第17話 絆
☆須崎シノン(すざきしのん)サイド☆
学校の中の噂でその事を知った。
結局...あの女子。
佐藤愛花は春樹の元に戻ったという。
面白みがない。
というよりも佐藤愛花は春樹と付き合うのか?
それはそれで遥かに面白みがない。
私がイライラしても仕方が無いが面白く無い。
思いながらトイレに向かっていると信孝がやって来た。
職員室に部活の事で呼ばれていたが。
「聞いたか。噂」
「...そうだね。...面白く無いね」
「散々俺達を不幸にさせた挙句この様だからな。腹立たしいったらありゃしないが。まあ仕方が無い」
「まあうん。取り敢えずは春樹達は地獄には落ちると思うけどね」
「そうだな。だけどお前が面白く無いんじゃないか。待っていたら」
「まあ正直そうだけど。...チャンスが巡るよ。絶対に」
私は信孝を見る。
昨日のセックスはとても気持ちが良かった。
その事を思い出す度に疼く。
そして私は信孝を見る。
「信孝...またいつかやろうね」
「...そうだな。お前とのセックスはとても気持ちが良い」
「...ふふ。信孝のえっち」
「そういうお前もな」
それから私達は笑い合う。
春樹よりも信孝とこうしているのがとても幸せだ。
そして私は考え込む。
春樹達がまた不幸になる様に祈りながらだ。
今は私達が手を出すレベルではない。
☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆
何というか愛花と恋人になった。
俺はまさかこうなるとは思わず考え込んでいた。
すると「よ」と声がした。
顔を上げるとそこに坂本が居た。
「...もしかして勉強しているのか」
「そうだな。周りに引けを取らない様にな」
「まあテストも有るしな。...中間テスト」
「学力テストもな。忙しい」
「...お前は生真面目だな」
「お前は真面目じゃないのか?」
そう聞くと坂本は肩を竦めてから「俺はそういうのよりどっちかといえば周りを取り仕切るのが上手いな」と言葉を発した。
ポケットに手を突っ込む。
それから周りを見た。
「でもまあ勉強しないと進級できないしな」
「...そうだな。...お前には世話になりっぱなしだ。だからこそ進級してくれ」
「確かにな。ってか俺は何もしてない」
「お前のお陰でクラスメイトと仲良くなったもんだ」
「ああその事か。ならジュースでも奢ってくれ。今度」
「...そんなもんで良いのか」
俺は苦笑いを浮かべながら居ると「春樹くん」と声がした。
顔を上げると愛花が俺に向いていた。
その事に俺は「どうした。愛花」と聞いてみる。
すると愛花は俺に赤くなって向いてきた。
「...その」
「...あ、ああ」
すると坂本が「これは失敬」と言いながらダッシュで去って行く。
俺はその姿に呆れながら愛花を見る。
愛花は唇を噛んでモジモジ。
「...どうしたんだ?は、早くしてくれ。恥ずかしい」
「えっと。あ、そ、そうだよね。...えっとね。...で」
「...で?」
「デートして下さい」
「...」
数秒考えてから唾を噴き出した。
ま!?
俺は真っ赤になりながら愛花を見る。
するとクラスメイト達が「何ぃ!!!!!」と声を発した。
「...クソッタレが...」
「何とも羨ましい...」
「クソが」
お前ら敵なのか味方なのかはっきりしてくれ。
考えながら俺は見渡してから愛花を見る。
大胆になり過ぎだ。
だけど...そんなの嫌じゃないし。
「...わ、分かった。じゃあ行くか」
「え、えへへ。ありがとう。春樹くん」
「...でも何で女子と話していてそうなるんだ?」
「い、いや。「一切デートして無いの!?」って愕然とされた」
「...あー。成程な」
伊藤さんを見る。
すると伊藤さんはグッジョブとしており。
鼻血を噴き出していた。
(真面目に変態だ)とそう思いながら愛花を見る。
すると愛花は俺の手を握った。
「な、何をしている!?」
「私、手を握るのが、好き」
「い、いや!?それは...」
「え、えへへ。春樹くん...」
「勘弁してくれ。赤くなってしまう」
(どうしたものか)と思いながら心臓をバクバクさせる。
とても繊細な指だ。
それもピアノでも弾いているんじゃないかってぐらい。
そういえば。
「...お前の部屋に入ったんだが...その時にピアノの写真があったな」
「...過去の話だよ。...春樹くん。今が大切」
「...そうか」
何か触れてほしくない痛みがある様だ。
愛花の顔が曇った。
俺はその事に何も言わずに話題を切り替える。
「じゃあ何処を巡る?」と言いながらだ。
すると愛花は伊藤さんを見る。
「そりゃ勿論だけど恋人の鐘を鳴らして」
「...あそこ?あれは...伊藤さん...は、恥ずかしい」
「良いじゃない?だってこのクラス公認の夫婦だし」
「へあ!?」
「ふあ...!?」
公認の夫婦!?
俺は「浅はかだ?!」と言いながら慌てる。
すると凍てつく視線を感じた。
男子も女子も「え?」という感じになっている。
(まさかこの先、愛花を捨てるなんて事が?)という感じだ。
「マジぶっ殺す」
「何が不満だ?」
「もしかして使い捨てカイロ的な?コラ」
何だコイツらマジに!
マジに敵か味方かどっちだ!
俺は愛花を見る。
愛花は茹でタコの様に真っ赤になって俯いていた。
その姿に「分かった」と返事をする。
「...行くか。愛花」
「ぁ、う、うん」
「...お前がデートしたいって言い出したんだぞ。...勘弁してくれ」
俺は額に手を添えてから首を振る。
だが...嫌気が全くない。
もうなる様になれ。
そんな感じでやけくそになっているのもあるけどだ。
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