとこ、くっきーを回収しよう、ひょーちゃん」

 兵賀:「そうだな、俺も少しゾッとした」

 

 グループにひたすら焼肉の注文を打ち込んでくる九木田に対し、兵賀と一緒に引き始めるわたし。九木田には何が見えているというのか……。

 

 三角:「幽霊焼肉屋……」

 兵賀:「やめろ」

 九木田:「わかめスープの注文入れるぞ」

 三角:「くっきーやめて、わたしたちのライフはゼロよ!」

 九木田:「冗談だ」

 兵賀:「どこから?」

 九木田:「さてな」

 三角:「いてこます」

 兵賀:「九木田、三角の導火線に火をつけるな」

 九木田:「すまんな、あまり悪いとは思ってないが」

 三角:「本音言うてみ?」

 九木田:「全く悪いと思ってない」

 三角:「いてこます」

 

 ギリィ……とスマートフォンを握る手の力を強める。こいつ、むかつく。

 

 兵賀:「やめろ小学生ども」

 兵賀:「俺の割引券がないと通常価格だぞ」

 三角:「ごめんちゃい」

 九木田:「悪い」

 兵賀:「よし、それじゃあ焼肉屋の情報はこれから送るから各々安全かつ迅速に店に来るように」

 三角:「ウィッス」

 九木田:「ウィッス」

 兵賀:「お前ら本当に仲がいいな……」

 

 その後、全員定時で仕事を終わらせていたわたしたちは焼肉屋へ集合。今度こそ本物の端末で九木田にオーダーを入れてもらったわたしたち。焼肉をおいしくいただきました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三つ角 弥栄井もずま @mozma_13

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ