第23話 オトマリコウショウ

その日の夜。

今日は、実家で家族みんなで食事をする。

お父さんはいないけど、お母さんにはちゃんと話そう。

『あの、お母さん。ちょっと話があるの。』

と切り出すと、

「あら。こまちが珍しいわね。どうしたの?」

と聞く母。

『実は、今月末に音楽フェスの前夜祭があるの。彼氏と一緒に行って来てもいい?』

「あら。音楽フェス!楽しそうじゃない!気をつけて行ってらっしゃい!」

ここまでは順調。

問題は、この先。

お泊まりの許可をもらわなくちゃ。

『ありがとう。それでね、帰りが遅くなっちゃうの。』

「そうなの。それは心配ね。」

『それを彼氏も心配しているの。それでね、彼氏が家に泊まって行きな?って言ってくれてるの。お泊まりしてもいい?』

「あちらの親御さんも良いって言ってるから、彼氏さんが言ってるのよね。

でも、お母さんとしては反対よ。帰って来られない距離ではないでしょ?例え、家族がいる実家でも何もないという保証はないわ。」

『彼氏のお母さんも良いって言ってるよ。』

「だとしてもダメよ。私達は、まだあなたの彼氏に会ったことがないのよ?知らない男性の家に、大事な娘を泊まりに行かせるわけにはいきません。お泊まりしないで、帰りなさい。」

断固反対する母。きっと父がいても反対だろう。

会場でご飯食べるし、夜遅くに帰るから、疲れてすぐ寝ちゃうと思うけどな〜。

『分かったよ。ちゃんと帰るわ。』

「アパートに帰ったら、連絡してね。」

反対だろうな。とは予想していたけど、こんなに頑なに反対されるとは思わなかった。

もし、来年も行くことになったら、その時は友達の家に泊まると言おう。

1年以上経っても、この調子だと反対されそうだ。


その後は、普通に仕事の話や最近の話をした。

今日、たまたまお店にひよりさんが来てくれたことも話した。

洗い物をしながら、大輝さんにいつ伝えようか考えていた。

明後日、仕事で会うからその時に話そう。

たしか、私が遅番で大輝さんが夜勤だった気がする。

アパートに帰ったら連絡しなきゃいけないのか。

ちょっと心配しすぎじゃない?!

そんなに心配されるような年齢ではないような??

きっと梨乃達に話したら、正直に話しすぎ!って言われるんだろうな(笑)

適当に、友達の家に泊まるって言えばいいのにね。

でも、あまり親には嘘をつきたくない。

「こまち。どうしたの?」

と姉。

姉は昔から、私が落ち込んでいる時に声を掛けてくれる。

『お姉ちゃんも、彼氏の家にお泊まりするの反対?』

「私は、良いと思うよ。実は、私もお母さんとお父さんに反対されたことがあるの。」

『反対された時、素直に受け入れた?』

「ううん。その場では、受け入れたフリしてたよ。当日に、友達の家に泊まるって言って、彼氏の家に泊まったことが2回くらいあったかな。」

『えっ?2回も?!』

受け入れたフリって器用なことするのね。

「うん。彼の家の人も、もう夜遅いから泊まっていきなー。って言ってくれたし。」

一人暮らしだったらバレないし。と続ける姉。

たしかに。

帰ったよ。って報告のLINEだけ送ってしまえば良いのか。

ちょっといいことを聞いたかもしれない。

『そうだけど⋯。』

「まあ、今回は素直に泊まらずに帰った方がいいね。ちゃんと言っちゃったし。」

『わかった。』

「でも、夜遅くに年頃の女の子が1人で運転して帰る方が、私としては心配だね〜。事件や事故に巻き込まれないか心配だよ。」

男女の何かよりね。と言う姉。

帰る時間帯は、人通りが少なそうだから、少し怖い。

事故や事件の現場に会わないように、巻き込まれないことを祈ろう。

『うん、気をつける。ありがとう。』

「今度から、友達の家に泊まるって言いな?今日みたいに言ってると、彼氏と旅行とか行けないよ?(笑)たまには、2人で過ごしたい夜とかあるでしょ?」

『そうする(笑)長く付き合っても、反対され続けそうだもん。』

「たしかに(笑)それだけ、こまちのことが心配なのよ。」

心配してくれていることは分かってるよ。

でも、私ももう27だし、お泊まりくらいは許してほしい。

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