第12話 須崎との邂逅

☆須崎シノン(すざきしのん)サイド☆


放課後になり私は信孝と一緒に帰っていた。

信孝の事が愛おしい。

何というか信孝も彼女を捨てて私を愛してくれた。


この事がとても嬉しい。

私はそう思いながら信孝の横を歩いて帰っていると目の前に眉を顰めた人間が居た。


というか。

春樹じゃないか。

私はその姿と横に居る女子を見る。

何だコイツは私を睨んでから。

腹立たしい。


「お前ら...」


春樹が静寂を破ってそう言い放つ。

私はその言葉に「何?春樹。もしかして羨ましいの?」と投げかける。

すると信孝も「負け犬だな」と言いながら春樹を見る。


「お前らに裏切られた恨みは相当なもんだが。そうまざまざと見せつけられると正直もう何も考えたくないな」

「それは何?考えるのを放棄したの?相変わらずね。春樹は」

「お前らの事を考える時間が惜しいだけだ。それ以外は何もない」


そう言いながら春樹は私を見る。

小馬鹿にしている信孝もチラ見しながら。

私はその姿に「あ、そう」と面白くない感じを思いながら返事をする。

そうしていると春樹の横の女子が私達の前に出た。


「もう私達に近づかないでもらえますか」

「いやいや。っていうか誰?貴方。私は貴方を知らないしいきなりはちょっと」

「知らないなら知らないで良いです。私は名乗る価値も無いので。でも一つだけ言います。私達に近づかないでくれますか。彼はめちゃくちゃに傷付いています。だからもう」

「意味分からない。日本語理解してる?さっきから聞いているけど私達の話し合いに貴方関係ある?」


そう言いながら私は訳の分からない様な女子を威嚇する。

すると女子は私を見ながら「私は彼に助けられました。だから私は彼を守りたいだけです!」と言う。

あっそ。


「まあそれでも良いけどそれして彼を守る価値ある?」

「貴方ムカつきますね本当に」

「いやいや。ムカつくってか私は貴方に正論を述べているだけだけど?」

「それのどこが正論ですか?貴方は頭がおかしいんじゃないですか?」


すると信孝が私の前に立ち塞がった。

それからタジタジする女子を威嚇する。

私はその姿にニヤつきながら女子を見た。

そうしていると春樹が前に出てきた。


「威圧するのはやめろ。彼女は女子だぞ!クソ野郎が!」

「前に出て来たのと俺の彼女を馬鹿にしたからだ。負け犬」

「あ?」


私はニヤニヤしながらその姿を見る。

するとその女子が春樹に向いてから「帰ろう。春樹くん」と言った。

それから歩き出す2人。

私は「帰るの?春樹くん」と馬鹿にした様に言う。

すると春樹は私達を見た。


「お前らの様なゴミクズに付き合っている時間が無くてな。こちとら学力優秀なもんで」

「あ?何だお前。俺らが馬鹿みたいな感じに言うじゃねーかよ。カスが」

「...まさにカスだろ。殴りたいか?なら殴れば良い。お前らに明日はない」


そう言いながら春樹達は去る。

それから信孝はイラッとした感じで「ゴミはゴミ箱に、だな」と言葉を吐いた。

私はその言葉に頷く。

確かにその通りだ。

そう思う。


「クソ野郎だな。アイツは。サイコだわ」

「そうだね。信孝。私達はまともだよね」

「まともだよ。そもそもアイツらがイかれてんだわ。最低最悪だわ」


信孝はそう言いながら私を寄り添わせる。

私は赤くなりながら「信孝。愛してる」と言う。

それから信孝を見る。

信孝は頷きながら私を見る。


「そうだな。俺も愛してる。お前が幸せになる様に祈っているから」


信孝はそう言いながら私に笑顔を浮かべた。

私はその姿にニコッとなりながら信孝に寄り添う。

そして幸せな時間を過ごした。

(春樹の様にはならないなぁ)と幸せを噛み締めた。


☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆


あり得ないぐらい不愉快だと思う。

あの人達。

そう考えながら私は眉を顰めた。

そうしていると春樹くんも眉を顰めていたのに気が付く。

私はなるだけ正常な顔をした。


「大丈夫?春樹くん」

「正直、めちゃくちゃ不愉快だ。アイツらに復讐したくなるな。だけどそれをやったら負け犬だ。本当に」

「だね。確かにね」

「俺は怒り任せには動かない。...その筈だったんだがな」

「仕方がないよ。これは。本当にイライラするから」

「...何故あんなに性格が歪んだ感じなんだろうな。意味が分からない。もう訳が分からないよ」


そう言いながら春樹くんは悔しそうな表情を浮かべる。

自らの過去を消したい様な感じに見える。

私は考え込んだ。

それから赤くなってモジモジしながら答えに行き着く。

その答えは簡単だ。


「ねえ。春樹くん」

「何だ?愛花」

「貴方の手を握って良い、かな」

「ふぁ!?何でそうなる!?」

「うん。何だかそうしたいから」


私は言いながら春樹くんの手を見る。

それからゆっくり握りしめてみた。

頭がボーッとする。

ただ熱い。

かあっと熱い。


「な、何でいきなり手を握るんだ。愛花」

「べ、別に良いでしょ?握られたくない?」

「そういう訳じゃないけど恥ずかしいから」

「そりゃ私だって恥ずかしいよ!」

「な、ならどうして」


私は考えた。

それから答えを言う。

「色々あったからせめて今は笑顔でって思って」と答えながらだ。


春樹くんは赤面しながら私の繋いだ手を見る。

そして鼻元を拭った。

恥ずかしがる彼も可愛い。

そう思いながら柔和になった。

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