第19話 オウチデート

今日は、春に約束していたお家デートの日。

大輝さんがアパートに来てくれるので、お茶の準備をして待ってようかな。

中学、高校の卒業アルバムが見たいと言われたので、この前実家に帰った時に持って帰ってきた。

巻末メッセージの他に、和果さん、蘭さん、ひよりさんからのお手紙もあって、懐かしくなっちゃってそれも持って帰ってきた。

華音からも手紙をもらった。私も華音に手紙を書いて渡した。

今は、ファンレターをもらっているけれど、一通一通にお返事を書けないのがすごく残念。

華音達からも届くけど、特定の人にだけお返事をするのは、不公平だから一律ファンレターのお返事は書かないことになっている。

本当に返事を送りたい時は、LINEに送るようにしている。

蘭さんやひよりさんは、よくLINEに連載小説の感想を送ってくれる。

執筆道具を片付けて、空いたスペースにゲームセンターで取った(取ってもらった)ぬいぐるみやマスコット達を並べる。

パソコンも一応しまっておこう。

そうしている間に、大輝さんから着いたよ。とLINEが来た。


今まで、大輝さんのお家で遊ぶことはなかったし、男性がアパートに遊びに来ることもなかったから、どうすればいいのか分からない(笑)

『大輝さん、床に座ると疲れると思うから、ソファーかイスに座った方がいいよ!』

「ありがとう!」

と大輝さんは、ソファーに座った。

『大輝さんは、コーヒーにミルクと砂糖入れる人だよね?』

「うん!ねぇ、こまちちゃんの卒業アルバム見たい!」

さっそく本題ですか(笑)

ゲームも持って来ているみたいだけど、今回の目的は卒業アルバムですか(笑)

『まあまあ。コーヒーでも飲みながらゆっくり見ようよ!』

と大輝さんにコーヒーを渡す。

「ありがとう!(´▽`)」

『砂糖とミルクはお好みで入れてね(*^^*)』

シロップとミルクの入れ物も一緒に出す。

棚から、中学、高校の卒業アルバムを手に取り、大輝さんに渡す。

私の出身校は、中高一貫の女子校だった。

だから、メンバーはあまり変わらない。

人数が多かったから、クラスは変わってるかな。


パラパラめくっている間に、私を見つけたのか

「こまちちゃんいた!えっ、めっちゃ可愛い!」

と言ってくれる大輝さん。

いつのだろうと覗き込むと、文化祭の時のカフェの衣装を着た私を見ていた。

普段は着ない、フリルがたくさんある衣装で、華音と一緒に恥ずかしがりながら着て、接客をした覚えがある。

クラスメイト達は、私達のおかげで学年1の売り上げだったと言ってくれた。

『文化祭の時ね。クラスの子達にヘアセットまでやってもらったの。』

「こまちちゃんキレイだね。今度、こういう服着てみてよ!」

『隣の親友の方がもっと可愛いよ。何言ってるの?!あれは、文化祭だから着ただけよ?!』

華音は、可愛いと言うよりキレイだ。

どこか品があって美しい。

文化祭マジックでそう見えるだけだと思う。

学校中の憧れの的は、間違いなく華音だった。

蘭さん曰く、当時は私派と華音派があったらしい。

「ボブのこまちちゃん可愛いね!この髪型には、戻さないの?」

『戻さないかな。近い長さにすると思うけど、結べる長さだと思う。』

「そっかー。ちょっと残念だなあ。でも、セミロングもいいね!!」

と言いながらページをめくっていく。

「巻末の寄せ書きって、いつの時代にもあるんだね!」

と最後の寄せ書きのページを見ていた。

幼なじみや華音、クラスメイト達からのメッセージが多く書かれている。

「ねぇ、この”こまちが作家になったら、ファン1号は絶対私がもらうからね!”って書いてあるけど、こまちちゃんの夢って作家さんだったの?」

作家だったんじゃないよ。

今も作家なの。

これは言っても良いのかな?

私の本業は、誰も知らない。

華音達は、私が連載小説を始めた初期の頃からファンレターを送ってくれている。

宣言通り、華音がファン1号なのだ。

『そうだね。この頃はそうだったよ。』

やっぱり言えない。でも、いつか必ず言わなくちゃ。

「よし!卒業アルバムも見たし、ちょっと休憩したらゲームしよ!」

そう言って、大輝さんは少し冷めたコーヒーを飲み始めた。

『私も、大輝さんの卒業アルバム見たいなー。まだ持ってる?』

「あるよ!今度、家来た時見る?」

『うん!見たい!』

「わかった!探しておくよ。」

探さないといけない場所に入ってるの?(笑)

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