第33話 ナツノマモノ

病院に着くと、すぐに診察室へ案内された。

管理者が連絡してくれていたらしい。

「脱水症と聞きましたが、今はどうですか?」

『まだ、体のダルさとめまいが残っています。』

「ちょっと、手足触りますね。うん、冷たくなさそうですね。」

重度の脱水症だと、血液循環が悪くなって、手足が冷たくなるんだっけ。

「胸の音聴いて、血液検査と点滴打ちますね。」

注射…。うぅぅ…。苦手だ…💧

「大丈夫よ、すぐ終わるわ。力が入ってると打ちにくいから、力抜いてね。」

と華音から言われる。

ムリよ。怖いものは怖いもん。

健康診断の採血だってやっとなのに…。

「そんなに怖がるなら、ベッド採血にする?点滴もそのまま入れるから、それでもいいわよ?」

針を見なくて済むなら、そっちの方がいい。

『お願いします。』

「昔から、注射が苦手な所は変わってないわね(笑)」

と、華音に笑われてしまった。

「えっ?!こまちって、昔から注射嫌いなの?!知らなかった〜!」

と、興味を持った梨乃。

私に苦手なものがあるって、意外なの?人として普通よね?

「同じ職場だったら、見たことあるんじゃない?注射の時、めいいっぱい顔を逸らして、目をつぶっている所。」

と、笑いながら梨乃に教える華音。

『もう!余計なこと教えないでよ!』

「ふふ、こまち顔真っ赤よ?(笑)ほら、点滴入れるから静かにね?」

誰のせいよ!(笑)

いろいろ言ってる間に、注射は終わったらしく、今度は点滴を繋がれた。

「点滴が終わったら、コール押してね。あと、今日は終わったら水分多めに取って、しっかり休むこと!分かった?」

と、言って華音はどこかへ行ってしまった。

「こまち、ちょっと休んでていいよ。わたし、管理者に報告してくるね。」

めまいがしたってことは、中度か。

脱水症で病院なんて、働いていて初めてだわ。

「こまち、管理者に連絡したら、今日は半休を取って、休みなさいって。」

と、言われた。

『人数は大丈夫なの?貝瀬さんと梨乃だけになってしまうわ。』

「大丈夫よ。今日の分のリネン交換は、昨日やったみたいだし、午後から管理者も協力してくれるから、心配ないよ。無理しないで、休みな?」

『ありがとう。無理は、してないつもりだった(笑)』

「完全に貝瀬が悪いよ。入浴4人とかふざけんなっつーの!‪💢」

『まあまあ。梨乃、落ち着いて。』

貝瀬さんも貝瀬さんよね。

悪びれる様子もなく言ってきたもんね。

代わりに、リネン交換2部屋やったからいいでしょ。って言われて終わりそうよね。

本当に、貝瀬さんが謝っている所を見たことがない。

主任さんや管理者に言われたら謝るだろうけど、私達が何か言っても言い訳しか言わない。

貝瀬さんから、”すみません。”や”ごめんなさい。”という言葉を聞いたことがない。


1時間くらいして、点滴が終わった。

ナースコールを押したら、華音が来てくれた。

「はい、お疲れ様。しっかり水分補給してね。今日は、1日安静にして、ゆっくり休んで。薬は、特に処方しないからね!」

『華音、ありがとう。今日は、この後半休をもらったから休むわ。』

と伝え、起き上がって待合室へ行く。

梨乃にも、後でお礼を言わなきゃね。

病院に連れてきてもらったんだもの。

「お大事にね。」

『はーい。』

久しぶりの再会が、まさかの患者と医者とはね(笑)

今度は、ちゃんと元気な時に会おう。

お薬はないから、お会計したらそのまま帰っていいのね。


お会計を済ませ、帰りの車内。

「こまち、あの女性の先生と知り合いなの?」

『あの先生は、学生時代からの親友よ。』

「あっ、そうなの?!だから、仲良さそうに話してたのね!」

『まあ、私の嫌いなものとか苦手なものを知り尽くされているからね(笑)』

「私としては、注射が嫌いっていう意外な一面を知れて嬉しかったなあ!」

梨乃達には、隠しておきたかった…。

『それは、もう忘れて!梨乃も水分補給しっかりしてね!』

「分かってるよ!心配なのは、こまちだよ。」

『分かりました。』

今日は、帰って休もう。

午前中、入浴4人はキツかったのかなー。

私的には、無理はしていないつもりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る