第18話 アラタナミチ

6月中旬。

だんだん気温が上がって暑い日が多くなってきた。

今日は暑いから、ご利用者様にアイスカフェラテとお菓子を提供し、私達職員も各々でコーヒーを入れて一息ついていた。

外へ花壇の成長を見に外気浴に行ってみようか。と思い外を見ると、見慣れない車が止まっていた。

『酒井さん、今誰か来てますか?』

と梨乃に聞いてみる。

今日のメンバーは、私と梨乃と貝瀬さんの20代トリオ。

「あー、えっとー。ここの系列の有料老人ホームの施設長だと思います。」

と教えてくれた。

管理者と話し込んでるみたいだから、お茶を持って行かないとね。

ここの系列の施設って2~3個あるわよね?

有料老人ホームだから、前に働いていた所ね。

施設長、女性になったのね。

異動してきて、5年くらい経てば施設長も変わるか。

別に、誰かから嫌がらせを受けていたわけではないから、会っても大丈夫だけど、緊張するよね。

『そうなんですね!』

「でも、そろそろ帰りそうですね。」

えっ?もう帰るの?!

アイスコーヒー持って行こうと思ってたのに。

『そうなんですか・・・。酒井さん、アイスコーヒー飲みますか?』

まあ、施設長だから長時間外出しているわけにもいかないか。

「作っちゃったの?(笑)いいよ、飲むよ!」

『作っちゃいました💦‬置いておきます(笑)』

良かった、梨乃がアイスコーヒー好きで。


『お先に失礼します。お疲れ様でした。』

とあいさつをして退勤する。

「お疲れ様でした!」

たま後でね。と囁く梨乃。

今日の夜は、いつもの3人でご飯に行く予定。

事務所にもあいさつをする。

有料の施設長は帰ったみたい。

「あっ、松本さん!今、ちょっと時間ありますか?」

『はい、大丈夫です。』

何だろう?と思いながら、管理者の近くのイスに座る。

「実は、さっき有料老人ホームの山本施設長が見えていたんです。

今、向こうの職員の人手が足りていないそうなんです。それで、山本施設長の話だと、すぐ動ける人がほしいと言われまして、できれば、松本さんに戻ってきてほしいと言われました。」

『私にですか?』

「そうなんです。グループホームに転勤してきた当初は、有料老人ホームのヘルプに行っていたでしょ?それに、あちらも新しい人を採用してじっくり指導する期間を確保するのが難しいみたいで・・・。」

それで、有料の業務内容がわかっている私が選ばれたのね。

『分かりました。少し考えさせてください。』

「うん。急がなくても大丈夫です。」

どうして私なんだろう?

ううん。数いる職員の中から私を選んでくださった。私ならできると思われてるんだ。

じっくり指導する期間が確保できないのなら、少しでも向こうの業務の流れや要領が分かっている人が行くべきよね。

『ありがとうございます。』


前向きに検討しよう。

異動するとなれば、大輝さんと会える日も減ってしまう。

梨乃と菜月とも気軽に遊んだり、会ったりできなくなるかもしれない。

うーん・・・。でも、違う環境に身を置いてスキルアップを目指したいとも思う。

時間をかけて考えよう。

あまり急いでもいい答えは出ない。

今は、責任のある仕事を持っているから、その仕事を誰に引き継ごうか・・・。

そんなことを考えている間に家到着。

大輝さんに話しておいた方がいいかな?

今度会った時か、確定した時の方がいい?

梨乃達には、まだ話さないでおこう。

また、話があったら考えよ!

今夜は異動の話は忘れて楽しも!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る