第16話 恋人になった日

☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆


私は結局、親の呪縛からは逃れられない。

考えながら私は駅で列車を待つ。

私は実家に帰る事になった。

何故かといえばお見合いの為だ。

私をダシにして全てを成功させようという試みらしい。


最低な気分で外道だと思う。

だが姉がダシに使われる可能性もある。

それを考えると私は。

でも。


帰りたくない。


そう思いながら列車を待っているといきなり横から腕を掴まれた。

それから驚きながら見るとそこに春樹くんが居た。

息を切らしながら「見つけたぞ」と言う。

私は愕然としながら春樹くんを見る。

何故ここが。


「全員。クラス全員で手分けして探した。そしたら坂本がここにお前が居るのを見つけた。だから俺は追いかけて来たんだ」

「そんな。まさか...」

「40人近くで探せばまあ見つかるだろうって思った。だけどマジに見つかるとはな」

「...有難う。見つけてくれて。でももう帰るよ。私は」


私を強く抱きしめる春樹くん。

それから頭を撫でてくる。

人が大勢居たが知った事では無い感じでだ。

私を固く抱きしめた。

それから「この問題はお前と付き合えば解決するのか」と聞いてきた。


「え?い、いや。それじゃあ解決出来ない...けど。訳じゃないけど」

「訳じゃないけど?けどなんだ」

「私...は。好きな人と人生を歩みたい。決められてなんて嫌」

「分かった。なら付き合おう。俺達」


まさかの言葉に私は唖然とする。

それから春樹くんは私の頬を両端から掴む。

そして私に向いてくる。

笑みを浮かべた。


「愛花。俺はお前が大切なんだと思う。だから俺はお前を離したくない。なら今結論を出すよ」

「...!...で、でも私なんかと付き合ったら全部不幸になるかもしれない...し」

「だったらその不幸。半分背負うさ。お前の答えを聞かせてくれ」

「わた、しは...」


涙が溢れた。

それから乗るべき電車が来てから発車した。

私はその電車に構わず春樹くんを見る。

涙が溢れはじめる。


「帰りたくない。貴方のそばに居たい」

「よく出来ました。じゃあ帰るぞ。俺達の場所に!」


私は頷きながらその顔を見る。

それから笑顔を浮かべた。

何でみんなこんなに優しいのだ。

して何故。

こんな私を見捨てない。


「よ」

「坂本?」

「俺の目に狂いは無かったな」

「ああ。確かにな。お陰様で引き留められたけど駅員は?」

「ああ。金払うって言ってから抑えた。全く金払え金払えうるさいよな。な?お姫様」

「坂本くんまで...」


私は俯きながら迷惑をかけた事を反省する。

それからそうしていると抱きしめられた。

それも伊藤さんに、である。

私は驚きながら伊藤さんを見る。


「マジ良かった。取り返せた。佐藤さんを」

「い、伊藤さん。苦しい!」

「やれやれ。伊藤が言わなかったら危なかったな」

「それは確かにな。取り返せて良かった」


そう話しながら私は見合う。

それから駅から出ると仲間達が徐々に増えていた。

私達を見ながら「良かったわ」とか汗だくになっており笑みを浮かべながら話している。


その姿には本当に申し訳ない感じがした。

だがみんな「取り返すには必要な事だしなぁ。悪くは思わないでな」とか話す。

私は恵まれているんだな今は。

それに対して坂本くんがパンパンと手を叩いた。


「はいはい。んじゃみんな。急いで高校に戻るぞ。じゃないと教師共にぶっ殺される」

「いやいや。もう手遅れだろ坂本ー」

「まあ確かにな。だがまあ戻らないと心配するしなぁ。教師共がな」

「確かにな。クラス一同サボったしな」


そんな危険な真似までして私を探したのか。

ありえない。

だけど何だろう。

嬉しい気持ちが湧いてしまう。


「どうなるかだな。マジに停学か反省文か」

「流石に退学は無いよな?」

「無いだろ。クラス全員退学とか。あそこの奴ら根性無いって」


クラス全員は歩き出す。

それから高校に戻ると鬼神の様な先生が何人も待ち構えており。

私達に眉を動かしながら怒る。


坂本くんと春樹くんがみんなを庇い一生懸命に説明していた。

私も説明する。

そのお陰か一応クラス全員1日をかけての5枚の反省文程度で処罰は収まった。

まあラッキーだったと思いながら私は春樹くんを見上げる。


そんな春樹くんは私の視線に気が付いた様に頬を掻く。

それから苦笑いを浮かべた。

私はその姿を見ながら春樹くんに寄り添う。


そういえばあの悪魔の親に反発したのはこれが初めてだなって思う。

私は考えながらこの先の未来を見据えた。



教室に戻ると伊藤さん達が早速、成果を聞いてきた。

春樹くんと付き合う事になったのか、とか。

私はその事に赤くなりながら頷く。

そしてみんなを見る。

みんなハイタッチする。


「良かった!」

「確かに。めちゃくちゃ嬉しい」

「見守っていたしね」

「だね」


伊藤さんが前に出て来る。

それから「何か悩み事があったらクラスメイトに相談して。ね?佐藤さん」とニコッとする。

私は複雑な顔だった。

だけどその言葉に静かに頷きながら伊藤さんを、女子達を見た。


このクラスなら信用できる。

そう考えながら私は少しだけ安心感を持った。

後の事をどうするか考えなくてはならない。

だけど。

今は考えたくなかった。

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