第36話 弱者

☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆


放課後になった。

俺は掃除をし始める。

今日は掃除当番は俺だ。

だから俺が掃除しているのだ。

すると坂本がやって来た。


「手伝うよ」

「...ああ。すまんな。坂本」

「気にすんな」


それから俺は無言で掃除を始める。

雑巾がけやごみをかき集めたり捨てに行ったり色々な中で俺は聞いた。

「坂本。お前は...これからどう動くんだ」と。

すると2人しか居ない教室で坂本の手が止まる。

そして俺を見てくる。


「どうあったら良いんだ」

「お前は敵じゃないよな。本当に」

「俺は坂本だ。だから敵とかじゃない」

「無理があるぞ説得力に。冗談は良い。どうなんだ」

「正直俺のやっている事は自分自身でも正しいか分からん。だが...正直に言うと俺はお前達の敵にはなりたくないからな」

「...そうか」

「お前は佐藤愛花とイチャイチャして居れば良い。それだけだ」


そう言いながら坂本はゴミを片付ける。

俺はその姿を見ながら居ると教室のドアが開いた。

それから愛花がやって来る。

坂本を見てからビクッとなる愛花。


「...やあ。愛花ちゃん」

「...坂本くん...」

「それじゃあまあ俺は帰るぞ。後は2人きりでな」


言いながら坂本は笑い声を出して塵取りと箒を片してから手を振って去って行く。

俺はビックリしながらその姿を見送りつつ愛花を見る。

愛花は無言で俺を見ていた。

俺はそんな姿に肩を竦めながら笑みを浮かべる。


「大丈夫だ。アイツの情報は何らつかめないけどな」

「うん。それならそれでも良いけど...」

「...一緒に帰ろうか」

「そうだね。春樹くん」


それから俺達は帰宅の準備をして教室の状態を確認してから歩き出す。

すると途中で愛花が俺に聞いてきた。

「私の事...どう思ってる?」と。

俺はその言葉に愛花を見る。

愛花は廊下の先を見たままだ。


「...悪い方に思わない。俺はお前は...愛しているとしか言いようがない」

「私は死神だね」

「...どうしてそう思う」

「私が全ての不幸を呼び寄せていたらしいから」

「お前は不幸な存在じゃない」


そう言いながら俺は愛花を見る。

愛花は足を止めた。

そして俺を涙を浮かべて見てくる。

「私が春樹くんを不幸にしたようなものだから」と震える声で言いながらだ。

俺はつい愛花を抱き締めた。


「乗り越えようぜ。この痛み。大丈夫だ」

「...そうかな。...乗り越えられるかな」

「俺は乗り越えられるって思ってる。...お前と一緒だからな」

「...ありがとう。春樹くん。私、貴方に出会って良かった」


愛花は言いながら涙を拭く。

そうしてから俺達は笑み合ってから家に帰宅する為に校門を出た。

それから歩いていると声がした。


そこにはセーラー服を着た少女が...黒髪ロングの美少女。

初めて見たが...何か顔なじみの様な感覚がした。

まさか。


「あの。道をお聞きしたいのですが」

「...あ。そ、そうなんですね。何処に行きたいんですか?」

「この街の駅ですね。そこに行きたいのですが」


マジに佐藤一族の関係者かと思った。

そんなに世の中疑っては...いけないな。

そう思いながら俺は横に居る愛花を見る。

愛花は真剣に何か考えていた。


「...愛花?どうした」

「...いや...」

「...?」


愛花はそう言いながらも目の前の少女を見据えていた。

そしてやがてハッとする。

「貴方...まさか」と言いながらだ。

それから愛花は少女を見る。


「アハハ。バレましたかね」

「...貴方は光圀数(みつくにすう)だね。...5年ぐらい会ってなかったから当初は誰か分からなかったけど」

「待て。愛花。誰だ」

「光圀家のお嬢様。簡単にいえば...母方の弟の娘かな」

「...じゃあまさか」

「成程。父も大概な事をするね」


「そだね。久々だね。お姉ちゃん」と言いながら光圀は愛花を見る。

それから「何だか嗅ぎまわっているのが疎ましいからやって来たの」という感じでとっておきな感じの笑顔になる光圀。

俺は真剣な顔をして聞いた。


「つまりお前は佐藤一族の使いの者だな」

「おじさまを信頼しているからそれを妨害するのは許せないから。私が立候補したんです。誰が行くかって話になった時に」

「...」


そう思っていると「そうか。そりゃ結構だ」と声がした。

その声に背後を見るとそこに坂本が居た。

何だコイツ!?先に帰ったんじゃ!?

そう思いながら居ると坂本が鞄を下ろして「お前のおじさまって奴は気が狂っていると思うんだよな」と言う。


「...何でこの場所に坂本家のご長男が?」

「何でってそりゃ俺はそこの学校の生徒だからな」

「...そうですか。貴方も大概らしいですね。噂には聞いていますが」

「...俺は気が狂っているんじゃないな。お前と一緒にするなよ」

「私も普通ですよ?」

「いやいやお前は普通じゃないよ。...調べた限りでは猫を殺して遊んでいるそうじゃないか。...そういうサイコパスが何でこの場所に?」


俺達の前に立つ坂本。

光圀はその言葉に微笑みを浮かべた。

「解剖学を学んでいるだけです」と言いながらだ。

マジかコイツは。


「成程ね。うむ。というかお前はおじさんとやらから棄てられたんじゃないの?お前ヤバそうだしね」

「...?」

「お前の様なヤバい奴は少年院でも入ったらどうなんだって感じじゃ無いのかな?」

「...言いますね貴方も。貴方も大概な事をしていると思いますけど?」

「俺もヤバい事はしているけど命をはく奪したりしないから」


そう言いながら坂本は「ここは任せてくれ。取り合えずこういうヤバイ奴は俺が適任だから」と言う。

しかし...。

その感じに「警察も呼んだしな。もう直ぐ来るだろ」と坂本は言う。

すると光圀の顔から笑みが消えた。

それから何かを取り出す。


「...それで命を奪っているのか。...光圀さん」

「小型ナイフです。大体はこれは持ち歩きやすいんです」

「...」

「殺したりはしませんが痛めつけるには十分かと」

「...全く。サイコパスは怖いねぇ」


そんな会話をしながら「丁度良いです。入院して下さい。貴方も邪魔なんですよ」と光圀は話す。

俺達は汗を流しながら光圀を見る。

するとそんな光圀の後ろから拳が飛んできた。


「が!?」


そしてそのまま光圀の顔面にクリーンヒットしてからねじ伏せられる。

そのままナイフも吹っ飛んだ。

見ると...シウが居た。

俺達を見ている。


「シウ...」

「...コイツは警察に突き出すべきです。...前からとち狂った野郎でしたので」

「...何でこの場所に居るんだ?シウ」

「お兄ちゃんと話がしたいと思ってね。...そしたら遭遇した」


それから光圀はやって来た警察にこの街での動物殺傷の件で捕まった。

俺達も警察署で話を聞かれ遅くに帰る羽目になってしまった。

でも何というかこれで...警察も役に立つ、とそう思える気がした。

いざとなったら頼るか、とも。

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