第49話 伊藤信孝への処刑(下)

☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆


いろいろあったけどその日が来てしまった。

結局、本当に伊藤達は私達の元に来なかった。

つまり本番まで待つ気だろう。


私は思いながら春樹と汗を流しながら全校集会に臨む。

すると校長先生の話があっている最中にバァンとドアが開く音がした。

唖然としながら周りを見渡す私達。

そして全てを予想通りぶっ壊しに来た伊藤達が現れる。


「オラオラ!全部ぶっ壊してやんよ!」


と雑魚の様な台詞を吐きながらだ。

金属バット、エアガンを持った不良達が現れる。

それから「なんだね!君達は!?」という教員達を力で振りほどいてから校長先生のマイクを強奪した。

「横田春樹!!!!!佐藤愛花!!!!!テメェらは死ね!!!!!色々しやがって!!!!!」と絶叫する伊藤達。

私達は混乱し始め...ると思ったのだが。


思った以上にクラスメイト達は落ち着いている。

軽蔑の眼差しを向けて静かにしていた。

それどころかクラスメイト達もそうだが他のクラスメイト達も動き出した。


それから駆け出して伊藤達を囲んでいく。

あるものはさすまたで取り押さえようとしている。

何でこんなに落ち着いているのだろう。

そしてようやっと声を発した時にはみんな戦闘モードだった。


「知ってるぞお前の事!!!!!俺達を舐めんな!!!!!」

「そうだぞ!ぶち壊しなんかにさせない!!!!!」

「そうだそうだ!!!!!」


と絶叫しながら全員で頭に当たったらマズそうなバットを振り回す伊藤達を400人ぐらいで取り押さえる。

何というかこれは予想外だったようだ。

坂本くんにとっても。

唖然としている。


「さ、坂本くん」

「何だい?愛花ちゃん」

「これも想定のうち?」

「そんな訳無いな。...想定外だよ。何でか分からないな」


あっという間に怯まない男子達に取り押さえられ教師に引き渡された。

集団リンチにも見えなくはないので怖いんだが、と思いながら私は苦笑い。

それから伊藤達は「クソッタレが!」と小物扱いな感じで捕まってから学校の外に連れて行かれた。

後に警察が来て引き渡された。

その混乱の中で聞く。


「...ねえみんな」

「おう」

「...これは想像していたの?」

「そうだな。想像していたよ。...横田と佐藤に危害を加える奴らが来るっていう噂があってな」

「そうそう。馬鹿だよな。伊藤達も。ネット上に既に情報を豪語していたぞ」


そんな事を聞きながら私は春樹を見る。

春樹は「やれやれ」と肩を竦めながら周りを見る。

みんな取り囲んでおり「サンキューな」と春樹が言う。

するとみんなは「まあチェーンメールみたいなそれで予想できていたし。これで文化祭も安泰開催だろ」と互いに言い始める。

それから春樹は「マジに感謝だわ。助かった」と言いながら笑みを浮かべた。


すると春樹と私に生徒指導部の先生が近付いて来る。

「お前達に話が有る」と言いながら。

クラスメイト達が「先生。待って下さい。そいつ等何も悪くないっす」とか言ってくるが...伊藤が呼んでいたし。

春樹の名前を。

仕方が無いんじゃないかな。


「...先生。加減してやって下さい」

「坂本。勿論だ。この2人には少し話を聞くだけだ」


それから私達はそのまま生徒指導部に向かう。

そして先生を見る。

先生はバリバリの柔道部の先生だった。

そんな私達に「粗茶だが飲むかね」と優しげに聞いてくる。


「先生?」

「緊張しないでくれたまえ。私は嫌な事はしない」

「...有難う御座います」

「...ありがとうございます」


そんな感じで私達は反応する。

それから紙コップに入ったお茶を飲みながら先生は前に腰掛ける。

そして「では」と言いながら「早速だが...あの暴漢と何か関係があるのかね」と聞いてくる先生。

私は「はい」と答えた。

春樹も「はい」と答える。


「ふむ。どういう関係性かね」

「...実は須崎シノンと関係があります」

「須崎...ああ。彼女か」

「...伊藤。彼は俺の友人でした」

「...そうかね。そんな感じか」

「そうです。...だから今回、伊藤に恋愛関係の件で襲撃されました」

「ふむ。若気の至りとは言えない状態だ」


先生はそう言いながら立ち上がる。

それから私達を見る。

「君達はもう用済みだ。戻って構わない。...後の事は私がやっておく」と笑みを浮かべて来た。

私達は「有難う御座います」と顔を見合わせて笑みを浮かべた。

そして紙コップをごみ箱に捨てる。


「でも何かあったらまた頼りたまえ。君達2人の事は良く聞くのでね。話題が一杯だぞ。教師の間でも」

「その節はご迷惑をお掛けしています」

「...それでは。戻りたまえ。楽しんで」

「はい」


それから私達はそのまま帰される。

クラスメイト達の元に戻ると集会は終わっており。

今から何か始まろうという感じだった。

私はクラスメイトを見る。


「コスプレ喫茶楽しみだね。みんな」

「そうだな。楽しみだぜ」

「そうだな」


そして私は春樹を見る。

春樹も笑みを浮かべて目の前を見ていた。

その姿にますますやる気が出る。

正直、障害はあったがこんなに簡単に終わるとは思って無かったし。

成り行きがうまくいっている。


「よーし!!!!!2年D組!!!!!成功させるぞ!!!!!」

「「「「「おらぁ!!!!!」」」」」


そうしてから文化祭が開幕した。

だが...この文化祭。

まだ裏があるとは誰も思って無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る