第19話 佐藤彼方(さとうかなた)

☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆


俺は...恋人の部屋に早速行く事になった。

あまりの突然の事に俺はめちゃくちゃに動揺していた。

一度、部屋に入っているが。

あの時と状況が違いすぎるのだ。

だから当然だが。


「...」

「...」


こうなるのは目に見えていたのに。

俺は赤面しながら座布団に腰掛けていた。

それから目の前では愛花が赤面で座っていた。

モジモジしながらチラチラ俺を見てくる。


「わ、私、お茶淹れるね」

「だ、だな。うん。分かった。お願いするよ」

「な、何が飲みたいかな」

「コーヒーあるかな。愛花」

「コーヒー...分かった。淹れるね」


コーヒーを淹れに行く愛花。

俺はその姿を見ながらモジモジする。

落ち着かない。


そう考えながら俺は周りを見渡す。

それから彼女の部屋を確認する。

そこにはこんなのがあった。

ぬいぐるみと勉強道具。

それから化粧のセットらしきもの。


「...ふむ」


俺はそんな事を呟きながら周りを見渡してから愛花を再度見る。

すると愛花は鼻歌交じりにコーヒーを淹れていた。

俺と目が合うと赤面してからそのまま作業に没頭する。

そんな感じだ。


「...居心地が...」


そんな事を呟きながら俺は(何かないか)という感じで目線を動かす。

それから俺は...写真立てを見る。

そこには姉との写真だろうか。

そういうのが飾られており家族写真は一切無かった。


「...家族の写真は要らないから」

「...愛花...」

「私にとって家族はお姉ちゃんだけだから。他は要らない」

「...そうか」

「春樹くんが羨ましい。あくまで家族とは仲が良いと思うから」

「...まあな。俺の場合は一次的な喧嘩だしな」

「...そっか。私は名前すらも呼ばれたことが無いから」


そう言いながら愛花は悲しげな目をした。

俺はその姿を見ながら勉強道具を取り出す。

それから「勉強すっか」と言った。

その言葉に愛花は「うん」と返事をしてくれた。

それから没頭する事1時間。



愛花と一緒に1時間勉強してからそのまま薄暗くなる室内を見る。

それから愛花は「御免なさい。電気点けるね」と言ってきた。

そして電気が灯った。

家の中が更にはっきり見えた気がした。

俺はその光景を見ながら伸びをする。


「いやー。にしても疲れたな」

「そうだね。ふふ」


そうして俺は愛花の笑顔を見る。

そして赤くなってしまう。

愛花は相変わらず可愛いものだ。


そう思いながら俺は首を振りながら「すまない。トイレを貸してくれるか」と言いながら愛花を見る。

すると愛花は頷いて案内する為か立ち上がる。

その際に足がしびれていたのかよろめいた。


「きゃ!?」

「危ないぞ!」


俺は愛花を抱える姿...ともいかなかった。

その場で俺は愛花を押し倒した。

それから愛花と間近で見つめ合う姿になる。

心臓が更に波打った。

そして真っ赤になってしまう。


「...」

「...」


愛花の首筋と鎖骨が見える。

俺は唾を飲み込む。

それから見つめ合っているといきなり愛花が首に手を伸ばしてきた。

そうしてから抱き合う形になる。

な、何を!?


「待って!?何をしているんだ!!!!?」

「...」

「待て。マジに!?」

「...き」

「き...?」


(キス、するのかな)と呟いた気がした。

それから愛花はそのまま俺から赤面してからそっぽを向いてゆっくり離れる。

俺はその姿を見ながら血圧が高くなった気がした。

頭が痛い。

そしてあまりに愛おしい。


「...可愛すぎるってかお前...」

「...」

「...」


何も言えなくなった。

それから沈黙が続いているとインターフォンが押された。

俺達は「!!!!?」とビックリしながら玄関の方を見た。

しかしナイスタイミングだ。

俺は考えながら胸に手を添えて玄関に向かった愛花を見る。


「はい」

『えっと...ここは佐藤愛花さんのお部屋でしょうか』

「はい。どちら様...」

『久しぶりだね。...愛花』

「...え...」


誰だ?

そんな感じで見ていると愛花は愕然としながら駆け出して行く。

それから玄関を開けるとそこに...(愛花を成長させたら今感じになるんだろうな)という感じの女子が居た。

ってかまさか。


「...おね...えちゃん?」

「...遅くなったね。愛花。...久々」

「...何年ぶり...」

「...うん。...愛花の事を気にしていたら居ても立っても居られなかった。だから来たの。...準備...逃げ出す準備に時間がかかった」


愛花は崩れ落ちた。

それから号泣し始める。

その姿に思いっきり抱き締める愛花の姉。

そして俺の姿に気が付いた様に見上げてくる。


「...もしかして例の...彼氏?」」

「...うん」

「...そうか。なら猶更...あの家には帰らない様にしないとね」

「...うん」


そして俺を見つめてくる美女。

俺はその姿を真剣な眼差しで見る。

すると美女は頭を律儀に下げた。

「初めまして。私は佐藤彼方(さとうかなた)と言います」と言いながらだ。

それから「噂は...聞いてます。...愛花に彼氏が出来たって事は」と俺を見てくる。


「...愛花。...良かったね」

「...お姉ちゃんに会いたかった」

「...そうだね。...私も...ゴメン」


俺は2人の姿を見て鞄を背負った。

「2人の邪魔をしちゃ悪いですね」と呟きながら俺は笑みを浮かべる。

それから去ろうとしたのだが。

彼方さんが俺に向いて来る。


「待って。...貴方にも参加してほしい」

「...?」

「...私は愛花と貴方を逃がしたいの。あの毒親から」

「!」


彼方さんはそう言いながら俺と愛花を見る。

それから複雑な顔をする。

そして20秒ぐらい経った後に「私はその為に全てを捨てて来たから」と話す。

俺達は驚きながらその姿を見合ってから見た。

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