第50話 流れゆく時間

☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆


伊藤信孝。

アイツは...俺の友人だったけど。

結局学校に邪魔をしに来る不良になってしまった。

須崎シノンに全てを変えられた哀れな存在だ。

だけどもう情けはかけられない。

こうなった以上は、だが。


「2年B組です!焼きそば食べて行きませんか!」

「2年A組です!お化け屋敷しています!」


学校中は物凄い盛り上がり様だった。

俺はその中で仕事が無くなったので見回りをしていた。

そうしていると「先輩」と声がした。

俺を先輩と呼ぶやつって居たっけ?


「?」

「先輩」

「...シウ?お前何をしているんだ」

「見て分かりませんか。ミリタリーです」

「それは分かるが胸元が...」

「そうですね。...少しだけスースーします」


ビキニ的な。

胸元が若干開けた感じの服装をしているシウ。

俺は赤面しながら目を逸らす。

あまり恥じらってない様だが...その。

俺は恥ずかしいのだが。


「...先輩のエッチ」

「え!!!!?」

「エロいです。目線が」

「...エロいですって俺はそんな恰好を勧めた訳じゃない」

「そうですね。でも先輩の目がいやらしいです」


シウは胸元を隠す仕草をする。

俺は後頭部を掻きながら「それはそうと何の用事だ」と聞いてみる。

するとシウは何かを思い出した様にハッとして「そうでした」と手書きのチラシを渡してくる。

それはミリタリーの...展示をやっているという宣伝のチラシだった。


「ぜひ来てください」

「...分かった。有難うな。シウ」

「有難う御座います。では」


そしてシウは去って行く。

俺はその姿を見ながら「ふむ。後で行ってみるか」と声を発する。

すると背後から「胸目当てか」と声がした。

俺は「ああ」と返事...おぃ!!!?!


「やあ。すまんすまん。なんだか良い感じの雰囲気だったからな」

「居たなら言えよ。斗真」

「まあ...俺がとやかく口出ししても意味無いしな」

「いやいや...」

「まあおっぱいは男のロマンだしな」

「お前が言うと格好良いが俺が言うとそれは変態だ」


「全く」と言いながら斗真の服装を見る。

パーリーピーポーかな?

まるで昔のディスコの服装でしかもサングラスって厳ついな。

俺は「?」を浮かべながらドン引きしていると斗真が「そんなドン引きすんなよ。...これだってちゃんとした衣装だぞ」と苦笑した。


「...まあそうなんだけどお前と一緒に歩きたくない」

「酷いな」

「...で。お前も何か用事か」

「ああ。ファッションショーやるだろ。そしてお前が俺のマネージャーだろ。だから呼び来た」

「ふざけんなどうなってんだよ」

「まあ落ち着け。だからこそお前を呼びに来たのだよ」

「勝手に何をしてんだよお前」


何でマネージャーになってんだ俺が。

思いながら俺はジト目をする。

すると斗真は「まあまあ。高校生活だしな。晴れやかにしたくないか?」とニヤッとしながら俺を見る。

俺は「晴れやかってか大変な事態ばっかだけどな」と苦笑する。


「...だけど一理ある。...仕方が無い」

「そう来なくちゃな。マリンも見てくれるしな」

「おー。お前の雄姿をか?お前の彼女がか?」

「おう。まるで俺を責めこむ様に言ってくるじゃないか。相棒」

「そうだな。俺はこれでも腹立っているぞ。何で俺がマネージャーなんぞ」

「まあ落ち着け。終わったら焼きそば奢ってやる」

「いや...」


まあもう良いか。

なる様になってもらいたい。

そう思いながら居るとシウがまた来た。

俺は「どした?」と聞くと「忘れていました」とシウは話す。


「...何を?」

「...シノンに会いに行ったんです」

「...ああ。シウちゃん。それマジか」

「そうですね。...春樹に宜しくだそうです。そして...ゴメンなさいだそうです」

「...アイツもそこそこにまあ頭が正常化してきたみたいだな」

「...でもまあ彼女に会いに行くのはこれで最後かと思います。...私は関係無い。それに会いたくないですから」

「そうだな」


そんな話をしていると「春樹。それから...坂本くん」と声がした。

背後を見ると愛花が居た。

俺達を見ながら「そろそろファッションショーが始まるよ」と言ってくる。

その言葉に斗真が「だそうだぞ。相棒」と言う。

「だそうだぞ」じゃねーよ。


「シウちゃん。また後でな」

「はい」

「おい。マジに俺も行くのか」

「ハイテンションプリーズ♪」

「うるせぇ!!!!!」


そして俺は引きずられてそのままファッションショーの準備室。

つまり控室に連れて行かれた。

それから俺はファッションショーのマネージャーをやらされ...そして解放されたのちに焼きそばを食う。



「やれやれ。俺のファッションじゃなくて女子どものファッションを評価するっちゃー変態も変態だな」

「お前は無理矢理すぎる」

「まあそう言うな。相棒」


そんな感じで会話をしながらにぎやかな中庭で焼きそばを食う俺達。

そして斗真は空を見上げていた。

そうしてから斗真は寝っ転がってから「まあ何はともあれ今に至って良かった」と呟いた。

俺は「?」を浮かべて斗真を見る。


「色々あったけど」

「...まあお前のお陰も半分あるよな」

「俺は何もしてない。全てはお前らが切り開いた。アドバイスをしただけだ」

「嘘つけ。テメーのお陰で随分と切り開けたぞ」

「そんなバナナー」


「そんな馬鹿な」と言いたそうな顔で肩を竦める斗真。

それから俺は街路樹を見たりする。

そして行きかう車とかも。

俺は目を閉じて開けた。


「斗真」

「...ああ」

「将来はどうなるんだろうな」

「...分からん。俺は政治家になる気は無い。そして兄貴もな。だから何も定まらんが取り合えず引き籠りにはなりたくない」

「そうはならんやろ。お前だし」

「マリンの為にもな」


そして俺達はクスクスと笑い合いながらそのまま風に当たる。

流石に10月となったら寒いもんだな。

12月も間近だわ。

そう思っていると「よし」と斗真が起き上がる。


「打ち上げするぞ」

「は?いきなりなんだ」

「俺はお前らの人生を豊かにする義務がある。そして死ぬ」

「意味が分からんわ」


「まあとにかく打ち上げすっぞ。全て終わったらな」

と斗真は意気込んで叫ぶ。

「うぉおぉお!!!!!」と言う感じでいきなりだ。

通行人がビックリしていた。

当然俺も。


「お前な!」

「まあまあ。良いじゃねーか。今日は文化祭だ」

「関係無いわ!!!!!」


そして俺は額に手を添える。

それから俺達はクラスに戻ってから給仕をし始めた。

手伝いという形で、だ。

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