第11話 ユメ?ゲンジツ?
その後、ゲームセンターで遊んだ。
「ちょっと遠回りして帰ってもいい?」
と、聞かれた。
この辺りの道は詳しくないから、遠回りしてもいいか聞かれても分からない。
『大丈夫です。』
と答える。
遠回りってことは、少し長く一緒に居られるってことよね?
何故か分からないけど、嬉しいと思っている自分がいる。
どうして?
でも、友達と遊んだ後の帰り道に、遠回りするねって言われたら、嬉しいよね。
その気持ちと同じかな?
お互い何を話すでもなく、車内に音楽と謎の緊張感が流れる。
こんな道あったんだ、と思いながら外を眺める。
「こまちちゃん。今言うのはムードのかけらもないけど、聞いてほしいことがあるんだけどいい?」
『はい、何でしょう?』
「実は、俺こまちちゃんが好きなんだ。俺で良ければ、お付き合いしてくれませんか?」
こ、これは?!梨乃が言ってたことが現実になった?!
私、夢見てるのかしら?試しに、手の甲をつねってみる。
痛い...。てことは、夢じゃない。
まさか、現実になるとは思わなかった。
でも、私は櫻井さんが好きなの?
少なからず、好意はある。これが、恋愛における好意かどうかは分からない。
でも、この間も今日も、とっても楽しみでウキウキしていた。
『こちらこそよろしくお願いします。』
と返事をした。
こんな私のどこを好きになってくれたのだろう?どこに惹かれたんだろう?
「本当に?!夢じゃないよね?これからよろしくね!」
前と私を交互に見ながら、喜んでいる櫻...じゃなくて、大輝さん。
これからは、大輝さんって呼ぶし、タメ語で話さないとね。
『は...うん!』
「無理して一気に変えなくていいよ。ゆっくりで大丈夫!」
『ありがとうございます。』
カップルなのに敬語って、やっぱり距離感あるよね。
でも、歳上だし職場でも先輩でずっと敬語だったから、すぐに直すのは難しい。
呼び方くらいなら簡単だけど。
「俺ね、こまちちゃんのそういう真面目な所と笑顔に惚れたんだよ。あと、一緒にいると落ち着く所。」
真面目な所...。
確かに、何回か大輝さんに真面目だね。って仕事でも、プライベートでも言われたことがある。
あれは、褒められていたんだ。
『ありがとうございます(*^^*)』
私は、まだどこが好きなのか分からないけど、初めから恋人繋ぎをしても嫌ではなかった。
それに、«こまちちゃん»と呼ばれることも嫌ではない。
どこが好きかは、これから見つけていけばいい。
今日が、私の誕生日が2人の記念日になるんだ。
「嬉しすぎるよ!ちなみに、俺の好意には気づいてた?」
『全然気づいてませんでした。』
梨乃と菜月が言ってたことは本当だったんだ。
初回で恋人繋ぎをしたことも、ジャケットを貸してくれたことも、好意があったんだ。
「いいよ、いいよ!こうして、こまちちゃんも俺に好意を持ってくれたんだから。」
と手を繋いでくれた。
『私、一番最初に大輝さんに恋人繋ぎされた時、不思議と嫌じゃなかったんです。』
ほどきたいとか違和感はなかったけど、好きかどうかは分からなかった。
「そうなんだ。それは嬉しい!」
と笑いかけてくれる。
「これから、いろんな所に行って、たくさん思い出作ろうね!」
と言われた。
『はい!大輝さんと一緒に、いろんな景色見たいです!』
これからすごく楽しみ。
きっと全部、かけがえのない大切な思い出になるわ。
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