第10話 その氷が融ける時
☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆
何か寒気を感じたが気のせいか?
そんな事を思いながら俺は猫又と愛花を見る。
2人は話を楽しそうに話をしている。
俺はそんな2人を見ながら時計を見る。
戻る時間か。
「佐藤。それから猫又。戻る時間が迫ってる」
「にゃ!確かにそうだね。じゃあ戻ろっか」
「確かに。戻らないといけませんね」
猫又は笑みを浮かべながら愛花を見る。
愛花は少しだけ恥ずかしがる様な感じでその笑みを見ていた。
俺はそんな2人を見つつ立ち上がった。
それから戻る準備を始める。
すると猫又がとんでもない事を言った。
「ねえ!」
「ん?どうした。猫又」
「いや。何か気になるんだ。えっとね。佐藤さんは横田くんが好き?」
「は?!」
まさかの事に愛花を見た。
しかし愛花は少しだけ柔和にそれを首を横に振ってから否定した。
それから苦笑する。
「無いです。何故なら...私は彼とお付き合いする程暇が無いんです」
「あ、そ、そっか」
「確かに彼は魅力的だと思いますが」
愛花はそう言いながらまた苦笑した。
それから「じゃあ戻りましょう」と言う。
俺はその言葉に赤くなる。
それと何だか知らないがそんな愛花も耳が赤いんだが。
何故だろうか?
そんな事を思いながら俺は愛花を見ていた。
☆
次の授業は体育だった。
俺は疲れ果てながら戻って来る。
それから首を回しながら調整しつつ女子の帰りを待つ。
女子はグラウンドで体育を行なっていた。
まあ俺達もグラウンドだったが場所が違うしな。
そうして考えていると坂本だったか?
なかなかチャラい男子が俺に話しかけてきた。
俺を見ながら手を挙げて挨拶してくる。
右の耳にピアスをしている。
ああ。クラスメイトの坂本斗真(さかもととうま)だっけかコイツ。
俺は「?」を浮かべた。
「初めましてだな」
「何だ。坂本。お前と話すのは初めてじゃないか?」
「そうだな。クラスの中で話題になっているんだよ。君と氷の女王の関係がね」
「...!?...話題?何でだ?」
「氷の女王はやけにお前にべったりだからな。興味を持ってな」
俺はまさかの言葉に驚きながら坂本を見る。
坂本は肩をすくめながら「気のせいかもだけどな」と苦笑いを浮かべた。
俺は廊下から戻って来た女子を見ながら首を横に振っておいた。
じゃないと何だかいけない様な気がしたから。
「そうか?ならそれでも良いが...だけど俺はお似合いだと思ったけどな」
「坂本?」
「お前が美人と別れたの知ってるからさ。だからその分は何とかって思ったんだよ。気のせいか。残念だな」
「何でそれを知ってんだ?」
「噂かな。あくまでな」
坂本は苦笑しながら俺を見据える。
それから俺の椅子の前に座りながら膝に腕を置いた。
それから俺をまた見てくる。
「確かに美人ばかりがお前に惚れるのもなって思うけどさ。だけどこのクラスの男子はお前を応援してるぞ。良い奴らばっかだから。一部は違うかもだけど別れたんなら氷の女王にも構ってやれよ。可哀想だ」
「やれやれ。お前がそんなに良い奴だって思わなかったよ。坂本」
「どうあって別れたか知らないけどさ。俺は彼女に浮気されてさ。だからこそ痛みが分かるんだ。失恋の痛みがな」
コイツ。
そう思いながら俺は坂本を見る。
坂本は俺を見ながら女子達を見つつ手を振ってきた。
「じゃあな」と言う。
俺は「ああ」と返事をした。
そしてそれを見ながら俺は愛花が戻るのを待つ。
すると愛花が戻って来た。
「佐藤」
そう話しかけると愛花はビクッとしながら俺を驚きの眼差しで見てくる。
それから耳まで真っ赤になる。
それは訳が分からなかったがそれ以外に愛花に向いてから「元気か」と話しかける。
すると愛花は「は、はい」となる。
うん?何だその反応は?
「...どうした?佐藤?」
「い、いえ」
そう言いながら愛花は更に顔が赤くなっていく。
まさか熱があるのか?
そうだな...汗で冷えたとか。
思いながら俺は愛花の額に手を添える。
するとみるみる更に真っ赤になっていく愛花。
熱がある様だが...!?
「ま、まって。おねがい。まって」
「愛花。待たない。保健室に...」
「だ、大丈夫だからま、待って下さい!」
俺の手を振り払いながら愛花は駆け出して行く。
それを見ていた女子も男子も「あーあ」という感じで「解散」と言いながら去る。
何故そうなるのかが分からないんだが。
坂本もまた苦笑しながら肩を竦めている。
「???」
何かしたのか俺?
思いながら考えつつ走って行った方角を見る。
それから「全く。授業が始まるってのにな」と思いながら俺は追いかけた。
そして探したが足が速すぎて見つからない。
流石は運動もできる野郎だ。
「...困った」
そんな呟きが思わず出る。
それから俺は考え込み...時計を見る。
駄目だなもう授業が始まる。
だが...。
「愛花の事が心配だな」
俺はそう結論を出して教師の目をかいくぐってから探した。
そして居たのは屋上だった。
ドアが開いていたからだ。
それからドアを開けて外に出る。
すると愛花は俺を見てからびくぅ的な感じになる。
「愛花。授業が...」
「そ、そうだけど...」
「...どうしたんだよ?」
「...い、今は近付かないで。お願い」
訳も分からずそのまま鐘の音を聴く。
それからベンチに腰掛けた。
愛花は1メートル離れた場所に座っている。
うーん困ったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます