第45話 貴方との夢
☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆
エッチな気持ちで呼んだ訳じゃ無い。
俺は...愛花と話がしたいから呼んだのだが。
呼ばれた愛花は赤くなってモジモジしていた。
明らかに何か期待しているが。
それは駄目だ。
「...愛花」
「ふぁ!?」
「...俺はえ、エッチな気持ちで呼んだ訳じゃない」
「そ、そう?よ、良かった」
「話がしたい。...お前と」
俺は愛花を見る。
愛花は「?」を浮かべて俺を見てくる。
胸の内を...切り開く様に俺は愛花に聞いた。
「これからは危険が伴うと思う」という感じでだ。
「...これから徐々に対策をしていくけど。...だけど危ない事ばかりだから。...お前に危険が及ばないか心配だ」
「うん」
「...悩みに悩んだんだけど今後も俺に付いて来てもらっても良いのかなって。伊藤の件も消えてないと思うし」
「...私は人生の中で貴方を選んだ」
「危険は確かに隣り合わせだね」と愛花は話す。
それから「だけど」とも言う。
そして俺を見上げてくる。
「私は...貴方無しでは生きられないから。そっちの方がもっと危険だね」と話しながら俺を見てくる。
「...愛花...」
「私ね。...春樹に出会ってから危険な中でも空が明るく見える。...こんな事は今まで一度も無かったと思う」
「...」
「...私は貴方が好きだからこそ。...こうして動ける」
「そうか」
「どうあっても私は貴方から離れられないってね」
言いながら愛花は周りを見渡す。
「この部屋が全ての始まりだったね」と言いながらだ。
俺は「そうだな。...部屋の片づけだったな」と言いながら愛花を見る。
愛花は頷いた。
それから「それから何か片づけがお上手になったね」と褒めてくる。
「...それは褒めているのか貶しているのか」
「どっちだと思う?アハハ」
「...いや。お前と一緒だから褒められているとしか思えない」
「そっか」
そして愛花は部屋の中でくるくる回る。
「この部屋から始まり。私は...春樹という人に出会った」と言ってくる。
それから俺の胸に手を添える。
そうしてから「死ぬまで一緒だよ」と笑顔になった。
「...有難う。愛花」
「うん。...で、ちょっと話が変わるけど。...シウはどうしたの?」
「危険が一応去ったという事で帰った。...でも何か危険があったらまた来るそうだ」
「アハハ。そうなんだね」
愛花は椅子に腰掛ける。
それから天井を見上げる。
すうっと息を吸い込んでから「色々あったね」と向いてくる。
俺は「そうだな」と言いながら椅子に腰掛ける。
そして愛花を見てみる。
「...愛花は将来なりたいものとかあるのか」
「なりたいもの?」
「ああ。将来の夢ってやつだな。前話したっけ?」
「...よく覚えてない。...だけど...私の夢は決まったかな」
「...決まったのか」
「私は看護師さんになりたいな」
言いながら笑みを浮かべる愛花。
それからそんな柔和な感じのまま「お医者さんというよりかは看護師さんになりたい。私...色々な人のお世話をしてみたい」と言う。
そして俺に向いてきた。
「春樹は?」という感じでだ。
「将来の夢は全く何も考えてない。...だけどお前がそう言うなら俺も福祉関係を学びたいな」
「...春樹...」
「学んでいて絶対に後悔はしないだろうしな」
「...そっか」
俺も宣言したかどうか忘れたがどっちにせよ今はそう思える。
何故なら...彼女が。
愛しい彼女がその分野に進むからだ。
俺は苦笑しながら愛花を見る。
愛花は赤くなりながら「お茶が飲みたいな」と言葉を発した。
「ああ。悪い。粗茶すらも出してないな」
「い、いや。今飲みたくなったから」
「...そうか?」
「うん」
そう答えながら愛花は麦茶を飲む。
それから一息ついた。
そんな愛おしい姿を見つつ俺も麦茶を飲む。
すると愛花は「...ゴメン。本当は恥ずかしくなって無理にお茶を飲まざるをえなかったんだ」と言ってくる。
「...とても...嬉しかった」
「...愛花...」
「同じ夢だから頑張れそうだよ」
「ひょっとしたら大学に行く時も一緒かもな」
「...そうだね。大学に行くなら一緒に行ける大学が良いよね」
「そうだな。俺的にはな」
そんな会話をしながら夢見る愛花を見る。
俺はその顔を見ながら顔を横に向けていると愛花は「...福祉で思い出したけど何も知らなかった」と言ってから俺を見てくる。
その顔で親の事だって一発で分かった。
「新台出たら打つタイプだったからな。幼い俺を置き去りにしてな」
「信じられない」
「...その埋め合わせをお前がしてくれた。仲間達がしてくれた。俺は返せない恩義を仲間達から貰ったんだ」
「親御さんの事。これからどうするの?」
「...縋って来てももう救いようがないと思う。俺は...もう会えるとも思わないし会いたくない。だからまあ2人で幸せになろう。愛花」
「私も親が狂っているから」と言いながら愛花は自嘲する。
俺は「だが借金をしている訳じゃ無い」と言う。
「破滅した訳でも無いしな」とも。
それから俺は愛花を見つめる。
「愛花。きっと親父さんは変わると思う」
「...そうかな。だったら良いな」
「...俺達が幸せになったら親父さんも認めるよ」
「...うん」
そして愛花の頭を撫でる。
それからよしよしをしながら笑顔になる俺。
だけど愛花はずっと不安げな顔で涙を浮かべていた。
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