第14話 ハルノオトズレ

3月になって、有名な桜の名所に行きたいね。と大輝さんと話していた。

「こまち、3月さちょっとお店手伝ってくれない?」

と姉に頼まれた。

『3月?いいけど。下旬に桜見に行く予定があるから、その日以外だったら手伝えるよ。』

「ありがとう!助かる!いつ見に行くか決まってる?」

『まだ。29日~31日頃がいいんじゃないかって話してるよ。』

「OK。私、3日間くらい一人旅行こうと思ってるんだ。あとで、こまちのシフト見せてねー。」

姉は、お店の奥へ引っ込んでしまった。

3日間か、ちょっと長めね。

リフレッシュも兼ねて、お店のことは気にせずゆっくりしてきて欲しい。

姉は、お店を継いでから、前までよく行っていた一人旅に行かなくなった。

だから、今まで行けなかった分楽しんできてほしい。

私のシフト、いつもホワイトボードに貼ってあるんだけど、分かるかな?

姉が、奥に行ったってことは店番してないとだよね。

「こんにちわ!」

『いらっしゃいませ!』

「豆大福3つと羊かん4つください。」

『はい。ありがとうございます。』

「桜が咲き始めたね。今年もキレイに咲くかしら?」

と、桜の木を見ながらお客さんが教えてくれた。

お店の近くの桜の木は、祖父の代から植えられている。

家の庭にも桜の木はあるけれど、正面からは見えない。

『そうですね。気候も良いですし、咲くと思います(*^^*)』

と言うと、

「今年も見に来るわね。」

と返してくださる。

お代を払って帰られるお客さんを見送る。

お店の近くの桜の木を見上げると、少し蕾が出てきていた。

久しぶりに見た。

学生時代は、勉強とバイトが忙しくてあまりお店の手伝いをしてなかったなあ。


翌日。

「こまち!桜の開花予想見た?!」

と、遅番で出勤すると菜月に言われた。

見に行く予定だから、ちょくちょく開花予想のサイトは確認している。

『たまに見てるけど、どうしたの?』

少し興奮している様子の菜月。

「有名な方は、彼氏と見に行くって言ってたじゃん?何個か離れた市の公園に3人で桜見に行こうよ!」

『いいね!どこで休み合わせる?』

「予報では、4月の初め頃が満開らしいよ!」

『その辺で合わせようか!でも、誰かが夜勤明けになっちゃうかも…。』

うちの施設の休み希望は、同日2人まで。

3人で出掛けると、1人は夜勤明けになってしまう。

「4月の初めだから、3日か4日にしよっか!誰が夜勤明けかは、ルートによるねー。」

『誰が明けにするかは、あとでグループで話し合って決めよっか!』

勝手に決めたら、梨乃が可哀想だし。

「要相談ってことね!3日か4日空けておいてね!」

まあ、相談して決めれば確実よね。

高速乗って行くなら、私が夜勤明けでいいかな。

「あっ!今日、入浴介助1人だけ女性対応だったんだ!松本さんちょっと離れます!!フロアお願いします。」

と思い出したように菜月は、慌てて更衣室へ行った。

女性対応の入浴、1日にまとめられないかなー。

今度、管理者に相談してみよ。

菜月たちにそろそろ相手の名前言ってもいいかな。

彼氏って言うの、慣れてなくて恥ずかしい。

久しぶりに、3人で遊びに行く計画立てるなー。

あっ・・・私、大輝さんのお誕生日知らない。

もう過ぎちゃったかな。今度聞いてみよ。

29日~31日頃が見頃の予想だから、その辺で大輝さんと休みを合わせられたらいいな。

菜月たちと、大輝さんとで2回も桜を見られるのね。

とっても楽しみ。

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