第28話 ゼンヤサイ4(男性目線)

前夜祭を楽しんでいたら、あっという間に23時を回っていた。

こまちちゃんの手を引いて、人混みから抜け出す。

『どうする?そろそろ帰る?』

「そうだね。もう遅いし。」

『おっけー。連絡するから、ちょっと待っててね。』

少し疲れた様子の彼女。

ずっと立っていたし、人も多かったから疲れるだろう。

夜勤明けだった彼女の表情は、少し眠そうだ。

普段、こんなに人が多い所には行かなそうだから、余計に疲れたのかもしれない。

母が迎えに来て帰っても、彼女はそこから30分程かけて自分の家に帰らなくてはいけない。

『連絡したから、15分くらいで来ると思うよ!』

「ありがとう。大輝さんも疲れているのに、ごめんね。」

『気にしなくていいよ!』

彼女の良い所でもあり、あまり良くない所でもある。

夜勤明けで来て、こまちちゃんの方が疲れているのに、俺の心配をしてくれる。

泊まって行かないらしいから、明日に疲れが残らないといいな。


母が迎えに来てくれて、家に着いた。

「こまちちゃん。今夜はもう遅いし、泊まって行けば?」

と、心配した表情で母がこまちちゃんに聞いた。

「いえ。母に怒られますので。それに、着替えとかも持って来ていなくて…。」

「着替えなら、大輝のを着たらいいよ。嫌だったら、お姉ちゃんのもあるし。」

「ありがとうございます。ですが、母に帰るように言われたので💦」

「そうなの?なら、仕方ないわね。気をつけて帰ってね!」

「はい。ありがとうございました!」

『心配だから、家に着いたら連絡してね!』

「『また、いつでも遊びにおいでね!』」

と、2人でこまちちゃんを見送った。

家の中に入るなり、

「大輝の言っていた通り、真面目な良い子ね。」

と、言われた。

『まあ、真面目すぎる所もあるけどね(笑)でも、悪い子じゃないでしょ?』

今回は、ちょっと真面目すぎだね(笑)

こまちちゃんからすれば、俺の印象を悪くしたくないという気持ちからの選択なんだと思う。

着替えも、俺のが嫌だったら姉から借りれば良いし、来客用の布団は何組かあるから心配はいらない。

「うん。あいさつもできるし良い子ね!」

挨拶は大事だよね。


リビングに入ると、姉がお酒を飲みながら動画を見ていた。

「あっ。おかえりー!あれ?彼女さんは?」

と、姉が俺らを見て言った。

『ただいま!さっき、帰ったよ。』

と、伝えると立ち上がって、

「えっ?バカなの?何で??こんな時間に帰したの?泊まって行けばいいのに。」

と、言われた。

バカなの?って言われても、断られたんだから、仕方ないだろ。

「まあまあ。彼女さんの親御さんが帰るように言ってたんだから、今回は仕方ないでしょ?」

と、宥める母。

『俺も母さんも泊まって行けば?って言ったよ。でも、断られたんだ。』

「そっか〜。親の反対なら仕方ないか。」

と椅子に座る姉。

『俺だったら、親に反対されても泊まっちゃうけどね。』

って、冗談まじりに言ったら、

「あんたは、昔からそうだからあまり心配してないわ。」

と、母に言われてしまった(笑)

「「『たしかに!(笑)』」」

と、3人で笑い合う。

「また機会があれば、こまちちゃんに会いたいわ。」

「私も会ってみたい!今日、会えると思ってたのに残念。」

『うん。また連れて来るよ!』

母は、こまちちゃんを気に入ってくれた様子。

「あっ、そうだ!こまちちゃんからお菓子をいただいたのよ!」

と、もらったお菓子を姉に見せた。

「えっ?!これ、限定のヤツじゃん!私もずっと狙ってたけど、なかなか買えなかったヤツ!!」

「あら、そうなの?」

こまちちゃんも限定ものとか買うんだね。

でも、この前、宮田さんと期間限定のメロンパフェ食べに行ったって話してたな。

『女の子って、限定ものに弱いんだね!買いたかったのもらえて良かったじゃん。』

「大輝!彼女さんにしっかりお礼言っといてね!あと、私が喜んでたって伝えておいて〜!」

と言って、フラフラと部屋に戻った姉。

「すごく嬉しそうだったわね。あっ、こまちちゃんから連絡来た?」

母に言われてLINEを開くと、家に着いたというLINEが入っていた。

『うん、無事に着いたみたい。』

「そう。良かったわ。じゃあ、私寝るね。おやすみ〜。」

俺も寝よ。

こまちちゃんに、おやすみとLINEを送りジャージに着替える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る