第9話 歪みの歩み

☆須崎シノン(すざきしのん)サイド☆


私は性格的にも経済的にも学力的にも全てにおいて恵まれている方だと思う。

その筈なのだが。

私は何か違った事をしているのか?

正直...春樹のあの顔を忘れられないのだが。


忘れられないというのはそういう忘れられないという事じゃない。

つまり春樹に未練があるとかそういうのではない。

ただ単にもう少しだけでも怒るかと思ったのだ。


だけどそれが何もなく。

ただスルーで終わってしまった。

むかむかするのだ。


そう思いながら私は歩いていると浮気相手の現彼氏の伊藤信孝(いとうのぶたか)が声を掛けてきた。

ガチガチの身体のマッチョな男だ。

リア充で一緒に居て楽しい。


「よ」と言いながらやって来る。

私はその顔に「うん」と返事をする。

すると信孝が顔を見てきた。


「うん?どうした。冴えない顔をしているな」

「...あ。いや。何でもない。それで信孝はどうしたの」

「いや。偶然見掛けたから声を掛けたんだ」

「そっか。放課後もし良かったらデートする?」

「そうだね。アイツに見せつけてやろう。横田にな」

「...そうだね」


言いながら教室に戻って来る。

それから私達は椅子にそれぞれ戻るとチャイムが直ぐ鳴る。

ギリギリだった様だ。

職員室に行っていて時間を食われた。

そして教師がやって来る。


「席に着けよー」


そう言いながら教師は授業で使うものと思われる物品を取り出しながら準備を始めながらチョークを持つ。

私は教科書を広げてそのままノートを広げた。

しかしその中でも忌々しい感じで脳内を横田春樹の言動が回っていた。



本当に忌々しい。

私は何も悪く無いのになぜこんな感じになっているのか。

思いながら私はお弁当を信孝と笑みを浮かべて食べあってから空になったお弁当を包んでいると信孝が私にキスをしてきた。

人は居ないが恥ずかしかった。


「もう。信孝」

「...キスぐらいいじゃねーか」

「...まあそうだけどね」

「俺達はやってしまったし。今更恥ずかしがる事も無いだろ」

「あれはあれ。これはこれだよ」


そう言いながらも私は信孝と濃密なキスをした。

それから私は何だか興奮状態に陥る。

だけど人がやって来た。

私は名残惜しい感じで「また後でね」と信孝に告げる。

信孝は考え込んでいた。


「どうしたの?」

「なあ。放課後にまたやらないか」

「...え、で、でも...」

「俺はあくまで一発抜きたい」

「...そ、そっか。じゃあ」


なんて幸せな時間だろうか。

これは春樹とじゃあ考えられなかった。

そう思いながら別の方向にある高校を見る。

それから笑みを浮かべる。

春樹と付き合っていた時より遥かに勝ち組だ。


「横田より溺れさせてやるよ」

「ふふ。期待してる」


そして私は笑みを浮かべながら信孝を見る。

それから私は信孝と一緒に階段を降りてから教室に戻る。

私はお弁当箱を片付けた。


☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆


春樹くんの元カノがほくそ笑む姿が思い浮かんだ。

何故その姿が思い浮かんだか。

それはその女からの視線の寒気を感じたからだ。

私に対してほくそ笑む様なそんな感じだ。


私はイラっとしながらだったが。

イライラは良くないなと思い落ち着かせながら周りを見る。

猫又さんと春樹くんがふざけあっていた。

その姿を見ていると猫又さんがハッとして私に向いてきた。


「ねえねえ。佐藤さん」

「...何かしら?」

「友達になろう」

「へ?...い、いや待って。私は...そういうのは」

「だってせっかくこうやって知り合っているんだもの。良いでしょ?」

「...」


私に友人。

その事に赤くなっていると(それ)を思い出した。

ゾッとした。

それから私は過呼吸になる。


その事に「大丈夫!!!!?」と大慌てになる2人。

息が苦しいが...何とか大丈夫だ。

私は青い顔を上げる。

それから猫又さんに向いた。


「...ごめんなさい。私は...友人は作れないわ」

「...!」

「...ごめんなさい。過去の事があって」

「...そ、そっか...」


猫又さんはシュンとなる。

私はその姿に胸が締め付けられる。

それから握りこぶしを作ってから顔を上げる。

そして猫又さんに声を掛ける。


「ねえ。猫又さん」

「...なに?」

「今は友人になれない。だけど状況が良くなったら貴方と友人になりたいわ」

「...!...う、うん!約束だよ!」

「ええ。必ず約束する」


そして私は春樹くんを見る。

春樹くんは笑みを浮かべながら頷いていた。

私はその姿を見ながら柔和になる。

それから猫又さんを見る。

猫又さんは嬉しそうだった。


「...こんな私と友人ってそれは嬉しいの?」

「関係ないにゃ!...こほん。えっとね。私は...病弱だから友人が出来なくて」

「...!」

「...だから嬉しい」

「...」


私はその姿に複雑な思いになる。

それから目線をずらす。

そして考え込んだ。

そうなのかと。

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