第10話 タンジョウビ

そして迎えた、誕生日当日。

梨乃と菜月のアドバイス通り、ちょっとメイクに気合いを入れてみた。

服装も女性らしくスカートにした。心の準備は、まだできていないけれど、そろそろ櫻井さんが迎えに来る時間になる。

部屋の窓から外を眺めていると、見慣れた車がアパートの前に止まった。

バッグを持って、身だしなみの最終チェックをして部屋を出る。


『おはようございます。いつもありがとうございます!』

とあいさつをする。

「おはよう!はい、今日寒いからこれ使って!」

とブランケットを渡してくれた。

『ありがとうございます!』

あまり緊張しないように、梨乃達が言ってたことを意識しないように...。

何も発展はないから、期待はしてはダメよ。

そう言い聞かせながら、櫻井さんとドライブをする。

「こまちちゃん、いつもより緊張してる?」

『いえ、大丈夫です。』

全然大丈夫じゃないです。

すごく緊張してます。手先がとても冷たいです。

「ずっと、勝手にこまちちゃんって呼んでるけど嫌じゃない?」

『嫌じゃないです。』

なんだったら、嬉しい。

名前で呼ばれるって特別感あっていいよね。

「良かったー(*^_^*)最近、酒井さん達と遊んだ?」

『遊びました。』

「どんなことを話すの?」

『恋愛の話題が多いです。あと、推しの話とか...。』

恋バナと言っても、主に、私が櫻井さんのことを相談していることが多い。

「恋バナするの?!意外だね!」

『女はいくつになっても恋バナ大好きです!櫻井さんは、お友達とどんなお話するんですか?』

「俺?俺は、学生時代の話もするし、仕事の話とか遊びに行く話とかかなー。」

『学生時代の友達とは、よく学生時代の話します!』

「昔話は盛り上がるよね!俺は、彼女いないけど、たまーに恋愛話もするよ!」

『男性も恋愛話するんですね!』

「するする!彼女いる奴の惚気話聞いたり悩み聞いたり、結婚してる奴の愚痴聞いたりしてるよ!」

そうなんだ。

男の人が、恋愛相談とか意外かも。

『そうなんですね!男性は、恋愛でどんなことを悩んでいるんですか?』

とても興味がある。

いつか恋愛小説を書きたいと思っているから、ぜひ知りたい。

聞いたことを忘れたくなくて、思わずバッグからメモを出してしまった((汗))

「気になる女性になかなか好意があると気づいてもらえないとか、彼女との記念日はどこに連れて行ってあげたらいいかとか、何をプレゼントしたら喜ぶかとかかな。」

男の人も悩むのね。

付き合う前も付き合い始めてからも悩むもんね。

『恋愛の悩みって、男女共に尽きないですね。』

女の人も悩むもんね。

梨乃達とはあまりしないけれど、学生時代は、よくカフェやカラオケで恋バナで盛り上がってたっけ。

「そうだねー。でも、1番盛り上がるよね!」

『それは、間違いないですね!!』

何時間だってできちゃうもん。

そこに、スイーツとか飲み物があったら尚更。

「だよねー!ここだけの話、この前友達と飯行って、1時間くらい恋愛の話で盛り上がったよ(笑)」

女の子みたい(笑)

1時間ならまだ可愛い数字だよね。

女性は、その倍くらいの時間盛り上がるよ(笑)

『そうなんですか?!男性って、あんまり長い時間話してるイメージがないので意外です!』

「俺も、1時間も話してたの久しぶりすぎてビックリたよー。」

話している間に、最初の緊張も解けてきて、普段通りに話せている気がする。

『櫻井さんは、相談しやすい人とかいますか?』

「同性だとやっぱり悠太かな。今の会社入って仲良くなった同期だし、よく遊びに行くし。」

苦しい時も一緒だったから、乗り越えてこれたってことかな?


話している間に、初回に行ったショッピングモール到着。

誕生日プレゼントを買ってあげると言われました。

何がいいのか思いつきません。

あっ!職場で使っている、お茶わんを新しくしようかな。

もう3年くらい使ってるから、そろそろ変えたいと思ってたんだよね。

今使っている?のは持って帰って、家で使えばいい。

夜勤で、お茶わん使う度に嬉しくなっちゃう!

水筒でもいいけど、今使っているのは大学のメンバーとお揃いで買ったものだから変えたくない。

マグカップもいいな〜。

なかなか決まらない...(笑)

「悩んでるね〜。」

『どれもデザインが可愛くて、つい(笑)』

「ゆっくり選んでいいよ!」

お茶わんもマグカップもデザインが好みすぎる!!

どちらも捨て難い...。うぅ…、悩むーー。

今のマグカップは気に入ってるから、やっぱりお茶わんにしようかな。

デザインの種類も多くて困る...!

「お茶わんにする?」

『はい。でも、デザインが多くて迷います。』

「ゆっくりでいいよ。」

うーん...あっ!これ、ハリネズミが可愛い!

『決まりました!これにします!』

私が選んだのは、朱色のお花柄でお茶わんの中にハリネズミが描かれているデザインのもの。

見るだけで、明るい気持ちになる色と、ハリネズミの可愛さに目を奪われた。

「可愛いね!よし、買ってくるね!」

『ありがとうございます!』

櫻井さんはレジへ。

男の人からプレゼントを買ってもらうのって久しぶりかも。

毎年、梨乃と菜月が誕生日会をしてくれるて、プレゼントもくれる。

元彼も、プレゼントをくれたけど、別れてからは封印しちゃったな。

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