乗り越える痛み
第43話 境界線を越える時
☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆
私を助けに白馬の王子様がこんな場所まで来てくれた。
ただそれが嬉しく。
同時に...悲しくなった。
私はもう帰れない。
そう考えながらであるが。
何故なら私はみんなを不幸にしている。
それを考えると素直には喜べないからだ。
私はもう帰るべきでは無い。
全て私が呪っているのだから。
「愛花。帰ろうぜ。この場所にお前は居るべきじゃない」
「有難う。春樹くん。だけど私は帰らない。私、この場所が私の場所って認知した」
「...愛花?」
「お姉ちゃん。...春樹くんをお願いします」
「何を冗談を。良い加減に...」
すると奥の方から厳しい声がしてきた。
「何が冗談なものか」という感じでであるが。
俺はその声に奥の廊下を見る。
そこに愛花の父親が居た。
俺達を見ながら厳しい目をする。
「君は無茶苦茶だな。春樹くん。一切帰りたくないと言っている娘に対して」
「それは全て貴方のせいでしょう。信幸さん」
「私は何もしていないな。勘違いも甚だしいものだ」
「俺としては勘違いではないと思います。確かに俺の親の影響もあるとは思います。だけど俺の親だけではない。貴方も今回は悪いと思います」
そう言いながら俺はスーツを着ているその男を見据える。
スーツ姿の信幸さんは俺と俺が連れて来た人達を鋭い眼差しで見ていた。
「結局だが娘の意見を反映した方が良い。愛花。帰りたいかね?」
「いや。...帰りたくないです」
「この通りだ春樹くん。君達がごり押しなのが分かるかね?」
俺は信幸さんを見る。
信幸さんは俺を見てから嘲笑うかの様な表情を浮かべる。
本当にこの人という人は。
思いながら信幸さんを見る。
「おじさん。それは愛花さんの本心?愛花さんの上辺だけだよね?」
「...上辺?」
「貴方は娘の心を蔑ろにしている。貴方は...それでも父親か」
「...私が悪い様な言い方はやめたまえ。全ては春樹くんのせいだぞ」
「貴方はそう言いながら逃げている。全てから。アンタは....分かってないかもしれないがアンタ自身が独占欲が強いだけだ」
「...」
「娘を解放しろ。今ならやり直せる筈だ」
俺は斗真を見る。
真剣な顔をして必死に説得する斗真を。
それから俺は信幸さんを見る。
信幸さんは「私のやり方は間違ってない」と言ってきた。
そして俺達を見る。
「私が間違っている事は何一つない」
「そうやって上辺だけで逃げるのは止めましょう。おじさま。私も...いや。私だからこそ言いたい。間違いは正すべきだと」
そう言いながら信幸さんを見るシウ。
俺は信幸さんを見つめる。
それから信幸さんは踵を返した。
そして俺達を見てから「帰りたまえ。何にせよ愛花は帰らない」と話してくる。
すると彼方さんが「お父さん!」と声を荒げた。
それから愛花を連れて行こうとする信幸さん。
俺は考えながら「愛花。判断を間違えるな」と言葉を発する。
愛花はその言葉に「うん」と話した。
そして愛花は走って俺達の側に立つ。
それから自らの父を見た。
信幸さんは「どうやってもお前はそっちに行くのか」と怒る様な顔を浮かべる。
だが決して愛花は恐れず戻ったりしなかった。
その姿に信幸さんは眉を顰める。
「勝手にするといい。だが今後は一切の支援は行わない。それに家族とみなさない」
「それでもいい。私は...それでも春樹く...じゃなくて春樹を愛してます」
「...」
信幸さんは盛大に溜息を吐く。
それから愛花を見る。
そしてキッと睨む。
「分かった」
一言だけそう言った。
それから愛花はその言葉に頭を下げる。
「お世話になりました」と話した。
そのまま踵を返す。
愛花は廊下を踏み締めて歩き出した。
そして俺達も信幸さんに頭を下げてからそのまま歩き出す。
取り敢えずという形だが。
愛花を奪還した。
ただ...家族との訣別となってしまうだろう。
思いながら俺達は家を出てからビルを見る。
正直だがゴミ屑の親が気にはなる。
だけどもうこうなった以上はどうしようも無いだろう。
考えながら俺達は車に乗ってから帰宅する事にした。
安全面の保証とかもどうか分からないがとにかく...今は奪還できて良かったと思う。
そう考えながら俺は車に乗り込む。
斗真のお兄さんがかなりビックリしていた。
まあそれはそうだろうな。
奪還出来るとは思わなかったから。
それから俺達は複雑な思いの中、帰宅する。
マリンさんとか斗真に挨拶をしてから別れた。
そして帰宅をした。
何とか帰って来れたな。
そう考えながら俺はマンションに足を踏み込む。
その時に愛花に引き留められた。
彼方さんとは「先に上がってる」と言いながら別れた。
それから俺は愛花に向く。
愛花は俺を見ながら柔和な顔をした。
「今日は有難う。春樹」
「...結局、殆ど何も出来なかった。...お前の親父さんが渋ったけど諦めてくれて助かった」
「...ねえ。春樹」
「何だ?」
「いつのまにか呼び方が春樹になったけど良いかな」
「良いんじゃないか。呼び方なんて人それぞれだ」
そう言いながら俺は愛花を見つめる。
すると愛花は恥じらいながら赤くなりつつ俺を見てくる。
俺は「?」を浮かべる。
愛花は顔を上げた。
「呼び名変わったからキスしてほしい」
「...お前な」
「えへへ」
それから俺は愛花に上からキスした。
腰に手を回してからだ。
それから愛花と見つめ合う。
そして笑みを浮かべ合う。
壊れない様にしたいものだな。
そう考えながらだ。
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