第13話 ケッセンノヒ (男目線)

そして、迎えたこまちちゃんの誕生日当日。

姉からは、いつも通りにと言われた。

俺が緊張していると、相手も緊張するからとのこと。

前より少しオシャレをして、髪の毛もセットしてみた。

『ちょっと気合い入れすぎたかも。』

「何言ってんのよ!ちょっとくらい大丈夫だって!」

と姉に励まされる。

本当かよ…。

『いってきまーす。』

「行ってらっしゃい!いい報告待ってるわね!」

とニコニコ手を振りながら送り出された。

一応、結果がどうであれ報告はするつもり。

どのタイミングで告白するのが良いのだろう。

最初だと、その後が気まづいよな。

やっぱり最後か。


告白のタイミングを考えている間に、こまちちゃんのアパート到着。

「おはようございます。いつもありがとうございます!」

『おはよう!寒いと思うから、これ使ってね!』

とブランケットを渡す。

「ありがとうございます。」

『こまちちゃんいつもより緊張してる?大丈夫?』

なんか、いつもより表情が硬い気がする。

「大丈夫です。」

『そう?そういえば、勝手にこまちちゃんって呼んでるけど嫌じゃない?』

初回からずっと呼んでるけど、嫌がっている素振りは無い。

だから、聞かなくても良いかもしれないけど、聞くタイミングがなかった。

「嫌じゃないです。」

良かった、このまま呼び続けても大丈夫そう。

それからは、恋愛の話題で盛り上がった。

男も恋愛の話で、長く話すことがあると言ったら、長く話し込むイメージがなかったから意外だと言われた。

悠太と飯行く時は、だいたい俺の相談が多い。

これからは、姉にも少しできるようになったから心強い。

最初のデートに行ったショッピングモールで、こまちちゃんのプレゼントを買いに行く。

あまり高価なものは買ってあげられないけど、何が欲しいんだろ?


ショッピングモール到着。

『誕生日プレゼント何が欲しい?』

と問いかける。

「えっとー。そう言われても、すぐには思いつかないです。」

と悩みながら答えてくれる。

『そうだよね(笑)じゃあ、見て回ろっか!なにか見つかると思うよ!』

俺は、彼女の手を握ってモール内を見て回ることにした。

こまちちゃんの欲しいもの見つかるといいな。

あれ?

そういえば、自分の誕生日教えたっけ?

こまちちゃんの誕生日を一方的に聞いただけな気がするなー。


探していると、こまちちゃんが手を離し、雑貨屋さんの前で立ち止まった。

マグカップやお茶碗を手に取りながら、どれにしようか悩んでいる様子。

水筒も1回手に取るがすぐに戻した。

『悩んでるね〜。』

と声を掛けると、少し苦笑いを浮かべて

「どのデザインも可愛くて、つい…(笑)」

と言いながら持っていたマグカップを棚に戻した。

『ゆっくり選んでいいよ。』

確かに、どのデザインも可愛くて選べない。

こまちちゃんの私物の思い出は分からないけど、少しずつ俺との思い出も増えていくと嬉しいな!

こまちちゃんは10分くらい、マグカップとお茶碗を見ていた。

マグカップはやめて、お茶碗に絞った様子。

『お茶碗にするの?』

と聞けば、笑って

「はい!でも、デザインが多くて迷います。」

というこまちちゃん。

きっと、これだ!と思えるようなデザインがあると思う。

『ゆっくり選んでいいよ。』

と伝える。

そして、お茶碗も選ぶこと5分。

「決まりました!これにします!」

と、朱色の花柄のお茶碗を持っているこまちちゃん。

『可愛いね!よし、買ってくるね!』

こまちちゃんからお茶碗を受け取ってお会計へ。

可愛くラッピングしてもらって

『こまちちゃんお誕生日おめでとう!』

と伝え渡した。

「ありがとうございます!」

と、とても喜んでくれた。

この喜ぶ顔が見たかったんだ。


その後、ゲームセンターで遊んで、あっという間に帰り道。

こまちちゃんと少しでも長く一緒にいたいから、少し遠回りをして帰ることにした。

『こまちちゃん、今言うのは、ムードの欠片もなくて申し訳ないんだけど、聞いてほしいことがあるんだ。』

ここで言わなきゃ、男が廃る!!

「はい。何でしょう?」

と返事が来る。

運転してるから、表情は見えないけれど、たぶん緊張してるだろうな。

『実は、俺…。こまちちゃんが好きなんだ。俺でよければ、お付き合いしてくれませんか?』

年齢差とか気にならないなら、いろんな所に行って楽しい時間を一緒に過ごしたいと思ってる。

少し間が空いて、

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

と返事をされた。

えっ…?!

まじ?!今、よろしくお願いしますって言った??

『えっ…、本当に?!夢じゃないよね?!これからよろしくね!』

夢かと思って、自分の手の甲をつねってみたけど、しっかり痛かった。

てことは、夢じゃない。

嬉しすぎて、俺舞い上がりそう。

長い道のりだったな。

何度も何度も諦めかけたけど、諦めなくて良かった。

今日、こまちちゃんの誕生日が俺たちの記念日になるんだ。

1年で1番特別な日。絶対、忘れてはいけない日。

『これからいろんな所に行って、たくさん思い出作ろうね!』

大学生時代の彼氏より楽しい思い出作ろうね。

「はい!いろんな景色を大輝さんと一緒に見たいです!」

と可愛いことを言ってくれる。

まず、春になったら満開の桜を観に行こうね。


こまちちゃんを送り届け帰宅。

家に着くと気が緩んだのか、口元がニヤけていたらしい。

「大輝おかえり。何か良いことあったような顔してるね。」

とリビングに入ると、母にそう言われた。

そんなに表に出てたか?母にもわかるくらい?!

この歳で恥ずかしいな。

『ただいま。良いことあったよ。はい、いつものドーナツ。』

おみやげのドーナツを母に渡す。

「いつもありがとうね!」

と受け取ってくれた。

いつものヤツと、姉のリクエストと新作の好きそうなヤツを買ってきた。

「あっ、大輝おかえり!その顔は、上手くいったみたいね。」

と姉。

「ん?上手くいった?何の話?」

とイマイチ汲み取れていない様子の母。

そんな母に

『俺、彼女ができた。一回りくらい歳下の子。』

と改めて報告した。

「「おめでとう!」」

と言われた。

この歳で、彼女ができておめでとうって…(笑)

「よーし!今日は、3人で飲もう!」

姉の提案に賛成するように、母が冷蔵庫からチューハイを3本出てきた。


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