第30話 真逆
☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆
最悪の結論というか知りたくなかった。
マリンさん...彼女は私にとっては敵でも味方でも...いや。
敵の存在だった。
ただ私は悲しかった。
裏切られた感じになったのがだ。
私にとって初めての仲の良い友人になりそうだったのに。
「坂本。帰るか」
「...すまない。俺は少しだけまだ水族館に居たい」
「...先に帰っても良いのか」
「おう。帰ってくれ。俺はちょっとしんみりする。っていうか1人にしてくれ」
「...分かった」
春樹くんは黄昏る坂本くんを見る。
私達は顔を見合わせてからそのまま坂本くんに挨拶をして帰る事にした。
正直...水族館を楽しむ余裕が生まれない。
だから帰る事にした。
「...あの子は知っているのか。マリンさんは」
「...知らなかった。少なくとも今日の今日まで」
「じゃあ初めましてだな」
「そうだね。もはやどういう繋がりが有るかも知らない。親に」
「...そうか」
そんな感じで私達は歩き出す。
それから水族館を後にする為に出口に来た。
そして表に出る。
日差しが眩しいが...今は気分が上がらないな。
明るいのに。
「...せっかくだからどっか寄ってから帰らないか」
「どこに寄るの?」
「スマホケースを買いに行かないか」
「...え?それは...」
「愛花とお揃いを持ちたい」
「...そ、そう?アハハ。分かった」
それから私達は歩いてから近くのショッピングセンターに来た。
そして店内を見て回っていると目の前から歩いて来た少女にビクッとされる。
私はその顔を見る。
結構な美少女だが...どこかで見た事のある様なモデルの様な女子。
この女の子どこかで。
幼いけど...。
「須崎シノンの妹か何かか。顔が似ている」
「...そうです。もしかして貴方がたは...春樹さんと愛花さんですか」
「須崎シノンの妹さん...」
「...あれは姉じゃないです」
不愉快そうに目を細める少女。
須崎が持っていたアイスが溶けて落ちた。
それをチラ見して私達を見てくる。
私は咄嗟に身構えた。
「...あまり警戒しなくて良いです。私は同級生の先輩の元で今は一応、親元から離れているので」
「...そうか」
「何故離れているの?」
「端的に言えばお金儲けの為のやり方が汚いですからね。...私は最近「あ。無理だな」って思って離れました」
「須崎シノンとは真逆みたいだな」
「真逆です。...こう見えても私は...そうですね。まともです。その中で今回、須崎シノンが捕まったお陰で全てが狂い始めたのでありがたいですね」
そう言いながら側面を見る須崎の妹。
私は「貴方の名前は何」と聞いてみると「私の名前は須崎シウです」と答えた。
その言葉に溜息を吐く春樹くん。
「偶然だな。この場で会うなんて」
「...そうですね」
「姉の件でお世話になったが」
「私にとってお姉ちゃんも家族も1人です」
「...?」
「美海さん以外は姉じゃないです」
春樹くんも私も驚愕する。
それから「美海さんを知っているの?」と聞いた。
すると彼女は手をティッシュで拭きながら「知っています。私の家族です。親戚です」と答えた。
そして最後に更にとんでもない事を言った。
「私は美海さんと暮らしています」
「...!」
「...私にとって大切な人ですから」
「...そうなんだな」
「はい。しかし姉擬きがお世話になりましたね。今回」
「...散々な。結構迷惑だった」
「それは家族だった者として一応謝ります」
そう言いながら頭を下げるシウ。
私はその姿を見つつ「須崎シノンはこの後どうなるか知っているの」と聞いてみる。
するとシウは「知らないですよ。あんな奴とか」と言いながら肩を竦めた。
「私にとっては美海さんだけが家族ですから」
「...」
「...私を助けてくれた唯一の人なので」
「...そうか」
そう会話しながら私はシウを見る。
するとシウは「じゃあ行きますね」とどこかに行こうとした。
その姿に声を掛けようとした前に春樹くんが声を掛けた。
「お前に頼みがある」という感じで。
「...何でしょうか」
「須崎シノンが死なない様にしてくれ。仮にもアイツは俺の彼女だったしな。それ以外はどうでも良いが」
「冗談でしょう。貴方を殺そうとしたんですよ?須崎シノンは」
「...だが制裁は既に受けたと思うしな」
「...?」
「最低限の保証をしてくれって話だ。殺されたり死ぬのは何だか許せないしな」と春樹くんは話しながらシウの目を見る。
それから吸い込まれそうな瞳に「頼む」と念を押した。
シウは考える仕草をしてから「分かりましたけど。私はゴミ屑一家と繋がって無いので代わりに美海さんに任せても良いですか」と切り出す。
私は「!」となる。
「...それでも良い」
「そうですか。まあどうせアイツらは話を聞かないと思いますが一先ず考慮はしてみます。だけどお姉ちゃんの事は捕まったのでどうせ一族からこの様でも見捨てられるのがあれだと思いますけどね」
「...それならそれでも良い。ただアイツが死なない様にしてくれたらな」
「...そうですか。なら分かりました」
そう言いながらシウは「では」と頭を律儀に90度下げて去って行った。
私は横に居る真剣な顔の春樹くんを見上げる。
しかしこれで良いのだろうか。
須崎シノン...彼女の事は。
「...須崎は制裁を受けまくっているからこれぐらい良いだろ」
「でもあくまで春樹くんを殺そうとしたよ。そして私達の仲をぶっ潰そうとした」
「...そうだな。確かにな。...でも何だか違う。それとこれとは」
「...」
「...何か納得がいかないしな」
「...春樹くんが言うなら良いけど」
私はそうしぶしぶ納得しながら春樹くんを見るのを止める。
それから踵を返してから「じゃあ行こうか。携帯ショップに」と言い出す春樹くんが手を握ってくる。
私はそれを握り返しながら「そうだね」と取り繕いながらも笑顔を浮かべた。
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