第12話 ツヨイミカタ(男目線)

松本さんと2回目のデートをした帰り道。

誕生日2月なんだ。勝手に秋くらいだと思ってた。

何日かまでは聞かなかったけど、松本さんが希望休を入れた日に俺も入れておけば大丈夫か。

普段の仕事の時はしっかりしてるから、スポーツがあまり得意ではない一面を見ることができて嬉しかったな。

あと、初めて«大輝さん»って呼ばれた。タメ語も頑張ってくれていた。

すぐ敬語に戻っちゃったけど、嬉しかった。

まだ呼び慣れてない感じとタメ語のぎこちなさが可愛かったなー。

あの気づかなさ加減は、前の男も苦労しただろうな。

前の男に限らず、松本さんに好意を寄せていた男は大変だっただろうな。

俺の好意に気づいてくれているのかも分からないし、不安だな。

相談相手も男しかいないし...。

宮田さんと酒井さんは、松本さん応援隊だし。

あの二人を、こちら側につけることができれば強いんだけど、難しいかな...。


いろいろ考えている間に、家に着いた。

『ただいまー。』

「大輝おかえりー!」

と、姉がリビングから出てきた。

あれ?今日、母さん何かある日だっけ?

『ただいま。あれ?母さんは?』

姉に聞くと、呆れたような顔で

「LINE見てないの?!今日は、同級会があるから、同級生達とホテルに泊まるんだって。」

と教えてくれた。

見てなかった( ̄▽ ̄;)

『そうなんだ。明日帰ってくるの?迎え行った方がいい?』

「近くまでバスが出るって言って出て行ったから、迎えはいらないんじゃない?必要だったら連絡来るでしょ!夕ご飯にカレーあるけど食べる?」

『わかった!うん、食べる。荷物置いてくるわ。』

カレー作って行ったんだ。

この前うどん買ってきたから、明日はカレーうどんだな。

あっ...!そうだ、姉に相談してみよう!


ラフな格好に着替えて、リビングへ。

「そういえば、今日どこか出掛けてきたの?」

『うん、スケートリンクに行ってきた。』

「1人で?(笑)」

『違うわ(笑)友達と行ってきたんだよ。』

誰が、1人寂しくスケート行くんだよ(笑)

「へー、一緒にスケートする友達いたんだ。女の子?」

『まあ、うん。女の子。』

女の子と聞いた、姉は、カレーのお皿を俺と自分の前に置いて、目を輝かせて俺の前に座り、

「えー!!どんな子?可愛い?えっ?!何歳くらい?タメ?年上?年下?」

と一気に聞いてくる。

『そんなに一気に答えられないから(笑)1つずつ聞いてくんね?』

とりあえず、水飲めば。と俺は、姉に麦茶を渡した。

姉は、麦茶を1口飲んで深呼吸をすると少し落ち着いたようだ。

「ごめん、ごめん。それで、相手はどんな子?」

まあ、あまり女の子と出掛けることもなかったし、話題に出すこともなかった。

前に付き合っていた彼女も、俺が東海地方で働いていた頃だったし、母にも姉にも話したことなかったし、会わせたこともなかった。

『どんな子?うーん...、落ち着いてて真面目で可愛い子だよ。』

こまちちゃんは、26歳だけど、大人っぽくて可愛いと思う。

「真面目な子ねー。どんな所が真面目なの?」

『仕事はもちろん真面目でていねいだよ。あと、朝帰りとか無断外泊とかしたことない所とかかな。』

「大輝が学生時代やりまくってたことじゃん!(笑)年下なの?」

確かに(笑)

金曜の放課後にカラオケ行って、ゲーセン行って朝まで遊んでたわー。

朝帰りの時は、よく姉に協力してもらってたな。

あの頃は、姉が朝ごはんとお弁当作り担当だったから、早起きだった。

だから、姉しか起きてない時間を見計らって帰ってきて、こっそり玄関の鍵を開けてもらっていた。

次の日休みだから、昼くらいまで寝てたっけ。

何回か母にバレたこともあったけど、親父には内緒にしてくれてた。

よく親父に怒られたなー。

でも、あれはあれで青春してた。

『その節はお世話になりました。よく親父に怒られてたねー。うん、一回りくらい年下かな?』

「懐かしいねー。一回りくらいってことは20代?!」

『そう、20代!』

「若い子見つけたんだね。何で繋がったの?マッチングアプリ?」

『同じ職場の人だよ。』

「そうなんだ。大輝は、その子のことどう思ってるの?」

『俺?俺は、好きだよ。』

姉の前で言うのは、すごく恥ずかしい。

「珍しいじゃん!大輝が年下の子好きになるの。」

『好きになるのに、歳の差なんて関係ないよ。ただ、その子全然好意に気づいてくれてないっぽいんだよね〜。』

まさか、姉に恋愛相談をする日が来るとは思わなかった。

今まで付き合った中で、一番歳の差あるかもな。

「それは、残念ね。もう、ストレートに告白して意識してもらえば?」

『その手があるか。実は、今日が2回目のデートだったんだ。でも、イマイチ告白に踏み切れないんだよな〜。』

『じゃあ、次で3回目?2人で出掛けてくれるなら、少なからず嫌がってはいなそうね。デート中は、その子は楽しそうにしてる?』

姉に言われて、今日と前回のこまちちゃんの顔を思い浮かべる。

『うん、笑ってた。顔を真っ赤にして照れてる時もあった。』

「脈アリじゃん!車中でも話したんでしょ?」

『うん、いろいろ話した。その時も楽しそうに笑ってたよ。』

「なるほどね。攻めてみた?」

『手を繋いだり、ジャケットを貸したりしたよ。』

「なかなかやるね〜!反応はどうだった?」

『照れてた。』

「おっ!?意識してるんじゃない?」

『してたのかなー。慣れてないだけな気もするけど。』

「でも、嫌だったら手を離すとか、ジャケット突き返すとかしてくるでしょ?されてないってことは嫌じゃないって思っていいんじゃない?」

『その子の性格的に、拒否できなそうなんだよね。』

「だとしても、照れてたり、笑ってたりしてたなら、可能性はあるでしょ。伝えるだけ伝えてみれば?男なら当たって砕けろ!」

姉に背中を押されるのは初めてだわ(笑)

当たって砕けたら、同じ職場だから、気まずくなるんですけど??

『分かったよ。3回目の時に、気持ち伝えてみるわ。』

「もう3回目の約束してきたの?!頑張りなよ!いつでも話聞くからさ!」

『してきたよ。その子の誕生日。また近くなったら相談するかも。』

「記念日が誕生日って素敵ね。忘れられない日になるね。」

上手くいけば、こまちちゃんの誕生日が2人の記念日になる。

姉に相談してよかった。

勇気出たかも。

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