第29話 佐藤一族の2人目の親戚

☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆


渋谷美海(しぶやまりん)さんという人と一緒に水族館を巡る事になった。

そして坂本と愛花と一緒にだ。

(まるで親友同士で遊びに行くみたいだな)と思いながら俺は笑みを浮かべながらマリンさんを見る。

するとマリンさんは俺を見ながら複雑な顔を一瞬だけ浮かべた気がした。

うん?


「こっちから行くか」

「そうだね」

「そうですね」


それから俺達は水族館内に移動を開始する。

何というか改築されており魅力的なものばっかりだ。

クラゲとか魚とか...そして色々なものがある。

ジンベエザメも居た。


「...綺麗...」

「あは。美ら海みたいやね!」

「そうだな」


すると坂本が「お前らみたいだな」と言い出した。

俺と愛花は「?」を浮かべて坂本を見る。

坂本はニコッとしながら指差す。


「この水槽の綺麗さの様だ。お前らの恋がな」

「何だお前。気持ち悪いな」

「おう。俺は何時だってキモいぞ」


開き直るなよ。

俺はそう思いながら顔を引き攣らせていると坂本が「だってそう思えたしな。素直に」と言う。

そんな坂本に俺と愛花はニヤッとしながら「そういえばあっちで愛花が見たいものがあったな」と俺が言い出す。

そしてダッシュでその場から離れた。


「おい!?」


坂本の制止の声も聞かず俺達はその場から離れた。

そして暫く行った所で陰に隠れた。

さてさてどうなるかだな。

俺達は隠れながら見つめる。


「ったく。何だってんだ?」

「...さ、さあ」

「お前何か知っているか?」

「知らない。...ね、ねえさかもっちゃん」

「...あ?どうした?」

「い、イルカショー観に行かない?」


まさに良い感じのバカップルになりつつある。

俺達は頷きながら後を追う。

それからイルカショーから離れた場所で2人を観察する。

そしてイルカショーを坂本とマリンさんが観始めた。


「まったく。どこに行ったんだか?」

「...い、良いじゃん。なんくるないさ。今は楽しもう」

「...?...お前どうしたんだ?」

「どうしたって?いや?どうしてもないよ?」

「???」


坂本が悩んでいる。

俺達は顔を見合わせながらその様子を微笑ましく見守る。

それから10分ぐらいショーは続いた。

そして立ち上がるマリンさん。


「...さかもっちゃん」

「ああ。どうしたんだ?」

「私ね。...その」

「...ああ」

「これでさかもっちゃんとバイバイしたいなって思うんだ。関係性を今は止めようって」

「...は?」


俺達もその言葉に「「は?!」」という感じになる。

それから見ていると立ち上がったマリンさんがこっちにやって来た。

そして俺達に既に気が付いていたかの様に当たり前の様にやって来る。

俺達は「気付いていたのか?それにしても何故?」と聞いてしまった。

すると予想外の答えが...。


「私は...実は叔父様とお父様。...佐藤國彦(さとうくにひこ)などに言われて来たんだ」

「...は?佐藤國彦?どういう奴だ?」

「...」


その時。

猛烈な冷たい視線を感じた。

何が起こったか分からないような鋭い冷たさの視線だった。

それは...愛花から発せられていたものだった...。

待て...何が起こっている!?


「佐藤國彦が何で出て来る訳ですか?」

「...愛花。知っているのか?」

「...私、貴方とならお友達になれるかもって思っていた」

「...そうだね。それは私もさー」

「...だけどその話を聞いてそうはいかなくなった。何をしに来たんですか」


渋谷美海...どういう奴なんだ。

思いながら見ていると愛花が「マリンさん。貴方はもしかして私の父親。そいつに言われて来たスパイか何かですか」と悲しげに聞いた。

俺はゾッとした。

それからマリンさんを見る。


「...私はさかもっちゃんの幼馴染であり渋谷グループのご令嬢。佐藤一族と手を組むのを狙っている感じのね」

「...マリンさん。貴方は敵ですか。味方ですか?どっちですか」

「仲良くしてくれて有難う。そして...さかもっちゃんと思い出できた。有難う。私はあくまで敵に近いね。...連れ戻せってお達しだから。裏切ってゴメンだけど」

「...それは嫌って言ったらどうなるんですか。無理であっても帰りませんよ絶対に」

「...今日、貴方に接触してみて思ったのが連れ戻したくないなって感じだよ」


その言葉に俺は驚きながらマリンさんを見る。

マリンさんは驚いている愛花と俺をを見ながら「今じゃ無いと思うんだよね」と言ってきた。

それから悲しげな笑みを浮かべた。

そして「さかもっちゃんに言っておいて。有難うって」と言いながら手を振った。


「...帰るね」


そう呟いてそのままマリンさんは帰って行った。

俺達は止める事が出来ずそのまま坂本を見る。

坂本は頭を抱えながら「???」を浮かべていた。

俺達は掛ける言葉が見つからずそのまま戸惑っていた。

だけどこのままじゃな。


「...坂本」

「...おう。...気付いていたのか」

「...ああ。大丈夫か」

「...何でマリンはあんな事を言ったんだか。結構ショックだ」

「...マリンさんの状況を知っているのか」

「状況?アイツの周りの事はあまり聞いたことが無いな。それが...?」


まさかの言葉に俺達は顔を見合わせて困惑する。

これを言うべきかどうなのか。

そう思いながら。

彼女が...俺達にとって脅威であり...そしてスパイでは無いかという事を。

正直言えない。

コイツがマリンさんをどう思っているか分からないし。

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