第9話 猛暑の邂逅階段

「あ、はい。えーと…」

緊張で声が出てこない。でもこの声には聞き覚えがある。間違いなくアルマゲドンさんだ。何度も通話したのでそれはわかる。だが…

「アル…アルマゲドンさんですか?」

身長は…160センチ超くらいだろうか、緑のブラウスを着てるが逆光で顔がよく見えない。

「はい、はじめましてアルマゲドンです」

日常会話でアルマゲドンなんてワードが出てくるなんて想像しなかった。改めて身体を彼女に向ける。

「あ、はじめまして!ゴ、ゴブリン…です。すいません、集合場所わかんなくて慌ててました」

「私も今着いたところです。たぶん、ここですよね??えーと…」

スマホを取り出し確認している。さっきまで見えなかった表情がようやく確認することができた。グレーよりのアッシュヘアーは毛先に少しカールがかかっていて、前髪の隙間から長いまつ毛が見える。瞳はカラーコンタクトだろうか、すこし青みを帯びている。肌は雪のように白く、全体が柔らかい一線でかかれたような輪郭をしていた。美人。その言葉がぴったり当てはまるのかもしれないが、千尋はそれだけではない神秘的な印象を彼女に感じた。

おもわず止まってしまっているのを感じ取ったのか

「あの…ここであって、ますよね、ませんか?」

「あってる、とおもいます。と、とりあえずこの階段のぼってみましょう」

彼女のスマホ画面のアプリには『二階』とかかれている。とりあえず登ってみないことには進まないはずだ。

それにしてもアルさんがこんな姿をした女の子だとは思わなかった。これがリアルで出会った時のギャップなんだろうか。もちろん向こうからしたら僕もそうなんだろうけど。

千尋はそんな気持ちで階段を上がっていった。後ろからアルのこつこつという控えめな靴音がおくれてきこえた。

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