第42話 横田春樹(よこたはるき)

俺達がマンションの地下駐車場に入った時。

制止を食らったので車を近所のコインパーキングに停める事にした。

それから俺は「車で待つから」という坂本の兄を残してから坂本とシウ。

そしてマリンさんと彼方さんと一緒にビルを見上げていた。


「...ここが実家なんですか?彼方さん」

「まあ正直、帰って来たのは相当久々だから...どうなっているかだね」

「...」


そう言われながら俺はビルを見上げてみる。

ビルは12階建てだった。

俺はその事を納得しながらインターフォンを押す。

するとインターフォンで『君か』と言われた。


「...そうですね。俺ですけど」

『そうかね。もう帰ったらどうかね』

「そうはいかないよ。お父さん。こんなやり方をしたら強引って思わない?何がしたいの?」

『ふむ。私もこうなるとは思ってなかった部分もあってね。流石に』

「待って。こうなるとは思わなかったってのは?」

『春樹くん』

「...?」

『君のご両親は役に立つね。本当に』


俺はそれだけで青ざめる。

そして「待って下さい。それは」と言う。

すると愛花の父親は話を続けた。

『君の親御さんは頭がきれる』と言ってくる。

は?


『私は君のご両親には感謝している』

「...待って下さい。どういう意味ですか」

『...君は何も知らない様だが見事に私の手足になってくれているよ。君のご両親はね』

「...!!!!?」

『大体のシナリオは君の父親が考えたものでね。まあ予想外もあったけど』


考えながら俺は坂本を見る。

そして彼方さん、シウを見る。

俺はそのままインターフォンに向く。

それから俺は「...どうなっているんですか」と答える。


『君には何も情報が伝わってない様だ。君も大変だな』

「...」

『君の人生の話になるんだが...君は色々な依存症の両親を持っている様だね』

「...そうですね」

『そのギャンブルの借金まみれの人達は誰が救ったと思う?』

「...」


『路頭に迷っていた所を2人纏めて救ってね。須崎シノンの事件も全部まとめて動かしてもらった』と言う。

は?須崎シノンはアイツに。

伊藤が交通事故に遭ってどうのこうのじゃなかったか?

すると『君の想像している考えでは君を襲うには軽すぎるのではないか?須崎シノンに最後にあれこれ吹き込んだのは君の親御さんだ。伊藤信孝もあるかもだが半分は違う』と言ってくる。


「...は...?」

「待って下さい。おじさま。どうなって』

『須崎シノンは伊藤信孝のせいで狂ったにしては少しだけ軽く、何かおかしいと思わなかったかね』

「...」

『春樹くんのお父さんは凄まじく頭がきれるね。人の洗脳が上手だ。まあスロット中毒を置けばその腕は超一流だろう』


『全ては家族を守る為だよ』と言ってくる。

そんな馬鹿な。

俺は思いつつ身震いをする。

坂本が「常套手段だな」と呟いてから「おじさん。いい加減にしてくれ。...貴方は...」と言う。


『坂本くん。君もいい加減に今の状況から抜け出したまえ。大変な事になるぞ』

「...」

「お父さん。もう止めてこんなの」

すると『春樹くんは存在するだけで害を生み出しているのもある』と言う。

何か...俺の親がそんな事に?

そんな馬鹿な。


「...お前の人生が悲惨だと思ったけどまさかこれ程とはな」

「...」

「...」

「お父さん。それはともかくとして先に愛花に会わせて」

『春樹くんが危ないからな』


俺はビクッとなる。

それから耳を塞いだ。

俺のせいで須崎も伊藤も...?

まさか伊藤紅葉も?

そんな馬鹿な事が...!?


「俺はそうは思わない」


そう坂本が言う。

それから俺は顔を上げる。

真剣な顔の坂本が「確かに...春樹の親も春樹も色々と仕組まれたかもしれない。だけど春樹は何も悪くない。何もしてない」と話す。

そして「アンタの全ての幻想だ」と言う。


『まあ幻想でも幻想でなくてもどっちでも良い。だが結論から言って私は全てを危険に晒す様な真似はしない』


愛花の父親はそう言いながら音声案内を終了させた。

それから俺達は困惑する。

困ったな...と。

そう思いながらだ。


「...まさかこんな事になっているとは思わなかったね」

「...ギャンブル依存症だ。...以前、会社の金を横領した。闇金から借金した。...罪人だから愛花の父親に上手く利用されていたんだろうな」

「そうか。...そうなるとどうするかだな」

「...俺が全て悪かったんだな。親も含め」


俺はみんなの顔が見れなかった。

正直、須崎シノン、伊藤、伊藤紅葉。

みんな被害者だったけど。

全て俺の親のせいだったんだな。


思いながら居ると頭にデコピンが飛んできた。

それは坂本だった。

坂本、シウ、彼方さん、マリンさんが俺を見る。

「まあこうなっちまったもんはしゃーないからな」と坂本は肩を竦める。


「それに私の姉は悪い事ばかり当時からしていました。...いいお灸をすえる結果になったと思います」

「家族を守るっていうのは口車だね」

「...そうですね。彼方さん」


そんなみんなに俺は「...だが俺は」と呟く。

それからみんなを見る。

「俺は責任を」と言うがみんなは「今はそんな事を話している場合でも無いよ」と笑みを浮かべる。


「取り敢えず春樹くん。今は未来を構築しよう」

「そうだな。美海」

「...だね」

「...」


良い奴らに恵まれたな俺も。

そう考えながら俺達は実家のドアを彼方さんが持っていたスペアキーで開けてもらい中に入った。

それから豪華な装飾の施されたフロアブチ抜きのマンション内を歩く。

そして...。

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