第27話 ゼンヤサイ3(男性目線)

前夜祭当日の昼過ぎ。

「大輝、彼女さんは何時くらいに来るの?」

と母に聞かれる。

『16時くらいにって伝えてあるから、そのくらいに来ると思う。』

「そう。じゃあ、私の車を家の前に置いておくから、彼女さんの車はガレージに入れてもらって。」

『分かった。姉貴は?』

「もう少ししたら、中抜けで戻ってくると思うよ。」

『彼女に会えるかな。イベント期間中は、忙しいって言ってたよね。』

「そうね。会えないかもね〜。帰りも遅くなるらしいから。」

『そっか、会わせたかったな。今日、帰ってきたら会えるかな?』

こまちちゃん、お泊まりしないって言ってたけど、会えるかなー。

今日来たら、母には紹介するつもりでいる。

姉貴もタイミングが合えば紹介したい。

イベント期間中は、繁忙期だから休みがなくても夜はいつもより遅いらしい。

「澪も疲れてるから難しいかもね。この前もリビングで伏せて寝てたからね(笑)」

『あー、寝てたな(笑)水を飲もうと思って下りた時に、真っ暗なリビングにいてビビった(笑)』

眠気が限界だったんだろうな。

あの日に限らず、リビングで寝てるところを何度が見たことあるな。

「無理はさせられないね。また倒れたら大変!」

姉は、一度高熱で倒れたことがある。

それからは、姉自身も無理のないようにしているようだが、この時期は体調を崩しやすいらしい。


リビングでゲームをしていたら、こまちちゃんから着いたとLINEが来た。

ガレージに停めてもらって母と一緒にリビングへ案内する。

『母さん、紹介するよ。こちら、今お付き合いしている松本こまちさん。』

「大輝さんとお付き合いさせていただいています。松本こまちです。」

と一礼するこまちちゃん。

「大輝の母です。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。今日は、お世話になります。あの…。こちら、お好きだと聞いたので、よろしければどうぞ。」

紙袋からお菓子を出して母に渡す。

あっ。この前話した、母達が好きそうなお菓子だ。

「あらあら。そんなに気を遣わなくてもいいのに〜!ありがとうございます。」

こまちちゃんって、家来る度に何か持ってきてくれるよね。

そして、母と一緒に麦茶を飲みながら話している。

「あっ!あと、会場で雨が降っても傘させないから、タオルを持って行くといいよ!汗を拭くタオルはある?」

と、何枚かタオルをリビングに持ってくる母。

「汗を拭くタオルはあります。ありがとうございます!」

と、タオルを1枚受け取るこまちちゃん。

「どういたしまして(*^^*)じゃあ、大輝用に2枚くらい持って行ってあげて。」

と追加で2枚渡していた。

おっ。そろそろ出る時間かな。

母とこまちちゃんが仲良くなった様子で安心した。


前夜祭の会場。

昨日の夜、姉に会場は現金決済ができないことを知らされた。

こまちちゃんが来る前に、急いでコンビニに行ってチャージしてきた。

感染症が流行り始めて、その対策として現金の取り扱いをやめたらしい。

俺も、今日の参戦が5年ぶりだ。

感染症流行前は、好きなアーティストが出ると知ったら、チケットを取って、姉と一緒に参戦していた。

最後にフェス本番に参戦したのは、10年くらい前かもしれない。

あの時はまだ30代で、夜勤明けで参戦していたから、若かったな〜と思う(笑)

ビールと焼き鳥を食べながら始まるのを待つ。

隣では、こまちちゃんがオレンジジュースを飲んでいる。

雨が降るかもと母が言っていたけど、降りそうな様子は無い。

「あっ!大輝さん!私、スムージーが飲みたいの!買いに行ってきてもいい?」

と、こまちちゃんが思い出したように言う。

さっきのこともあるし、1人で行かせるのは不安だ。

『俺も、一緒に行くよ!さっきみたいなことがあると心配だから。』

「ありがとう!」

きっと彼女は、俺が心配していることなんて知らないんだろうな。

まあ、知らなくてもいいけど(笑)

ナンパされたことないのかな?

酒井さんと宮田さんと一緒に海とか行ってたら、3人ともナンパされそうだけど??

大学時代の卒業アルバムも可愛かったし、絶対どこかでされたことあると思う。

本人がナンパだと認識してない可能性もあるな(笑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る