第18話 手繋ぎ

☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆


私が誰かを、誰かが私を。

選択してくれるなんて思わなかった。

私は柔和な顔でその人を見る。

授業中にも関わらず輝いている。


「ふふ」


私は幸せだった。

みんなが私達を歓迎してくれる。

それからみんなが私達を見守ってくれて。

その中で春樹くんも私を大切にしてくれる。

だが。


私はあくまで反旗を翻してしまった。

だから私はまだ色々と考えなくてはならない。

私は思いながら目の前の黒板を見る。

因みにだが高校の費用とかは問題ではない。

一応、奨学金などが入るのでその点は問題はないのだが。


「だけど」


そう言いながら私は考えこむ。

果たしてどうするべきか。

この先...私はどう行動すべきかを考えなくてはならない。


さもなくばあの悪魔の様な親に飲み込まれる。

思いながら私は窓から外を見る。

それから時間が経ち授業が終わった。



私は春樹くんの元へ向かう。

それから春樹くんを見る。

春樹くんは私を驚きの眼差しで見る。

「どうした?」と聞いてきた。


「えと。一緒に帰りたい」

「な、は!?」

「今日、部活が無い、から」

「あ、ああ。成程。試験休みという訳か」

「う、うん」


春樹くんは赤くなる。

それから私を見てきた。

そして頬を掻きながら「分かった」と返事をしてくれた。


「有難う。春樹くん」

「気にしないでくれ。そろそろ一緒に帰るのも良いかなって思っていたしな」

「そうなんだ」

「ああ。な、なんせお前と付き合いはじめたしな」

「た、確かに。あはは」


私に恥ずかしい感じの笑みを浮かべる。

その姿に私はニコッとした。

それから立ち上がる春樹くん。

そして私は周りを見た。


残っている人は皆、私を見てガッツポーズをしている。

春樹くんを妬ましい感じでも見ておりそれなのに声援を送っている。

その姿に私は頷いて応えながら春樹くんに視線を戻す。


「全く。周りも大概だよな」

「あはは。まあ私は気にならないけどね」

「本当に良いクラスメイトに恵まれたな」

「そうだね」


そうしていると坂本くんが「デートか?この後は」と聞いてきた。

私達は赤面しながら首を振る。

すると坂本くんは「初心かな?」と苦笑い。

私達は見合ってから坂本くんに返事した。


「まあ初心ではあるな」

「だね」

「なんかそれも良いな。ははっ」


坂本くんは手をひらひらさせながらそのまま掃除用具を取り出した。

それから「まあ後は掃除当番に任せて帰りな」と言ってくる。

私達はその言葉に頭を下げた。


「後任せたわ。なら。坂本」

「ああ。任せてとっとと帰れや」


そう言いながら春樹くんは鞄を背負い直した。それから私を見てくる。

笑みを浮かべながら。


「帰るか」

「そうだね。春樹くん」


そして坂本くんに任せて帰る形になった。

それから歩いて帰る。

その中で春樹くんの手を見た。

ゴツゴツしている手を。

周りを見渡してから唾を飲み込む。


「ね、ねえ。春樹くん」

「どうした?」

「手を握っても良い?」

「は!?し、しかし学校内だぞ!お前!?」

「...今なら人が居ないから」

「...し、しかし...」

「駄目かな?」


私は何とか握りたいと思って一押しを加える。

すると春樹くんは戸惑いながらも諦めて手を伸ばしてきた。

その大きな手をだ。

私はその事にパアッと明るくなりながら早速と握る。

それから春樹くんの温もりを感じる。


するといきなり目の前から校長先生が歩いて来た。

私達は慌てて手を外す。

それから校長先生は「こんにちは」と言いながら笑顔で通り過ぎて行った。

私達を見てから何だか微笑ましい感じだったが...まさか。


春樹くんを見てみる。

赤くなってしまう。

春樹くんは苦笑いを浮かべていた。


「...はは。見られたかもな」

「...そ、そうかな。やっぱり」

「でも垂水校長先生だからな。まあ良いんじゃないか。あの人...いつも良い人だから」

「そうだね...でも恥ずかしいな。困った」

「...ははは。まあ良いんじゃないか?」


春樹くんはそう言いながら手を伸ばしてくる。

それから私の手を握った。

そして笑みを浮かべてくる。

今度は私をエスコートしてくれた。

私はその手を握り返しながらそのまま恥じらいながら歩く。


「...そういえば家の事。何か言われたのか」

「...家...あ。家庭事情...ううん。何も。...アイツらに名前を呼ばれる事も無いしね。所詮は私は捨て駒みたいな感じだから」

「...酷い家だな」

「ほんとにそんなものって思ってたよ。私。だけど...春樹くんと皆さんに出会ってから...世界が変わったって思う」

「...」

「今が...一番幸せだね」

「...そうか」


そんな言葉を発せるのも貴方のお陰だ。

私は胸の心臓をバクバクさせながらそのまま校門をくぐる。

それから帰宅している中で春樹くんが私に向いた。

そして「勉強教えてくれないか」と言ってくる。


「え?い、良いけど。...いきなりどうしたの?」

「...お前を幸せにしたい。だから...俺は勉強する」

「...へあ?」

「...俺はお前が好きだからな。将来お前が苦労しない様にしたい」

「...は、はるきくん!?」


恥ずかしい!

私は思いながら私は春樹くんを見る。

すると春樹くんは「お前が仕掛けたんだぞ。最初はな」と愚痴る。

そして苦笑した。


「まあそれはどうでも良いけど。...俺は真面目にお前の為に動きたい」

「...わ、分かりました...」

「じゃあいつも通り俺の部屋で教えてくれ」

「い、いや」

「え?」


どうせなら私の部屋に来てほしい。

私は胸に手を添える。

そして春樹くんを見つめる。

春樹くんは「ぇ」と赤面した。

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