最終章 ただ1つの愛
愛しいあなたへ
第46話 布石
☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆
それからというもの。
特に...一応、何事も無くそれから半年が経過した。
10月になった。
私の親もそうだが...伊藤信孝もそうだが。
本当に何も起こって無いからそれはそれで良かったと思う。
だけど...クラスメイトが減った。
紅葉が転校したのである。
責任を取って反省して転校した。
それを考えると変動は無かったとは言えないか。
テスト、体育祭。
色々あった。
それから10月になったけど。
10月といえば文化祭の時期がある。
私達はその飾りつけの準備をしていた。
「春樹。これどうしよう?」
「ああ。この荷物か。これはな...」
服が冬服になった様なここ最近。
私達のクラスではコスプレメイド喫茶をする事になった。
クラス委員に就任した坂本くんの発想だけど。
私達は飽きれながらも「良いんじゃないかな」という感じになった。
「ねえ春樹」
「うん。どうした」
「...コスプレメイド喫茶ってすごいよね。今思っても」
「...全くな。アイツの完全な趣味だろ」
「でも今となってはみんなノリノリだね」
「そうだな。なんたってコンテストがあるしな」
クラスで対抗して良い文化祭にしようという感じで大会がある。
その大会とはつまり(クラス合戦)である。
一位になった場合。
賞金が贈られる。
それは流石に冗談だが称号が貰えるそうだ。
「まあそれを考えると張り切るんだろうな」
「そんなものかなぁ」
「そうだな。俺も良く分からん」
そんな感じで言っていると「へいへい」と声がした。
背後を見るとそこに坂本君が居た。
というか...DJの様な格好の人間が居た。
見開く春樹。
そして「お前何をしているんだ」と聞く。
「そりゃDJだよ。コスプレ喫茶だしな」
「早すぎるだろ。ボケナス」
「うるせぇな。心はもう大会だぞ」
「馬鹿言え。遊んでないで飾り付けを手伝え」
「ようちぇけなー」
「遊ぶな」
春樹はジト目になりながら坂本くんを見る。
因みにだが坂本くんも変動があった。
何があったかといえば。
マリンさんと付き合う事になったのだ。
色々あったけど恋人がしっくりくるかという感じでだ。
そんなものなのだろうか?
私達には良く分からないのだが...軽すぎるのでは。
「まあまあ。春樹。落ち着けよ。っていうかノリについてこいや」
「そんなん無理に決まってんだろ。疲れてんだぞ」
「そうか」
そしてヘッドフォンとグラサンを外す坂本くん。
それから苦笑しながら「まあお前を励まそうと思ってな」と言う。
私達は見合う。
「どういう意味だよ」と春樹が梯子から降りながら言う。
「悩んでいるんだろ」
「...何をだ」
「...お前の親だ」
「良く分かったな」
あの後、春樹の親は使い捨てにされた挙句、警察に保護されて施設に入った。
その事で春樹はそこそこ悩んでいる様だった。
それを見透かした様に「まあ俺の相棒だしな」と言う坂本くん。
「お前それも調べたんじゃないだろうな」と飾りを持ってジト目になる春樹。
「それは無いな。お前の顔を見りゃ分かる」
「...そうか」
「ノリノリで行こうぜ。お前の元気な顔が一番だ」
「...無茶苦茶だな。お前も」
「無茶苦茶なのが俺だしな。マリンにも呆れられている」
「...」
因みにだが須崎シノンにも変動があった。
須崎シノンは今、精神科病棟に居る。
色々あったけど家庭裁判所に送致されてからの話だった。
シノン曰く。
「もう一族などには。春樹には接しない」と言っているそうだ。
「...どうした?愛花」
「...いや。今が一番楽しい」
「...そうか?それは結構だぜ。愛花ちゃん」
「でも仕事してね。坂本くん」
「あ、はい」
そう言いながら私はジト目で坂本くんを見る。
すると坂本くんは目を・・にしながら苦笑いを浮かべる。
私はそんな姿にクスクスと笑いながら春樹を見る。
春樹と私はクラスメイトに呼ばれた。
私達はその声に返事をしながら駆け出して行く。
「なあ。愛花ちゃん」
「...うん?何?坂本くん」
「...親父さんは今も何も言ってないのか?」
「...」
実はだが。
私の父親には天罰が下った様だった。
脳出血でいきなり緊急搬送されたという事を聞いたのだ。
唐突なくも膜下出血。
残念ながら発見が少し遅れ。
言語機能障害が残りそうだった。
頭痛を訴えてきたらしいが。
「...親の事は知った事では無いけど。こうなった以上はね」
「...そうだな。...まあ俺にもあの態度じゃ知ったこっちゃ無いけど聞いておこうって思ってな」
「うん」
そして私は駆け出してからクラスメイトと打ち合わせをする。
具体的にはプチコンテストを行うという。
コスプレのだ。
私はその参加者に選ばれる。
そんな感じだった。
「...因みに愛花はどんなコスプレを?」
「佐藤さんはナースさんだよ」
「な、ナース...!?」
「...あ。春樹のエッチ」
「誤解だ。何もエッチな事を考えている訳では無い」
「...そう?エッチだね」
「...ひっでぇ」
私はクスクスと笑いながら春樹を見る。
胸元を隠す仕草を止めながら私は春樹と一緒に笑い合う。
春樹は苦笑いを浮かべながら後頭部を掻いた。
それから私に微笑んだ。
私はその姿を見て窓から外を見た。
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