5 勘違い

「おい聞いてくれよ、麦畑でメシ食おうとしたんだけど、ずーっと人がいてよ。んだよって思って池の水で済ませて戻ったら、そいつカカシだったんだよ!」


「トリさん、発想がスズメ寄りですね」


トリ「なんて日だ!」


「余計な方面に寄らないでください」


「命に関わる勘違いは侮れないな。俺にもある、そう、それは、何日も食事にありつけなかったあの頃――すれ違った人間の子供が食べ物らしき物を差し出したんだ。俺はもう目も見えなかったが心の底から温かくなり、無我夢中でそれを口にした。だがそれはどこかから拾ってきたらしい雑草で、吐いちゃったし、『なにこいつキモいぃ!』って泣かれたし、お腹壊して動けなくなっちゃった」


「ネコさん、笑えません」


※「人間って残酷よな。ワイもメスにありつけたおもたら、人間のスニーカーだったことあるで」


「カメさん、痛まし過ぎます」


カメ「途中で『違うぅ!』なったけど、『もういいかぁ!』おもて、『クエェ!』鳴いてな」


トリ「聞きたくねぇよ」


カメ「あの芸術的な丸みとツルツルが気持ち良うて――」


トリ「黙れって!」

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