第21話 ワスレモノ

あと1週間くらいで来月のシフトが出そうな7月初め。

今日と明日の連休は、大輝さんとお休みが被っていない。

今日は、実家のお店を手伝って、執筆をする予定。

今月末の音楽フェスの前夜祭のことも話さないと。

「こまちー。私、配達行ってくるから、店番お願いねー!」

と姉は、配達分の和菓子を持って出て行った。

今日は、週の真ん中の水曜日。

お客さんが少なそうな日だ。

「こんにちはー!」

『いらっしゃいませ〜!あら、ひよりさん!』

ひよりさんとは、5人で偶然会った以来会ってなかったし、舞台のお仕事が忙しいと思って、あまり連絡もしていなかった。

数ヶ月ぶりに、ひよりさんに会った。

「こまちさん!お久しぶりです!」

『久しぶりね(^^)元気?お仕事はどう?』

「はい、元気です!今、舞台公演の中休みで2日間オフなんです!」

また、金曜日から舞台公演が始まります!と話すひよりさん。

『素敵な女優さんね!今度、都合が合えば、ひよりさんの舞台を観に行きたいわ。』

「ぜひ!ぜひ、来て欲しいです!!」

舞台鑑賞…大学時代は、よく行ったわね。

「こんにちはー。」

とお客さんが来た。

ひよりさんに、奥のテーブルに移動してもらいお茶を渡す。

『いらっしゃいませ!』

「いつものをお願いします!」

『はい。豆大福とお団子3つずつですね。』

「はい、覚えてくれてるんですか?!ありがとうございます!」

『あっ、お姉さん髪色明るくなりましたね!すっごくお似合いです♡』

「えー?本当ですか?!ありがとうございます!そう言われると嬉しいです!」

『いつもありがとうございます。』

商品を渡し、代金を受け取る。

「ありがとうございました!また来まーす!」

と商品を受け取り、お客さんは帰られた。


お客さんが少しバラついてきた頃。

「こまちさん!ここに、どなたかのお財布の忘れ物があります!」

と焦ったような声で教えくれるひよりさん。

言われた通り、見てみる。

すると、ちょうどレジから見えない荷物置きのような所に、お財布が1つ置いてあった。

まだ姉が配達から帰ってきていないため、私はお店から離れることができない。

『あら、本当?!どなたの忘れ物かしら?』

「いつからあるんでしょうか⋯。持ち主さんもきっと困ってますよね。早く届けないと⋯。」

やや不安そうな表情をするひよりさん。

この街の常連さんだったら、気づいて戻ってくると思うけど、今のところその様子はない。

遠方から来てくださるお客さんもたまにいるけれど、どこ出身の方かは分からない。

とりあえず、姉が配達から戻るまで、お財布は店の奥にしまっておこう。

『大丈夫よ。お姉ちゃんが帰ってきたら、私が持ち主に届けるわ。』

「ありがとうございます!」

『ひよりさんもゆっくりして行ってね!』

「あっ。でも私、そろそろ時間なので。また来ます!今日は、ありがとうございました!」

『こちらこそありがとう。良ければ、これ持って帰って?』

ひよりさんに、4個入りの豆大福を渡す。

「いいんですか?!久しぶりに、こまちさんの家の豆大福が食べられるなんて、嬉しいです!!」

と喜んでうけとってくれた。

また時間ができたら来ます!と言って、ひよりさんは帰ってしまった。

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