第26話 ゼンヤサイ2

会場に到着。

車内では、ずっと手を繋いでました(照)

『ありがとうございました!』

とお母様にお礼を言って、車から降りる。

「こまちちゃん、大輝から離れちゃダメよ!人が多いから気をつけてね!」

『はい!ありがとうございます!』

繋いでいるから大丈夫。と言うように、再び大輝さんが手を繋いでくれた。

「離さないから、大丈夫。また帰る時に連絡する。」

「分かった。気をつけてね!」

と言って、お母様は帰られた。

改めて周りを見ると、本当に人が多かった。

背の高い外国人がいっぱい💦

「こまちちゃん、本当に離れないでね?この人混みの中探すの大変だし、心配だから。」

『うん、離れない。』

私は、もう一度しっかり大輝さんの手を握り直した。

「お腹すいたね!何か食べよっか!」

『そうだね!お腹すいたー!』

「あっ!俺、ビール飲んでもいい?」

『うん、いいよ!』

帰りもお母様が迎えに来てくださるから、大輝さんは飲んでもいいね。

私は、ビール苦手ー。

それに、櫻井家に着いても、そこから運転して帰らなきゃいけないからやめとこ。

「やったね!こまちちゃんは、何か食べたい物ある?」

『大輝さんがビールを飲むなら、焼き鳥が食べたいな。』

「おっ!いいね!タレと塩どっちも買おっか!」

『うん!』

「おっけー。まず、ビール買ってくるね。こまちちゃん、ここを動かないでね?何か飲みたい物ある?」

『ううん、大丈夫。』

ビールを買いに行った大輝さん。

焼き鳥は、モモがいいな。軟骨や皮もいいね。

フェスだから、あんまりスイーツ系はなくて、ほとんどガッツリ食べるご飯系が多い。

あっ、スムージーがある!

あっ…いけない。ここから動いちゃダメ。

思わず、スムージーのお店に行きそうになるのを踏みとどまる。

「こまちちゃん、おまたせ!」

と、生ビール片手に大輝さんが戻ってきた。

『大輝さん、おかえり!焼き鳥、何が食べたい?』

「うーん…。モモとタンの塩ダレかな。こまちちゃんにお願いしてもいい?」

『うん、私買いに行ってくるよ!ゆっくりビール飲みながら待っててね。』

モモとタンの塩ダレとモモとハラミのタレを2本ずつくらいでいいかな。

ん?あれ?現金決済できない??

私、電子マネーにいくら入れてたっけ?

この間、出掛けた時にチャージしたから、焼き鳥を買う分くらいはあるはず。

大輝さんって、あんまりカード決済してるとこ見たことないけど、カード決済したんだ。

あっ、大丈夫そう。間に合ったε-(´∀`*)

「お姉さん!お姉さん!」

と後ろから男性の声がする。

周りを見ると、体格のいい外国人の男性しかいなくて、私に話しかけているのだと分かった。

これは、反応してはいけない気がする。

でも、私は声がする方向に振り向いてしまった。

「お姉さん1人?ねぇねぇ、俺と一緒n」

「1人じゃないんで、他当たってください。」

と、誰かに後ろから手を引かれた。

振り向くと、そこには険しい表情をした大輝さんがいた。

『大輝さん。』

「ちぇ。男いんのかよ。」

と男性は走り去っていった。

「なかなか戻ってこないと思ったら、ナンパされてるから、ビビったよ。」

と言う大輝さん。

『ごめんなさい。振り向くつもりはなかったの。』

「でも、どこかに連れて行かれなくてよかった。今度から、声掛けられても反応しちゃダメだよ。」

『はい、気をつけます。助けてくれてありがとう。』

しっかり手を繋いで、少し人気のないところで焼き鳥を食べる。


食べ終わる頃に、花火が上がり始めた。

「おっ!そろそろ始まるね!ちょっと向こうの方に移動しよっか。」

『うん。』

言われるがままに、ライブハウスの方へ歩く。

音楽フェスに初めて来たけど、アーティストと距離が近そう。

「俺の隣から離れないでね。」

大輝さんのお母様にも言われた。

大輝さんから絶対に離れちゃダメよ!と。

さっきのことでその意味を痛感した。

私は、LIVEに行ったことがあるから、大きい音は大丈夫。

ただ、こんな近さでアーティストを見ることはなかったし、立ちっぱなしの会場が初めてだから、押し潰されないようにしないと。

ライブハウスは、いくつかのブースに分かれていて、各々が好きな所へ行けるようになっている。

人が多くてかなり暑い。

冷たいお茶をもらってきてよかった。

「こまめに水分補給して、倒れないようにね?」

と心配してくれる。

『ありがとう!大輝さんも気をつけてね。』

「うん。」

この街の大きなイベントの前夜祭なだけあって、周りの熱気と盛り上がりはすごい。

明日からの3日間は、もっとすごいんだろうな。と思いながら参戦する。


23時を回った頃。

大輝さんに手を引かれて、大勢の輪から抜け出した。

「もう23時だけど、どうする?そろそろ帰る?」

『そうだね。もう遅いし。』

「じゃあ、連絡するね!ちょっと待っててね。」

はあ・・・少し疲れたかも。

座れそうな所はないから座らないけど、ちょっと腰を伸ばしたりストレッチをする。

「疲れた?」

『ちょっとね。でも、大丈夫!』

「夜勤明けだったもんね。俺も疲れたから大丈夫だよ(笑)今連絡したから、15分くらいで来るよ。」

『ありがとう。大輝さんも疲れてるのにごめんね。』

「気にしなくていいよ!」

大輝さんの家に帰っても、また30分くらいかけてアパートに帰るんだ。

長いなあ…。眠いなあ…。

帰りの車内は、眠気との戦いだ。

明日休みだから、あともう少し頑張ろ。


お母様が迎えに来てくれて、櫻井家に帰ってきました。

「こまちちゃん、今日はもう遅いし泊まって行けば?」

とお母様に言われました。

私も、今日はもう眠くて体力もあまりないから、お言葉に甘えたい。

でも、母に反対されてしまったから、帰らなきゃ。

『いえ、母に怒られますので。それに、着替えとかも持って来ていなくて…。』

「着替えなら大輝のを着れば?もし嫌なら、お姉ちゃんのもあるし!」

『ありがとうございます。でも、母に帰るよう言われてしまったので…。』

「そうなの?気をつけて帰ってね。」

『はい。今日はありがとうございました。』

玄関先で、大輝さんとお母様にあいさつをして帰る。

本当は、泊まって行きたいけど、両親に反対されてしまったし、姉にも今回は素直に聞いた方がいいと言われた。

「「またいつでも遊びにおいでね!」」

と2人が見送ってくれた。

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