魔法少女の魔法は三回~魔法のどうでもいい使い方

セレンとセシウム

魔法少女の魔法は三回~魔法のどうでもいい使い方

 麺平めんひら薬美やくみ、八歳。

 マンションの一階で、父親の麺平めんひらやわらと暮らす小学二年生の女の子。

 

 二月一日のこと。

「ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ……」

 青いワンピースに黒いランドセルをした薬美が、醤油味のカップラーメンをすすりながら学校へ走っている。

 薬美の朝食は、父親が買ってくるカップ麺である。

 すると、交差点で白いワンピースのお姉さんが信号待ちをしている。

「ズズズ? 」

 薬美は、ブーブーと言うクラクションとともにカップラーメンを完食した。

 どうやら、白髪おばあちゃんが車道を塞いでいるらしい。

「は、早く助けなきゃ! 」

 薬美は、カップ落とした後、おばあちゃんの右手を取った。

「うおっ! 」

 そして、信号を渡りきりおばあちゃんを救出。

「ありがとう……」

「どういたしまして! 」

 おかげ、立ち往生していた車が発進。

 再び青になる頃には、白いワンピースのドレスのお姉さんも横断歩道を渡ることが出来た。


 二月十日。

 薬美が電気ポットのロックを解除した時のこと。

 ドアの方から、ピンポーンと言う音が鳴った。

「ううん? 今行きまーす! 」

 薬美は、ドアを開けた。

「おはようござます! 」

 現れたのは、交差点で困っていた白いワンピースのお姉さん。

「どちら様ですか? 」

「わたくしは、カップ麺の女神ボイルド・ウォルタでございます」

「ぼいるとおるた? ひょっとして、不審者? 」

「いえいえ、あなたのお父様にホームステイを依頼した者でございます」

「ホームステイ? ならいいよ! 」

 薬美は、ウォルタを中に入れて一緒に朝食をとることにした。

 

 三分後。

 薬美とウォルタのカップラーメンが完成。

「ごめね……カップ麺しかなくて……」

「それは、切ないですね……」

「え? 」

 薬美は、『切ない』と言われた理由がわからなかった。

 しかし、ウォルタがその理由を魔法で説明する。

三分間スリーカウント! 」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

 薬美は、魔法で服を変えられた。

 青ワンピースは、赤いセーラーのワンピースに。

 緑のロングヘアーは、黒いポニーテールとなった。

「何なの? これ? 」

「これは、魔法少女の姿です。この姿の状態で、机を三回叩いてください。そうすれば、あなた、自分の願いを叶える事が出来ます。ちなみに、三回魔法を使うと元の姿に戻れます」

「本当? うん……やってみる! 」

 薬美は、願い事を念じた。

 そして、バンバンバンと、三回テーブルを叩く。

 すると、薬美の目の前にカップラーメンが袋が現れた。

 それは、煮干しラーメンのニボボとおやつ用の煮干し。

「うん! 魔法を使い切ろう! 」

「え、ええ!? もう少し、考えましょうよ! 」

 ウォルタは、魔法の使い方を考えように促す。

 しかし、薬美の頭の中は、ニボボと煮干しのみ。

 薬美は、テーブルを六回も叩いた。

 そして、彼女はボンッと白い煙に包まれた。

「……うお…………」

 薬美は、緑のロングヘアーと青いワンピースに戻った。

 テーブルには、ニボボ五個と煮干し三袋。

 薬美の願いは、全て叶え尽くした。

「……うん……あなたは、不幸じゃないのですか? 食べ物がカップ麺だらけですよ! 」

 ウォルタは、魔法の無駄遣いに怒りあらわにする。

 しかし、薬美は逆ギレすることなく冷静に答えた。

「一応、言っておくけれど、あたしは魔法使わなくても幸せだよ。お父さんが大好きカップ麺を買ってくれるから……あたしは、その幸せで、いっぱいなの! 」

「カップ麺で、幸せ? あり得ない……」

「あり得なくはないよ! ほら、カップ麺、のびちゃうよ? 」

「あっ……ああ……」

 この後、ウォルタと薬美は幸せそうにニボボをすすった。



 

 

 



 

 

 

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