第14話 溢れ出す想い
☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆
私はお料理の下ごしらえをする。
今日の一緒に食べるお料理は唐揚げだ。
お味噌汁に唐揚げにお浸しに...後はご飯にお野菜。
うん。
ニンニクを効かせて...とは言っても明日も学校だ。
だから臭かったりしたらマズいので...と思いながら私は料理を事細かくメモで確認していく。
レシピと言えるが。
「...」
それからレシピを見ながら少しだけ顔を上げる。
そこに居た彼と目が合う。
その事に私は首を振る。
赤くなってしまう。
「...」
私は腕まくりをしてからそのまま唐揚げを作るのに専念した。
油などを使うから危ない。
集中したいからだ。
それから私は菜箸の準備などをしてからお料理を作っていった。
☆
思えば私も本当に大胆だと思う。
何故かといえばて、手を繋いだりとか。
そ、それに春樹くんの頬に手を添えたりとか。
ありえなさすぎる。
昔の私なら考えられなかった行動だ。
そう思いながら私はテーブルに料理を並べようとした時。
春樹くんが私の手から料理を取ってから「こっちに並べるぞ」と言った。
私は「有難う」と言いながら赤くなる頬を抑えながら机にテーブルクロスを敷く。
そして春樹くんを見た。
春樹くんは顔を上げながら頷く。
それから椅子に腰掛けた。
そうしてから互いに「いただきます」と言ってから手を合わせる。
「...唐揚げも作れるとはな」
「う、うん。一応、作れるよ。ただ美味しいかどうかは...」
「美味しいさ。お前が作るものは全て美味しいから」
「春樹くん...」
「...いつも有難う。お前には助けられてばかりだ」
春樹くんはそう言いながら私を見る。
私はその優しげな顔に我慢が出来なくなった。
それから箸を静かに揃えて置く。
そしてゆっくり顔を上げて春樹くんを見る。
「春樹くん」
「ああ。うん?どうした?」
「私、私は」
「ああ」
「貴方がどうしても気になる。私は貴方が大好きです」
溢れ出す想いのまま。
私は真っ赤になりながら春樹くんにそう言った。
すると春樹くんは酷く驚愕しながら私を見た。
それから複雑な顔をする。
私はその顔に「だけど」と告げる。
「私は貴方と付き合うには色々な問題を超えないといけない」
そう言いながら私は春樹くんを見る。
春樹くんは「色々な問題?」と聞いてくる。
私は頷きながら春樹くんを見つめる。
それから膝の上で震えながら拳を作った。
「だから好きという想いだけ知っていて下さい。お願いします」
「愛花...」
「愛してます」
「...愛花。お前は何故俺を好きになったんだ」
私にそう聞いてくる春樹くん。
その言葉に私は春樹くんを見つめる。
それから赤くなって目を逸らしながら答えた。
「私の恋が本格的になったのは春樹くんが振られてから。それ以前だと私を隣人として救ってくれた時から。...私を救ってくれた時から私は貴方と一緒に歩もうって。そう決めたの」
「しかし万が一振られなかったらどうする気だったんだ?!」
「その時は諦めるつもりだった。だけどそうはならなかった。だから私は貴方を追いかけます」
唐揚げを食べる。
めちゃくちゃ熱く感じた。
それもあり得ないぐらいにだ。
実際、冷えているはずなのに熱い。
「愛花。本当に有難うな」
そう春樹くんは話した。
それから私を真剣な眼差しで見てくる。
私はその眼差しに汗が噴き出る。
そして真っ赤になった。
春樹くんは「本当に有難う。俺を好きって言ってくれて」と私に向いてくる。
「だけど俺はきっとお前には似合わないと思う。でも似合う男になったら。その時にお前に強く叫びたい。返事したい。良いか」
春樹くんは私を見ながらそう話した。
それから春樹くんは私の手を握る。
ゆっくり卵を温めるかの様に。
優しく撫でてくる。
私は顔を上げた。
「待ってるよ。春樹くん。それに私も今は無理だしね」
そう言いながら私は赤くなった顔を春樹くんに向ける。
春樹くんは「!」となりながら私を見る。
それから返事をしてくれた。
「ああ。必ずな」
そして春樹くんはそのまま手元のご飯を見た。
それから私に向いてくる。
「冷めてしまうし食べようか」とニコッとしながらだ。
その言葉に私も柔和に頷きながら笑みを浮かべる。
それからまた食事を始めた。
この時間はかけがえのない時間だ。
私にとっては無くてはならない時間になった。
☆
私は春樹くんを好きとした。
しかし私は全てを解決しないと春樹くんとは付き合えないと思ってしまった。
実家。
身体。
環境。
全てを解決しなければ付き合う価値は無い。
そう思えた。
だから私は保留にした。
(返事は今は要らない)とだ。
私はその事を考えながら世界を見渡す。
片付けをしてから春樹くんの隣に座った。
「恥ずかしいな。何だか」
「だね。確かに」
「俺さ。誰かに好かれるのは初めてだ。っていうか女子から好きって言われたのすら初めてだ。有難う」
「そ、そうなの?」
「ああ。だから有難かった。本当に」
私は赤面しながらテレビを観る。
すると春樹くんが手を私の手の上に乗せた。
私は握り返す。
好きな男の子の暖かいその手をだ。
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